日本では、指名債権譲渡方式と呼ばれる形態での貸付債権譲渡が、1990年 以降実施されるようになっている。ただし、従来は貸付債権の売却にあたって は、債務者である企業の承諾を事前に得ることが義務づけられたり、売却先が 他の銀行に限定されるなど規制が強かった。1991年11月になって承諾を 得ることを省略してもよくなったほかに、売却先も一部機関投資家にまで拡大 できるようになった。その後、いくつかの追加的な取り組み(95年6月1日 からパーティシペーション方式の解禁など)はみられたものの、貸付債権譲渡 の動きは期待されたほどの活性化を示してはいない。
本来こうした動きは、信用仲介プロセスのアンバンドリングを促し、それによっ て信用仲介の分業化を進展させるはずである。また資金提供は債権の譲渡を受 けた機関投資家などの他の主体が行い、個々の銀行としてはオリジネーターと しての役割を通じて、審査能力や債権管理能力の優劣こそが厳しく問われるべ きである。ところが、日本の銀行は資産売却の意義を、BIS自己資本比率規制 への対策といった、技術的なレベルでしかとらえていない向きが依然として強 く、信用仲介プロセスのアンバンドリング(信用仲介機能の提供をめぐる分業 体制の一層の高度化)といった認識はほとんどみられない。