おわりに



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おわりに

本論文の目的は、信用供与プロセスのアンバンドリングとユニバーサルバンキ ングといった、金融機関経営上の二つの手段としての機能を比較し、それを通 じて、今後わが国の金融機関が変革していくべき方向を明らかにすることにあっ た。両手段とも、(1)顧客の利便性の向上、(2)競争の促進・強化、(3) リスク管理の強化と経営の安定化、といった機能を有している。それらは、金 融機関をとりまく諸条件の変化に対応できずにいるわが国金融機関に欠けた点 であり、変革が望まれる点である。

最後に、今後の金融業の方向性と課題に関して3点述べたい。

第一に、金融の自由化、グローバル化、証券化、エレクトロニクス化によって、 金融業の意味が大きく変わってきていることをまず認識することが肝要である。 金融機関は企業の銀行離れといった現象に直面し、従来の預・貸金といった業 務だけでは安定した収益を挙げることができなくなってきている。規制に守ら れた受動的な銀行経営ではなく、情報処理・通信技術(インターネットを含む) の発達によって可能となった、新たな金融手段を用いて、多様化する顧客ニー ズへ能動的に対応する経営が必要である。

第二に、そのような変化に対応すべく、金融業は変革しなければならない。す なわち、(1)顧客の利便性を向上させる、(2)競争の促進・強化をする、 (3)リスク管理の強化と経営の安定化を図る、ということを基本に据えた経 営が必要になってくる。信用供与プロセスのアンバンドリングやユニバーサル バンキングといった方向は、金融機関経営上そのような機能を有しており、新 たな金融手段としてわが国でも積極的に導入していくことが必要であろう。さ らに、その機能が十分に発揮されるような制度改革が望まれる。

第三に、金融行政の思想の変化が必要である。金融機関が新しい金融手段ない しサービスを提供しようとするインセンティブがなければ、上記の改革は実行 性がない。このため、従来の護送船団方式のような横並びを重視した金融行政 を改め、新しい金融サービスや手法を開発した銀行には創業者利潤を得られる ような環境づくりを、行政は行うべきである。

以上

リスク分散効果は図7のようになる。横軸に投資機会のリスク(収益率の標準 偏差)、縦軸にリターン(収益率の期待値)をとったグラフである。この図で 点Aと点Bで表現できるような二つの事業を保有する企業があるとき、この企業 への投資はAとBとの相関に応じて決まる曲線AB上の一点Pでしか実行できない (議論を簡単にするため企業の資本金は無視)。Pの位置を決めるのは、融資 先企業における事業Aと事業Bの保有比率である。銀行に与えられている投資機 会が、この他には安全資産Gに対する投資しかないとすれば、銀行が構成でき るポートフォリオは線分GP上に制約される。

これに対して、事業AとBをそれぞれプロジェクトファイナンス化または信用仲 介プロセスのアンバンドリングによって証券化すれば、銀行は二つの事業に対 する参加比率を変えることによって、曲線AB上のすべての点を選ぶことができ るようになるから、銀行にとって選択の余地は拡大する。銀行が例えば点Qで 示されるような融資参加比率を選択したとすれば、銀行の到達できるポートフォ リオは線分GQへと変化する。GPとGQを比較するとGQの方が上方にあるが、これ はプロジェクトファイナンス化や証券化することにより同じリスクを負担しな がら高いリターンを実現することを意味する。gif



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Hidefumi Watanabe
Tue Apr 30 13:44:21 JST 1996