金融業の変革について
総合政策学部4年
齋藤圭介
1995年 ~秋 ~岡部研究会レポート
概要
わが国における最近の金融制度改革論議では、金融持ち株会社の制度を導入す る方向が打ち出されており、ユニバーサルバンク制度を目指すべきだという制 度面での議論が活発化している。しかし、そうした制度改革によって金融機関 が果たすべき本質的な機能あるいは金融機関経営のどこが改善されるのかが、 十分に整理されているとはいえないようにうかがわれる。このレポートでは、 「信用供与プロセスのアンバンドリング」と「ユニバーサルバンキング」といっ た二つの金融手法が金融機関経営上果たす機能の比較を通じて、この問題を検 討する。はじめに、金融機関をとりまく諸条件の変化を概観し、金融の自由化、 グローバル化、証券化、エレクトロニクス化といった近年の環境変化は、顧客 ニーズを多様化させると同時に金融業にも競争原理が強く作用されざるを得な くなったことを述べる。また、そうした状況への対応から、金融における新し い分野(ないし新しい金融手法)が米国の金融機関を中心に展開してきている ことを解説する。こうした中で、特に注目すべき効果の一つとして、欧米で活 発に行われている信用供与プロセスのアンバンドリングとユニバーサルバンキ ングという方向に焦点をあて、その機能を比較する。この二つに共通する機能 としては、(1)顧客の利便性を向上、(2)個別金融機関の競争力の強化、 (3)リスク管理の強化と経営の安定化が挙げられる。最後に、日本の制度改 革の動きを概観し、上記二つの新しい金融手法に照らして日本の銀行経営と銀 行行政が改善すべき点を明らかにする。
キーワード:信用供与プロセスのアンバンドリング、ユニバーサルバンキング、
リスク管理、顧客の利便性、競争、証券化