信用供与プロセスのアンバンドリングがもたらすもの



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信用供与プロセスのアンバンドリングがもたらすもの

信用供与プロセスのアンバンドリングが金融機関経営にもたらす影響について、 Feeney(1995)と岩村(1995)が論じている。

Feeneyによればアメリカにおける貸付債権譲渡の発端は、もともと銀行の与信 許容額(credit extension line)を超えた融資を求められたとき、融資を断っ て別の銀行に顧客をとられる代わりに、より大きな銀行に貸付債権を買っても らうように懇請したことから始まっている。そのため、当初は小さな銀行が顧 客との長期的な関係を維持するために貸付債権譲渡は行われた。

しかし今では、銀行の収益や自己資本の改善のために行われている。これは、 貸付債権譲渡が上手く運営されたなら、4つの機能が期待されるからである。 第一に、貸付債権を資産として保有するときよりもオリジネーターとしての手 数料をとった方がROEやROAを高めることができる。第二に、自己資本の負担 (capital pressure)を軽減することができる。第三に、貸し倒れリスク (credit risk)を貸付債券譲渡先に吸収させ、利益のでる範囲内で顧客との長 期的な関係を維持することができる。第四に、貸付債権の証券化が進む中で銀 行が生き残るために投資銀行の知識を高めることができる。

また、岩村は信用供与プロセスのアンバンドリングがもたらすものとして2点 ほど挙げている。

第一に、銀行のリスク管理の向上である。プロジェクトファイナンスのような 特定の事業に向けられた貸付債権を証券化した場合、銀行は貸付債権の保有割 合を変えることによって自分のリスク判断に基づき、最適と考えるポートフォ リオを保有することができるようになる。多数の事業を運営する企業に銀行が 融資しようとするとき、銀行が企業全体に融資する以外の方法論を持っていな ければ、銀行の融資すなわち資産のリスクとリターンの組み合わせは、融資先 の企業の事業配分に依存する。しかし、銀行がプロジェクトファイナンス、ま たは信用供与プロセスのアンバンドリングの方法論を持っていれば、付論のよ うに銀行は企業の事業配分に依存しないで、いわば自己流のリスクとリターン の最適点を選ぶことができることになる。

そのことは、第二に、企業金融におけるエージェンシー問題gifを解決する。企業経営者は株主の支持をえるために は、経済の変化に応じた新規分野への進出や衰退分野からの撤退といった行動 をとる。しかし、外部債権者にとって必要なのは債権の償還期までの間、企 業が倒産せずに維持されることであり、株主のようなリスクに見合ったリター ンではない。つまり、企業が行っている事業を分割して、事業ごとに利害関係 者が負担すべきリスクと参加できる利益の範囲が明確に定義されれば、解決さ れる問題である。このため、信用仲介プロセスのアンバンドリング(TLIやTLCな ど)は債権者のリスクとリターン、義務と権利を明確にする手法であり、企業 の効率性・利便性を高めると言えようgif



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Hidefumi Watanabe
Tue Apr 30 13:44:21 JST 1996