次に、消費財流通における情報の非対称性について指摘したい(図表9)。 中間財については、たとえば、新日鉄とトヨタの間の自動車用鋼板の取引のように、 メーカーとユーザーがその生産コストなどについてほぼ同じだけの情報量を 有しており、対等の立場で価格交渉が行われる。他方、消費財については、 メーカーの持つ商品情報と消費者の持つ商品情報には大きな格差がある。 このような、「(生産者と消費者の間の)情報の非対称性」は、消費者にとって 不利益であるだけでなく、メーカーにとってもよりすぐれた商品を市場に投入しても 消費者の購買行動がそのまま価格に現れないという点で、その努力が報われない 可能性があり、健全な市場取引を阻害する恐れがある。
以上、内外価格差が生じる要因について、主に為替レート要因と構造的要因とに
わけて考察してきた。
これからは、実際に内外価格差を解消したときに日本経済にどのような影響が
あるかをみてみよう。