電気機器産業の企業は、製品ができるまでに関連会社との情報の送受が受発注も含
めいくどとなく行われる。このような取引のある企業同士をネットワ−クで結び、
電子化する動きがある。そのネットワ−ク上で、取引の結果生じる決済業務などの
金融業務を内製化しようとしている。電気機器企業は、自前の先端技術を活用して
電子マネ−以外の手段でも決済業務に進出する可能性が大いにある。
NECは、年間資材調達額の9割り近くに当たる約2兆円分をインタ−ネット取引に
切り替える。来年3月までに国内の主要取引先400社との間で次世代情報システム
「エクストラネット」を構築し、書類や電話で行っていた
資材の受発注作業をパソコン上でのやり取りに切り替える(資料1-10参照)。将来は代金決済まで行う
予定である。売買代金の決済は当面、関連情報の交換にとどめるが、将来的にはすべて
ネット上で処理できるようにする。
日立製作所は、受発注から決済まで大半の手続き・業務を電子ネットワ−ク上で完結
できる電子商取引支援サ−ビスを9月末から始めると発表した。関連会社・取引先
約2100社でスタ−トするが、日立と取引のない企業も参加できるかたちにする。
企業間のネッティング(相殺決済)がネットワ−ク上で可能になるため、業務・金融
コストを削減しようという企業の取り込みを狙っている。会員となった企業は製品・
技術情報や見積り情報、図面・仕様書、資材調達情報をやり取りできるほか、日立と
取引企業間、会員企業同士、さらに会員企業とその子会社間の売掛・買掛債権を相殺
決済できる(資料1-11)。銀行口座振込サ−ビスなどの機能も順次追加する予定である。日立は
関連会社45社とすでに相殺決済を実施しており、月間1000億円の取引のうち
250億円を相殺決済している。相殺分は銀行手数料を支払わなくてもいい計算にな
る。丸紅やブリジストン、アイワも同様の相殺決済のための「企業内銀行」の構想
を明らかにしている。ただ、多数の拠点を結んで新たな通信機器やソフトが必要になる
ため、従来に増して情報化投資がかさむ。日立の企業間電子商取引支援サ−ビスは、
決済をはじめとする金融業務を内製化したいという企業の情報化投資を肩代わりする
新事業といえる。
電気機器産業は、上でみた例のように先端技術と多数の取引先とのネットワ−クを
もっている。電子マネ−の技術面からと、ネットワ−ク上での金融業務と決済分野に
大きく進出してくることになりそうである。