このように、貸付債権譲渡にしても純粋持ち株会社の部分解禁提言にしても形 式的要件の議論が先行しており、経済的に見た実質的な議論はあまり行われて いない。しかし、欧米における貸付債権譲渡や純粋持ち株会社の成功例をみれ ば、それが銀行の戦略的な運営に貢献していることは、紛れもない事実であろ う。
まさに、信用仲介プロセスのアンバンドリングやユニバーサルバンキングは、 金融機関をとりまく諸条件の変化に対応した新たな手段であり、今後のわが国 金融機関の方向性としても望ましいものであると考えられる。しかし、銀行に とってどのような変革が期待されるのかが議論されなければ、形式だけのもの となってしまうだろう。欧米の事例に鑑みて、わが国銀行が直面している課題 は3つに整理できよう。第一に、顧客の利便性を向上させること。そのために は、第二に、銀行間の競争の促進が必要となること。そして第三に、増大した リスクを管理し、経営の安定化をはかることである。