日本の個人金融市場は資産側1200兆円、負債側250兆円であり、資産うち預貯金が615兆円を占める
。アメリカでは株式、投資信託など
資産運用が多様化しており、預貯金の比率は2割に満たない(資料1-1参照)。
金融制度改革の狙いの一つには、資金運用の選択肢を広げるとともに、取り引き
コストを引下げ、停滞した日本の金融証券市場を再生させる点にある。金融制度改革
のポイントとして、(1)個人・企業の選択肢が広がること、(2)金融機関の競争を促進
させること、(3)東京市場の空洞化を防止すること、(4)公正な取引と自己責任、
(5)経営悪化や破綻に迅速対応、があげられる
(資料1-2参照)。
例えばどのようなことが可能になるかみてみる。銀行や証券会社の窓口で購入でき
る商品の幅が拡大し、資産運用の配分について一か所で多様な金融サ−ビスが受けら
れるようになる。1997年度中に銀行の店舗で株式投信など購入できるようになり、
2001年以降は限定付きながら保険販売も可能になる。証券会社では1997年度中
に決済機能を持つ証券総合口座が開設できるようになる。マネ−・マネ−ジメント・
ファンド(MMF)などの公社債投信の口座から、給与や年金の振り込み、公共料金、
クレジットカ−ドでの購入代金の引き落しが可能になる。また、1999年末までに
株式委託手数料が自由化される。
金融制度改革によって金融業そのものはどのように変化するのだろうか。金融制度
改革によって、業務・価格・商品に関する規制が抜本的に自由化される。銀行・証券・
保険、さらには都市銀行・長期信用銀行・信託といった業態は意味のないものになる
のである。これによって金融業では、参入と再編がおこると考えられる。金融界以外
からの参入が、金融制度改革によって容易になったのだ。これは独禁法が改正され、
持株会社の設立が可能となったこととも関係している。金融分野の持株会社を考える場合、性格上その傘下に銀行を持つ金融(銀
行)持株会社と、銀行を持たない持株会社に分かれる。銀行の場合は、預金を預かる
ため、金融システムに与える影響が大きいため、銀行を保有する金融持株会社は、一
般事業会社を保有することは必ずしも適当ではないとされている。一方、証券や投資
顧問などが中心で、銀行を持たない持株会社は、一般産業と同じ扱いに近くなる。金
融業界に限っても、他の金融業務への参入は、業態別子会社でも持株会社を設立して
子会社での参入することもできる。金融業以外の産業の企業でも、持株会社で銀行さ
え保有しなければいろいろなことができるので、金融業に参入できることになるので
ある。