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3.4.2 教育修学度

教育の修学度の変数は,Barro and Sala-i-Martin(1995)により作成されたデータ系列を用いている.中等教育と高等教育に費やされた年数の平均値を求め,教育水準の変化を計測しようとしている.それは,この値が高いということは,それだけ教育に接していた期間が長いことになり,質的な人的資本の蓄積も進んでいると考えられるからである.

この教育修学度を説明変数に加えて回帰分析を行った結果が,表gifである.

  
表: 教育修学度の効果(1)

学校修学度の係数は,男性と女性共に負の係数が得られ,男性教育修学度については,先行研究の結果とは整合的ではない結果が見られた.また,東アジアの男性学校修学度は負の値を示し,女性学校修学度は正の係数を表している.しかしながら,これらの係数は全て低く,有意な結果であるとは言えない.

ただ,男性教育修学度は投資シェアと正の相関があり,女性教育修学度はGNP60と強い負の相関があるので,多重共線性の問題が考えられる.そこで,経済成長率と各学校修学度だけを取り出して回帰式を推定した.すると,全ての地域を含む男性学校修学度の係数と女性学校修学度の係数は負の値を示し,東アジアは,正の値を示した.けれども,全ての変数について,統計的な有意性は得られなかった(表gif).

  
表: 教育修学度の効果(2)

この結果からは,次のことが考えられる.第1は,学校修学度は,教育水準の代理変数としては,それほど最適なものではないということである.それは,人的資本の質的な面から見た蓄積は,一人の教師に対する生徒数や教育内容,教育方針,文系か理系かなどの要因によって変わってくることである.つまり,学校教育修学度は,質的な人的資本を表す指標としては,不十分なものではないかと考えられる.

第2は,今回の推計では,高等教育と中等教育とを分けていない点である.Barro and Sala-i-Martin(1995)の研究でも,教育修学度を説明変数として分析が行われているが,中等教育と高等教育とに分類されている.これは,おそらく中等教育の修学度と高等教育の修学度では,経済成長に対する影響が違うためであると考えられるgif



Tomoya Horita
1999年11月02日 (火) 15時39分30秒 JST