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4.2 民主主義

政府は,言論と出版の自由や立候補する自由,投票の自由などのような民主的権利の程度を変更することでも,経済パフォーマンスに影響を及ぼすことができる.ということは,その国において市民的権利や政治的権利がどれだけ許されているかというものが,経済成長に影響を与える可能性も考えられるgif

Gastil(1987)は,各国について1から7までの主観的な指数を使用して,これら市民的権利と政治的権利に関する測定値を1972年以降掲示しているgif

ここでは,市民的権利と政治的権利の2つについて,経済成長に影響を与えるかどうかの分析をおこなった.まず最初に,政治的自由と経済成長の関係を分析することにする.その結果が表gifである.

政治的権利の分類基準は次のようになる.(1)明確な規則に基づく,完全競争的な選挙が施行される.(2)明確な選挙制度があるものの,実質的な平等の観点から見て少し劣るもの.(3)から(5)までは,明らかに民主的な制度から見て劣るもの.(5)は特に,実効的な選挙が全く行われない.新しく与党になろうとしたり政策を変更したりするような発言を人々に許す競争的な選挙が許されていない.(7)統治者に民間の意見がほとんど効果をもたないもの.

  
表: 政治的自由

全ての国を含めた分析では,政治的自由の係数は有意に負の値を示している.このことは,政治的な自由が制限されるほど経済成長には負の効果をもたらすことを意味すると解される.

さらにこの結果からは,次の2点を指摘することができる.第1は,東アジアの政治的権利の係数は統計的な有意性を持っておらず,他の地域との違いは見られないということである.つまり,東アジアで特に政治的権利が守られていたから高成長が達成されたという議論は成り立たないのである.

第2に,東アジアにおいても,収束現象が見られていることである.つまり,政治的権利の効果を考慮した場合,東アジアにおける高成長が一部説明されるということである.

次に,市民的権利と経済成長との関係を分析行った.まず,市民的権利の分類基準は次のようになっている.(1)立法や行政に対して影響を与えようとする意図からつくられた表現であったとしても,出版は禁止されない.(2)制度が整っていなかったり,自由権を守る意思が弱かったりするなど,(1)に比べてより権威的である.(3)から(5)までは,政治犯がいたり,国家に関するアンケート調査の内容などが頻繁に変わってしまう.例えば,放送が国の監視下にあったり,居住や職業選択の自由が認められていなかったりする.(6)家の中などでのプライベートな会話だけが許されている.この場合,闇ルートで出版物などが出回る.(7)プライベートな会話でも自由ではなく,常に恐怖がつきまとう.ほとんどの場合,自治に対して反対を行うことはなく,処刑なども流動的に行われる.

この分析による結果が表gifである.

  
表: 市民的自由

特筆すべき点は,市民的自由の係数は統計的な有意性をもっておらず,経済成長とは独立的な関係であるということである.このことは,東アジアにも同様に当てはまる.この点は重要で,市民的権利が保障されているかどうかは,経済成長とは中立的な関係にあるということになる.



Tomoya Horita
1999年11月02日 (火) 15時39分30秒 JST