特徴
ICカ−ド方式電子マネ−は、小口決済向きで、「現金の価値を持った電子
デ−タ」をICカ−ド上に保管し、ICカ−ドの読み書きができる専用の端末機
を介して「価値」の移転を行うものである。ICカ−ド方式電子マネ−の実現は
、近年の情報革新、とりわけICチップの大容量化、低価格化(従来
ICカ−ドは1枚数千円していたが、最近の海外プロジェクトで利用されてい
るものは数百円のレベルにまで値下がりしている(「決済システムを巡る海
外の動き」『日本銀行月報』1995年10月号による)。)、暗号技術の発達、IC
カ−ド内情報の物理的安全制(不正な読みだし・書き換えを困難とする技
術)の向上等に支えられている。今までは用途によって数枚持ち歩いてい
たプリペイドカ−ドが、ICカ−ド1枚でいいのと、現金の取扱い・持ち運
びに伴うコストの削減がメリットとしてある。
ICカ−ド方式は、インタ−ネット上でのサイバ−モ−ル以外でも様々な決済に
使用できる。ICカ−ドから、まるで財布から小銭を出し入れするように、電子化
された価値を出し入れすることから電子財布(electronic purse)とよばれること
がある。銀行から預金を
引き落として価値をカ−ドに充てんし、商店の店頭でクレジットカ−ドと同じように
買物に使用できる。また、ICカ−ド対応の公衆電話を通じて遠隔地への送金にも
使用できる。しかも、クレジットカ−ドのように後から代金を銀行口座で決済する
必要はなく、買物をしたその場で決済が完了するのだ。価値を受け取って残高が
増えたら、銀行口座への預金も可能である。
「決済システムを巡る海外の動き」『日本銀行月報』1995年10月号によると、
ICカ−ド方式電子マネ−は、その「価値」を持ったデ−タの流通形態に着目すると、
カ−ド保有者間で「価値」の移転が可能か否かで2種類に大別可能である。1つは、
「価値」が発行主体から消費者(カ−ド保有者)に移転したあと、消費者から小売
店経由で発行主体に移るというように、消費者が小売店で利用した後に直ち
に発行主体に戻るタイプである。これを
closed-loop型という。2つめは、「価値」が消費者(カ−ド保有者)が最初に利用
した場所から直ちに発行主体に戻るとは限らないタイプ、換言すれば、「価値」が消
費者から他の消費者等に転々と流通することを許すタイプである。これをclosed-loop
型という。closed-loop型の場合、その経済的機能は、ICカ−ド1枚でその「価値」
を用いて購入できる物やサ−ビスの範囲が広いという点を除けば、基本的にはテレホ
ン・カ−ドに代表される現行のプリペイドカ−ドと同じであるといえる。一方、open-
loop型は、カ−ド保有者間で「価値」のやり取りを自由に行えるという点が最大の
特徴である。こうした価値の移転は、発行主体に通知されないまま行われるので、
発行主体はこの間、価値の保有者名を把握できない。このことは、利用者にとって
は匿名による決済というメリットをもたらす一方、発行主体にとっては、万が一
価値が偽造された場合、その早期発見や犯人の特定が困難であることを意味する。こ
のため、open-loop型のICカ−ド方式電子マネ−には、十分な偽造防止メカニズムが
手当される必要がある。ICカ−ド方式電子現金の仕組みの図は資料10参照。
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