リスク管理の強化と経営の安定化



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リスク管理の強化と経営の安定化

顧客の利便性を向上させるにしても、競争力を強化するにしても、これらはと もに業務範囲を広げ、新たな分野に進出することであるから銀行はより大きな 各種リスク(信用リスク、マーケット・リスク、流動性リスク等)を引き受け ることを意味しており、また自己責任の原則を貫くことが重要になってくる。 こうした状況下、銀行は各種リスクを適切にコントロールしつつ、収益の極大 化を図ることが重要になっている。実際、ALM(Asset Liability Management、 資産・負債の総合管理)運営の高度化が各金融機関で研究されている。

従来型のALMは、伝統的な業務である預金、貸出、投資有価証券等からなる 「バンキング勘定」と、為替や債券等の現物ないしデリバティブ商品の短期売 買によりキャピタルゲインを狙う取引を経理する「トレーディング勘定」とに 区分して把握されている。これまで、金融機関のALM運営は、バンキング勘定 の資産・負債の金利リスクをいかにヘッジしていくかに焦点を当てたものであっ た。これは、規制金利体型の下で運用・調達の利鞘が相対的には安定して確保 されていたことから、金融機関にとっては貸出、預金等資産・負債を増加させ ることにより収益を増加させることができたからである。しかしそうしたALM は、あくまで金利リスクをヘッジするという受動的な性格が強い。一方、トレー ディング勘定では、個々の取引のリスクが注目され、全体のポジションの把握 やトータルなリスク管理の必要性はあまり認識されてこなかった。

しかしながら、自由化や、金融手法・手段の多様化によって、バンキング業務 の資産・負債をも能動的にコントロールしうる余地が拡大しており、また、経 営全体のリスク管理としては、バンキング、トレーディング両勘定のリスクを トータルに把握することが重要かつ可能になってきている。バンキング勘定で は、全行的な金利予測の下、資産(貸出、投資有価証券)、負債(預金、マー ケット調達)の金利、期間等の属性をできる限り能動的に操作するようになっ ている。トレーディング勘定においては、管理手法の高度化により全体として 抱えるリスク量を統合して算出するとともに、リスク管理を専担する統括部署 の設置にも動き出している。また、両勘定トータルのマーケット・リスク量把 握を指向する動きもある。さらに一部の金融機関では、ALMを資産・負債のマー ケット・リスクのコントロールにとどめず、バンキング、トレーディング両勘 定での信用リスクも含めた統合的リスクマネジメント手法の高度化(Value At Riskgif 等)を図ることによって、各勘定ごとの客観的な収益性を計測し、それに基づ いた経営資源の戦略的配分の実践を模索する動きもみられ始めている。 gif

このように、各種リスクの客観的かつトータルな把握とリスクに見合ったリター ンの追求、さらにはリスクを勘案した収益性を基にした資本等経営資源の戦略 的な配分は、経営の一層の効率化を進める。また、信用リスク管理手法の高度 化は、中堅・中小企業取引の深耕の模索をより効率的なものにするだろう。

顧客の利便性を高めると同時に、競争力を強化し、またより高度なリスク管理 手法を追求することによって、より安定した経営が可能となるだろう。



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Hidefumi Watanabe
Tue Apr 30 13:44:21 JST 1996