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3.3.1 むすび〜質的な人的資本の蓄積と経済成長の関係への考察

これまでの推計によって、人的資本が経済成長へ正の影響を与えることが明らかになった.しかしながら,質的な人的資本を考慮したとしても,東アジアの高成長を十分に説明することは出来なかった.このことから,質的な人的資本の蓄積は,東アジアの高成長には,それ程寄与していたかったと解釈してもよいのだろうか.

けれども,ここでいくつかのの疑問点が浮かんでくる.1つ目の疑問は、学校就学率は学校教育を受けたことのある人数の拡大を表してはいるが、教育自体の質的な側面は全く表していないという点である.たしかに,学校就学率が高まるということは,教育の普及を表してはいる.しかし,質的な人的資本を見る場合,教育水準の改善等も考慮してやる必要があるのではと考えられる.

2つ目の疑問点は,男女の区別をしなくてもよいのだろうかというものである.もし,男女の間に職業の違いがないのなら,問題はないと思われる.しかし,女性の就く職業が男性に比べて単純な内容のものであるなら,たとえ同じ教育を受けたとしても,経済成長への寄与度は違ってくるのではないかと推測されるからである.

3つ目の疑問点は,初等教育や中等教育,高等教育と分けて分析を行う必要があるのではないかというものである.

4つ目の疑問は、人的資本が経済成長の源泉として重要なことは明らかになったが、ではなぜ東アジアでのみ人的資本への投資が活発に行われたのかという点である.

そこで、以下ではこれらのの疑問点に留意し、(1)質的な人的資本の蓄積と経済成長の関係と,(2)なぜ東アジアで人的資本の蓄積が多くなされたのか,について更に議論を進めていくことにする.



Tomoya Horita
1999年11月02日 (火) 15時39分30秒 JST