本節では,まず東アジアに収束現象が見られていないことを確認し,たしかにTFPの寄与度は低かったけれども,技術進歩以外の要因が関わっている可能性を高める結果を得た.そして,更なる要因としては人的資本の重要性を指摘し,回帰式へ加えて経済成長の寄与度を分析した.ここでの結論としては,次のようになる.
第1は,就学率などの教育の普及の進展だけでは東アジアの高成長を説明することは出来なかったが,教育水準を加えた場合には,限定的ながら経済成長の一部が説明される結果が得られたことである.
第2は,しかしながら,その教育水準を表す変数も十分なものではなく,さらに最適な指標が必要であるということである.
第3は,初期時点での教育の普及と男性の教育水準が,外部性をともないって,その後の東アジアの高成長を生み出したということである.