普及状況


 1994年12月に、オランダのデジキャッシュ社(http://www.digicash. com/)が開発した「e-cash」の実験が開始された(資料16参照)。インタ−ネッ トに接続した自分のパソコンに、無償で提供される専用のソフトウエアを組み込 むだけで使用できる。ソフトウェアで現金の支払いを完全に電子的に実現するも のである。相対での支払いを可能にし、利用者の匿名性を保証する機能がある。 二重使用の防止と匿名性の保証 を両立させるためには、電子現金の発行者は一度発行した電子現金に関する情報 をデ−タベ−スに保存しておく必要があるわけだが、e-cashの場合、理論的にはそれ らのデ−タが永久に保存されなければならない仕組みになっている。そのため、 e-cashの発行者が保存しておかなければならないデ−タの量は、e-cashの発行量(高) にしたがって増加していくという問題点がある。また現金と同様に、本人の資産や 信用を前提とせずに(現金を持っている人が、代価として相手に支払いをするよう に)支払いが可能である。テストユ−ザ−(参加者)は最初に、e-cash専用の ソフトウェアと100サ−バ−ドル(e-cashの通貨単位)分のe-cashが配布され る。これを実験に参加したオンラインショップで使うことができる。現在、40 00人以上のユ−ザ−が参加しており、e-cashの支払いで画像やソフトウェアなどを 売るという「取扱店」も50以上にのぼるといわれている(資料17参照)。
 1995年10月、アメリカのミズ−リ州にある地方銀行、マ−ク・トウェイン 銀行が、デジキャッシュ社が開発したe-cashと米ドルの間の交換を可能にした。 実在する 通貨(ドル)の裏付けを与えて発行したため、世界的に注目を集めた。ただ、同行 のeキャッシュサ−ビスは手数料が高く、利用できる店舗や購入できる商品の数は 多くない。しかし、世界中から同行には問い合わせの電話や電子メ−ルが殺到して いるという(日本経済新聞1996年5月31日「電子マネ−の可能性」より)。
 ネットワ−ク固有の電子現金方式は、ICカ−ドやクジレットカ−ド方式の電子 マネ−に比べて、既存の決済手段の延長線上にはないことから、取り組んでいる団体 やプロジェクト数も少ない。また、電子現金方式の電子マネ−が使えるサイバ−モ− ルの数や扱っている商品の種類も少ない。しかし、世界中から注目を集めている のは事実であり今後も注目を集めていくだろう。

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