伊藤忠商事は、1992年11月にアメリカに子会社アライド・キャピタル・マネ
ジメント社を設立した。同社は、商品ファンドの運用受託、管理会社(コモディティ・
プ−ル・オペレ−タ−)だが、商品ファンドとは別に、アメリカのヘッジファンドを
幾つか組み合わせて一ルの商品とするファンド・オブ・ファンズを、93年から日本の
証券会社を通じて日本の事業会社に販売、運用残高はすでに700億円に達している
という。また、アメリカではヘッジファンドの運用そのものを行うクリントン・グル
−プ・インクというジョイントベンチャ−を持つ。クリントン・グル−プはMBS(抵当
証券)のア−ビトラ−ジ(裁定取引)を行っている。公募しているあるファンドは94
年7月から運用を開始、毎月マイナスを記録することなく利益を積み上げ、年率で
初年度17.41%、次年度14.89%、3年目は21.03%の利回りを記録
している。資産は今年3月末で当初と比べ58%増えている。
住友商事は商品ファンドをこれまで実験的に2本、100億円発売しただけだが、
近々発売する商品ファンドは数百億円規模に拡大する。商品ファンドは元本保証で
そこから先のリタ−ンは運用次第。従来、リスク部分の5割以上は商品先物取引で
運用し、投資単位は1000万円以上という規制があったが、9月からは金額規制が
なくなり、運用対象も徐々に自由化される。金利に目覚めた日本の個人預金500
兆円の受皿として有力視される。
住友商事、兼松に続いて、丸紅はこの秋までに損害保険ブロ−カ−(仲介業務)会
社を設立する。すでに本体と子会社で損害保険の代理店業務を行っているのに、ブロ
−カ−会社を設立するのは、1998年7月から自動車保険・火災保険の料率が自由化
されるからだ。まだ具体的な日程は決まっていないが、ビッグバンで損害保険の商品
品目が自由化されると、ビジネス・ユ−スの損害保険商品は商社系のブロ−カ−会社
の独壇場となる可能性がある。本来、リスクマネイジメントを行ってきた商社には
事業リスクに対応する保険商品の設計能力は、損害保険会社がどうがんばってもかなわ
ないと思われる。もう1つ、商社の強みは再保険能力である。どんな保険会社もリスク
分散のために再保険を掛ける。この再保険市場は国際市場であり、ここで商社の国際
的なネットワ−クと信用力が生きてくる。丸紅は最近、シンガポ−ルに再保険引受け
会社と再保険のブロ−カ−会社を設立した。
商社の資金運用に対する自信は自分たちの腕である。バブル時代、ファンドトラスト
などで証券・信託銀行の運用力の実態を思い知らされた商社は1993年から自己運用
に切り替え、大きな枠で利益をあげているのだ。住友商事は1996年度決算で受取
配当金が75億円増加したが、うち40億円は金融子会社からの配当であった
。このように商社の場合は自由化が参
入のきっかけとなっており、他産業のようにテクノロジ−がひきがねとなっていない
例である。