No Title



next up previous
Next: 内外価格差とは

内外価格差についての考察

〜その実態、発生要因、対応策〜

桑田 昇

総合政策学部3年
79301609

1995年 春学期
岡部研究会

* 本論文は、研究会で優秀と認められ、慶應義塾大学湘南藤沢学会から出版され たものである。なお、本論文はインターネットにおいても全文アクセス可能で ある。
URL http://www.sfc.keio.ac.jp/ s93503hw/okabe/index.html
(概要) 1.わが国においては、近年いわゆる内外価格差が国民の大きな不満となっており、 また政策課題にもなっている。例えば東京における主要商品の価格は先進諸国 の都市に対して1.4倍前後割高となっており、同じ水準の生活をするのに、1 .4倍のコストがかかることを意味している。また、わが国では、割高と なっている商品の価格には生活必需的品目が多いため、所得が比較的低い階層に その問題が特に大きくあらわれる点も特徴的である。 内外価格差が問題なのは、わが国の所得水準が高い割には生活が豊かにならない ことである。

2.このような内外価格差が生じるひとつの要因は、為替レートが急激に上昇 することに伴うものである。このため、昭和60年のプラザ合意 以降の急激な円高によって内外価格差は急激に拡大した。 いまひとつの要因は、経済の構造的側面に関連している。 所得水準の上昇によって内外価格差が必然的に拡大するという現象は、構造的要因 のひとつであるが、構造要因の主たるものは規制である。

3.では、実際に内外価格差を解消するとどのような効果があるのだろうか。それ は、内外価格差の存在から生じていた生産者余剰を喪失させる一方、 消費者余剰を上昇させる効果を持つ。ひとつの最近の研究結果によれば、 国民1人あたり6.8万円の消費者余剰を手にいれることになる。 この効果が果たしてマクロ経済的に大きな意味をもつかどうか について異論を唱える向きもあるが、実質雇用者所得の上昇、ラチェッ ト効果による平均消費性向の低下回避などといった現在の日本経済の パフォーマンスをみるかぎり、内外価格差を解消することでマクロ経済的には プラスの効果がでることが予想される。

4.内外価格差を解消することから生じる問題としては、対象となる国内商品の 値下がりと国内生産の減少による生産者余剰の喪失から生じる問題、 すなわち失業の発生がある。このため、内外価格差解消策は失業対策と 組み合わせて実施することが重要である。 このためには、インターネットを利用した職業紹介システムの構築、再訓練システムの 拡充といった労働市場の改善が必要であり、また、とりわけ非製造業の労働生産性 向上に努める必要がある。




next up previous
Next: 内外価格差とは



Hidefumi Watanabe
Mon Feb 19 12:08:57 JST 1996