決済手段に求められる一般的条件
現金,預金,クレジットカ−ド,小切手,電子マネ−にかかわらず、決済手段・シ
ステムとして成り立つための条件として必要なことは何であろうか。日本銀行金融
研究所の『新版わが国の金融制度』第2部第1章決済システムの説明をもとに考え
ていく。
企業,家計,政府などの経済主体は、財、サ−ビス、金融商品を取引きし、それに
伴って代価の支払いを行っている。これが「決済」であり、ここで用いられる支払い
のための手段を「決済手段」という。また、決済が円滑に営まれるような組織的
な仕組みが「決済システム」である。決済システムは、決済によって取引きが完了
することろから、取引き当事者間にとって非常に信頼できるものでなければなら
ない。また、決済システムの抱えるリスクが大きく、円滑に営まれないと決済
システムの信用を失うだけでなく、金融システム自体の信頼を失うことになり、
経済活動自体が円滑に行われなくなるのである。
決済手段としては現在、種々のものが利用されているが、最も基本的なものは
現金である。現金は、法貨としての強制通用力(法律で現金を用いて
支払う場合には、相手はその受取を拒絶することができないと決められている。
ただし、硬貨は額面価格の20倍(すなわち20枚)までは法貨として通用するが、
それを超える受取は拒否することができると定められている(岩田規久男『金融入
門』による)。),汎用性,一般的受容性を付与さ
れた決済手段であり、(1)すべての取引の決済に利用できる(汎用性)(2)現金
の受渡しによって支払いが完了する(支払い完了性)という特徴を有しているた
め、小口取引きの決済手段として家計や企業により広く利用されている。法律が
強制通用力ある決済手段として定めているのは現金のみである(このため現金は
法定通貨または単に法貨といわれる)が、現実には銀行
預金,プリペイドカ−ド,クレジットカ−ド等、現金の直接的な授受によら
ない決済手段が多く用いられるようになってきている。それは、現金のように法
律による強制通用力の裏付けがない決済手段についても、多数の取引き参加
者が合意すれば、現金に近い性質を持ち決済手段として人々に広く受け入れ
られるということである。反対に、現金がたとえ法貨として法律の裏付けが
あっても、リスクが大きく、価値が非常なインフレによって定まらなくては
決済手段としての機能を果たしていないことになる。(現金、金銭に
関するさらに詳細な説明は古市峰子「現金、金銭に関する法的一考察」を参照。)
つまり決済手段・システムとして成り立つためには、リスクが少なく、社会的
に認められ合意が得られることが重要である。そのためには、汎用性や一般的
受容性といった信用を社会や多数の取引き参加者から得られなくてはならない。
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