ホールセールにおける信用仲介プロセスのアンバンドリングは、主に海外向け のシンジケートローンが中心であった。海外におけるホールセー ル市場の顧客は主にAAAの格付けを持った企業や国であり、銀行貸出の利率は 低くならざるをえなかった。そのため、銀行にとっては貸付債権を売ることに よってオリジネーターやサービサーとして手数料をとった方が経営上効率的で あった。
1984年以前は、アメリカで信用仲介プロセスのアンバンドリングを行うに は3つの方法があった。
第一に、サブ・パーティシペーション(sub-participation)では、元の契約 はそのままにして、新規に別個の契約を結び、貸付債権からのキャッシュ・フ ローを受け取る権利だけをサブ・パーティシパント(sub-participant)に売 却するものである。この方法ではサブ・パーティシパントは求償権を持たない。 また、リスクの増加や増税といった、貸付債権に含まれた予期せざるリスクを サブ・パーティシパントは負うことがない。
第二に、アサイメント(assignment)はキャッシュ・フローにとどまらず、貸 出契約に関わる銀行の権利すべてを譲渡する(銀行の義務は残される)方法で あることから、より受け入れ易い方法であると考えられてきた。しかしながら、 アサイニー(assignee)は依然として求償権を持たず、義務だけが残ることか らサブ・パーティシペーションよりも費用がかかった。
第三に、ノベーション(novation)は義務も含めて全く新たな債権関係を構築 することである。しかし、この方法では貸し手と借り手の協力なしには行われ ない。
以上それぞれに問題点があることから、今ではtransferable loan structure が主流である。アサイメントとノベーションを基礎にし、前者がtransferable loan instrument(TLI)、後者がtransferabe loan certificate(TLC)と呼 ばれる。借り手の権利は全く影響を受けないと同時に、銀行がこれらの仕組ま れた債権を積極的に売り、取り引きされることから、直接金融にない間接金融 のメリットを享受しながら、銀行貸出に比べて借り手はより低利 でより満期の長い資金を調達することが可能である。