電気通信産業の企業として、NTTデ−タ通信をみていく。
NTTデ−タ通信は、1997年5月から銀行における基幹業務システムの共同利用
型アウトソ−シング・サ−ビス「NTTデ−タ総合バンキングシステム(STAR-ACE)」を
取り扱っている(資料1-7参照)。従来はコアな領域として内部で抱えることが多かったが、銀行の基
幹業務システムをアウトソ−シングする動きがある。このことは、激しい競争環境下
で、企業経営は、情報システムについてもコスト抑制への課題が大きくなってきたと
同時に、真の付加価値は情報システムの運営自体ではないということのあらわれであ
る。信頼性を求められる基幹業務システムは、信頼できる専門の業者に任せ、社内要
員はより戦略的なシステム分野へシフトする方が競争時代には望ましいのである。
STAR-ACEは、バンキングシステムの構築から、維持・運営までをト−タルにサポ−ト
するアウトソ−シング・サ−ビスである。対象業務としては、勘定系、情報
系、対外系の業務システムが基本メニュ−で、これに
オプションとして、国際系、資金証券
系が加わる。さらに、ダイレクトメ−ル発行などの付帯業務
も要望に合わせて利用可能である。銀行の基幹業務オンラインシステムをすべてアウト
ソ−シングできるフル・バンキング・サ−ビスである。
もうひとつの特徴は、共同利用型であるということだ。従来、銀行オンラインの
基幹システムは、銀行業務のコアの部分であるとして、内部のシステム部門が抱え込む
か、アウトソ−シングの部分があっても、各行毎に独自のシステムを開発・運用する
のが一般的であった。それをSTAR-ACEでは、複数の銀行で共通のシステムを利用する
形をとっている。システムの共通化によって、プログラム開発や運用の経費が、それ
ぞれの銀行毎に実施する場合と比べて大幅に削減されることになる。従来より30から
40%のコスト削減が可能で、しかも専門要員を内部に抱えないで済むメリットがあ
る。すでに長野銀行が5月6日より、STAR-ACEによる銀行業務を開始しており、今後
も、神奈川銀行、東北銀行など、地方銀行や第二地銀を中心とした利用が相次いで予定
されている。
セキュリティ面では、現在、千葉県のコンピュ−タ・センタ−内での二重化による
バックアップ体制をとっているが、今後は、別の地域にバックアップセンタ−を設置
して、地震等の災害にも対応できるようにする予定である。このような場合は、共同
利用サ−ビスならではのコスト上のメリットが生かせる。このほかにも、サ−ビスの
多様化という面では、24時間365日稼働サ−ビスへの対応や、ICカ−ドを用いた
電子通帳への対応、電子商取引やマルチメディアへの対応など、新たなニ−ズへ対応
した多様なサ−ビス・メニュ−も盛り込んでいく予定である。こうした面では、運用
保守体制や先端技術開発に強みを持つNTTデ−タ通信ならではの特徴が生かされること
になる。
同社では、今回、STAR-ACEだけではなく、証券会社向けの共同システム型アウト
ソ−シング・サ−ビスや、外国為替業務のアウトソ−シング・サ−ビスも相次いで
開始しようとしている。同社は、金融機関がビッグバンを乗りきるためのパ−トナ−
として、信頼性と技術力とノウハウを最大限に生かしてあらゆる分野でのアウトソ−
シングに対応していく構えである。