東アジアの成長の源泉を分析する代表的なアプローチの1つには、各国の「成長会計」に基づき、資本と労働、TFPのどれが成長に寄与したのかについて推計するものがある.この手法は、新古典派経済成長理論と呼ばれるもので、Solow(1957)とSwan(1956)によってほぼ同時に発表され、ソロー=スワン・モデルと呼ばれている.
成長会計の目的は、経済成長率を、資本や労働などの投入量の変化と技術進歩や効率性の向上などを含む総要素生産性(TFP)の変化に分解することにある.特に、TFPについては直接的に計測することが困難であるため、経済成長に対する資本と労働の寄与度を差し引いた値として間接的に求められている.これは、「ソロー残差」と呼ばれている.
成長会計を推計する上での基本的な新古典派生産関数は次のように表される.
ただし、Aは技術水準、Kは資本ストック、Lは労働投入量である.この生産関数が新古典派的(neoclasical)であるためには、次の4つの条件を満たしていることが必要である.
1つ目の条件は、任意のK>0、L>0について、F(・)は、各投入物に関して、限界性産物の正値性と逓減性を満たしていなければならない.すなわち、
ということである.
2つ目の条件は、F(・)が規模に関する収穫一定性(1次同次性)を持っていることである.これは、任意のλ>0に対して、
が満たされていることを意味する.
そして、3つ目の条件は、資本の限界性産物(労働の限界性産物)は、資本(労働)が0に近づいていくと無限大に増加し、逆に資本(労働)が無限に増加すると0に近づいていく。すなわち、
最後の条件は、
である.これは、規模に対する収穫一定性の条件から導き出されたもので、稲田条件と呼ばれている.ここで、k = L/K は資本・労働比率であり、y = Y/L は1人当たりの産出量である.また、関数f(k)は、F(k, 1)に等しいもとのして定義されている.したがって、生産関数は次のように集約的な形で表すことが可能である.