テクノロジ−の進歩によって、金融機関と顧客(個人、法人の両者を含む)の間の
チャネルが多様化する。従来型の支店の他にATM店舗や、メ−ル、テレホンバンキン
グ、ファ−ムバンキング、ホ−ムバンキング、銀行POSなど現在でもチャネルは多様
であり、これからはさらなる情報通信技術の発展と社会への浸透で新たなチャネルが
でてくると思われる(資料1-3参照)。マルチチャネル化すると、金融機関は今までとは異なるチャネル
の開発、サポ−トをしていかなければいけないのである。
最近一番話題を集めていると思われる、テクノロジ−の進歩による新たな金融サ−
ビスとして電子マネ−があげられる。電子マネ−は大半が銀行業務革新の結果ではな
く、技術革新の結果である。電子マネ−をサ−ビスとして提供したい金融機関は、技術革新の結果として
生まれた電子マネ−をとても当該金融機関だけで扱うことは技術力の面から不可能で
ある。テクノロジ−は日々進歩
していくため、金融機関だけではどうしてもテクノロジ−面からのサポ−トがしきれ
ないのである。電子マネ−のみでなく、テクノロジ−進歩の結果としてうまれたよう
な金融サ−ビスは標準規格を勝ち取らなければならない。そのため金融機関は、他の
金融機関との提携や他業種である技術系メ−カ−とアウトソ−シングなどという形態
で提携しなければ顧客のニ−ズにみあうサ−ビスを提供していけないのである。
例えば、1998年6月から東京・渋谷でICカ−ド型電子マネ−を使った実験は、
ビザカ−ド、ディ−シ−カ−ド、ユ−シ−カ−ド、東京三菱銀行、第一勧銀、さくら
銀行ほか多数の企業が参加する。その他にも、1998年中に東京・新宿地区で実験
を開始する予定のICカ−ド型電子マネ−プロジェクトでは、NTTと三和、東京三菱、富
士など都市銀行の全行が参加を決めたほか、小田急百貨店、高島屋など大手百貨店も
加わる見通してある。1998年1月
に埼玉県大宮で実施予定の郵便貯金ICカ−ド実証実験では、郵政省、NTT、JR東日本、
ダイエ−、高島屋、セゾンほかが主要参加企業である。このように、金融機関だけで
はなく他業種も含めて共同実験を行っている(資料1-4参照)。
電子マネ−以外のサ−ビスでも、高度な情報通信処理技術などのテクノロジ−を利
用するサ−ビスの動きに金融機関だけで対応するのは今後ますます困難になると思わ
れる。欧米などでは日本以上に積極的に電子マネ−やEC(Electronic Commerce)の実験
を行っている。このようなサ−ビスやシステムの開発や維持には、最先端の開発力や
技術を持つ金融機関以外の企業との提携が不可欠なのである。他産業の企業が提供する
金融サ−ビスについては他産業の進出の章で詳しくは説明することにする。金融機関が
金融機関以外の企業とともにサ−ビスを共同開発し、提供している時は、互いに協力
相手であるが、同じ種類のサ−ビスを異なって開発し、提供している時は競争相手で
ある。テクノロジ−の進歩の結果、金融機関にとって金融機関以外の企業が協力相手
ともなり競争相手ともなる機会がこれからますます増えることになるのである。