今回の推計を行っていて幾つかの疑問点が生まれてきた.1つ目の疑問点は、資本の稼動状況、労働力の勤労時間などの影響をTFPから除去するべきなのではないかという点である.純粋な意味でのTFPを推計するならば、経済の効率性などの影響を除去するべきであると考えられる.例えば、資本の稼働率指数や労働者の平均労働時間、平均労働日数などを考慮することで、技術水準をより正確に求めることが出来るのではと考えられる.
2つ目の疑問点は、異なる資本ストックを用いた場合、まったく違う結果が得られるのではないかというものである.というのも,労働者数や経済成長率などは比較的に容易に得られる情報であるが、資本ストックについては推計方法がいくつもあり、また耐用年数や除去率などをどうするかによって推計値が大幅に変わってくる可能性が高いからである.
3つ目の疑問点は、資本ストックの中に、「住居」にあたるものが含まれている点である.住居自体が実際に生産サービスを生み出すわけではない.よって、それを含めたままで推計を行った場合、資本寄与が過大評価されるおそれがあるのである.
4つ目の疑問点は、東アジアの発展段階が、技術進歩が重要なほど進んではいなかったのではないかというものである.これは、つまり60年代から90年にかけての東アジアの発展段階が、技術進歩などの重要性がそれ程高くはなかった時期だったのではというものである.
そこで、ここでは、これら4つの疑問点について検討していこうと思う.