日本の金融機関は国際的な競争に乗り遅れようとしている。目の前の不良債権 ばかりが注目され、金融機関のリエンジニアリングは一向に進まない。ユニバー サルバンクを目指すという制度面における方向性は見られるも のの、そのことによって金融機関経営のどこが改善されるのかが、十分に整理 されていない。金融の自由化、グローバル化、証券化、エレクトロニクス化と いった流れの中で、金融機関は何を求められているかを明らかにすることが大 切なのではなかろうか。
欧米では、ユニバーサルバンキングとともに、新しい金融仲介の手段として信 用仲介プロセスのアンバンドリングが進み、銀行の戦略的な運営に貢献してい る。そこで、本レポートでは、この二つの手段を比較することによって、変革 するわが国金融業の方向性について論じる。
以下、2.では、金融機関をとりかこむ諸条件の変化について述べる。3.では、 信用供与プロセスのアンバンドリングについて、4.ではユニバーサルバンキン グについて、それぞれが金融機関経営において果たす機能を検証する。5. で は、信用供与プロセスのアンバンドリングとユニバーサルバンキングに共通す る金融機関経営上の機能とわが国における制度改革の状況、そして今後わが国 金融機関が変革するべきであると考えられる3つの論点を整理する。最後に6. では、金融機関の今後の方向性について述べる。