ユニバーサルバンクとは、銀行や証券、信託の各業務をすべて手がけることが できる総合金融機関である。狭義には、ドイツ型の一つの金融機関ですべての業務 を扱う方式をさす。しかし、広義には同じ 資本系列の個別の会社が各金融機関を別々に担当する英国型のケースでもユニ バーサルバンクと呼んでいる。
日本の金融制度改革の論議において、商業銀行がユニバーサルバンク制度を熱 望しているのには、3つの要因がある。 第一に、短期金融を主とする商業銀行業務では、企業への貸し付けやシンジケー ト・ローンの需要が減少してきているのに対して、投資銀行業務や証券業務は、 国際資本移動の急激な拡大によって隆盛を極めている。第二に、セキュリタイ ゼーションが進展、すなわち投資銀行や証券会社の提供する金融商品の多くが 商業銀行の金融商品に取って代わるようになってきており、商業銀行は、収益 機会を安定・強化していくために、業務多角化の必要に迫られている。第三に、投 資銀行業務に参入するには、巨額の資本を追加投資しなければならないが、資 金的な面で充実している商業銀行には、それが可能である。
このような理由から、導入を主張されるユニバーサルバンク制度であるが、そ の長所は6つほど挙げられる。第一に、ユニバーサルバン クは多様な金融商品を広範な顧客に幅広く提供することができる。したがって、 新しい金融商品の初期マーケティング費用や顧客の開拓・維持・管理費用が相 対的に軽減される。同時に個人顧客に証券の購入や銀行預金の両方を勧めるこ とによって、個人顧客部門の業務を効率化することができる。第二に、様々な 金融商品を提供することができるので、スタッフの有効利用、および需要の変 動に応じて部門間の配置転換を適切に行うことによって、経営資源の有効利用 を図ることができる。さらに、豊富な品揃えの金融商品を活用して資産運用を 望むすべての顧客にとって、非常に使い勝手がよい。第三に、多様な金融商品 を提供することによって、金融機関はかなりのシナジー効果を発揮できる。第四に、顧客がひとつの 銀行からすべての金融サービスを受けることを希望する場合に、顧客の要望す るあらゆる種類の金融商品を提供できることから顧客の利便性が増す。しかも、 企業の「銀行離れ」という事態は、原則として生じえない。企業の資金調達が 間接金融から直接金融方式に転換したとしても、ユニバーサルバンクは、完全 に資金の流れをフォローできるからである。第五に、証券業務からの手数料収 益が伸びていれば、銀行業務での収益低下を補完することもできる。また、逆 の場合もあり得るなど、これまでの銀行に比べ、全体での極端な収益変動のリ スクを回避することも期待できる。 第六に、 このような経営上のメリットの加えて、社会的なメリットとして、銀行業と証 券業の双方の市場における競争を必然的に増大させることにより、超過利潤を 消滅させ、資源配分の効率を改善させることになる 。