普及状況
現在、世界各国で各種のICカ−ド方式電子マネ−のプロジェクトが進行中である。
推進主体は、銀行・大手クレジット会社のほか、中央銀行、郵政省等の例があり、
実際に財・サ−ビスの購買力となる「価値」の発行主体としては、民間銀行(ある
いはその合弁会社)、中央銀行、郵政省などのバリエ−ションがある。
これらのうちで最もよく知られているのは、イギリスのMondexというプロジェ
クト(http://www.mondex.com.mondex)でありそれは、
発行主体がナショナルウエストミンスタ−銀行とミッドランド銀行の合弁会社である
(資料11参照)。価値の流通形態は、発行主体から銀行へ、そしてさらに消費
者ないし小売店へ、さらに別の消費者ないし小売店へ、という形で流通するop
en-loop型である。現在のところ、このICカ−ドの利用
者は、同プロジェクト対応のATMや専用電話機を通じて、自己の銀行口座から残高を
カ−ドに随時移した後、同プロジェクト対応の端末を有する小売店で買物を行ったり、
専用電話機を通じて同様の専用電話機を所有する遠隔地の利用者に送金を行うことが
可能、と説明されている。
また、発行主体が中央銀行である例もある。Avantというプロジェクトは、発行主体
がAvant Finlandという中央銀行の孫会社である。Avantは、中央銀行100%出資子
会社のSETEC社が製造し、SETEC社100%出資子会社のAvant Finland社が発行主体
および運営主体として機能している。キオスク、ガソリンスタンド、交通機関等で
販売され、カ−ドの額面最高額は約2万円相当である。1992年12月に価値再
充填不可能カ−ドを発行し、1994年2月に価値再充填可能カ−ドを発行した。
価値の流通形態としては、closed-loopである。
他にも、発行主体・推進団体が郵政省である例もある。スイスのPostcard/Postmatは
、推進団体が郵政省である。自動販売機、電話、ファ−ストフ−ド、娯楽施設などの
小口決済向けであり、価値の流通形態はclosed-loop型である。フランスのLe porte-
monnaie electroniqueは、郵政省とFrance telecomの共同推進である。これも、小売店
、自動販売機などの小口決済向けである。価値の流通形態は、closed-loop型である。
台湾のプロジェクトFISCARDは、推進団体がFISCという大蔵省と民間銀行25行の共同
出資による政府機関であり、発行主体が台湾銀行など民間銀行19行である。小売店、
レストラン、電話等の小口決済向けでキャッシュカ−ド・クレジットカ−ドとしての
機能も持つ。価値の流通形態はclosed-loop型である。以上のような、各国における
主な電子財布プロジェクトについての表を『日本銀行月報』「決済システムを巡る海
外の動き」より資料12として載せておくので、詳細は資料12を参照していただき
たい。
各プロジェクトのICカ−ドによっては、ネットワ−クを介した送金ができるものと
そうでないものとがある。価値の再充填可能な(リチャ−ジブルな)ICカ−ドとそれに
加えてネットワ−ク送金機能を持つ方式のICカ−ドとがある。上に例としてあげた
中では、Mondexは価値の再充填機能に加えて、暗号・認証技術を駆使してネットワ−ク
を介した送金を可能とするものである。(堀内昭義編著『金融の情報通信
革命』1996年による。)
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