以上の性質を満たすものを、新古典派生産関数と定義している.本小節では、この標準的なモデルを出発点として,総生産の成長を投入物(資本、労働)の成長の寄与分と技術の成長への寄与分に分解し、東アジアの高成長へのTFPの貢献を分析することにする.
まず、1国の生産関数が標準的な新古典派生産関数であるとして、次式で表すことにする.
ただし、Yは総産出量、Aは技術水準の指数、Kは資本ストック、Lは労働投入量、tは時点を表す.本稿ではこの技術水準のことを、総要素生産性(TFP)と定義する.両辺の対数をとり、時間で微分を行うと、総産出の成長率を求めることができる.
ここで、FKとFLは、各投入要素の限界生産性を意味する.この式の最初の括弧にKを掛けて割り、さらに2番目括弧にLを掛けて割ると次式が得られる.
要素市場が競争的である場合、各投入物の限界性産物は要素価格に一致すると考えられるため、AFKは資本の賃料率に一致し、AFLは賃金率に一致する.したがって、AFK/Yは、総所得における資本への賃料支払いのシェアであり、AFL/Yは総所得における労働への賃金支払いシェアということになる.このAFK/YをSK、AFL/YをSLとすると、次式になる.
規模に関する収穫一定性のもとでは、資本シェアと労働シェアを加算すると1になる.資本シェアをαとした場合、次式に書きかえることが出来る.
さらにこの式を、1人当たりの産出量に書きかえると、
となる.ただし、y=Y/L、k=K/Lである.そして、TFPを求める式は、この式を変形して、次のように表すことができる.
そこで、この(1)式に13ヶ国のデータをあてはめ、経済成長率に対するTFPの寄与度を求めることにする.