next up previous contents
Next: 原田・高田(1993)のシミュレーション Up: 高齢化社会の経済構造 Previous: 高齢化社会の経済構造

高齢化社会のとらえ方

日本社会は現在、前の章でも述べたように、他の先進諸国に例を見ないスピードで高齢化が進みつつある。今後の高齢化の進展の結果、生産年齢人口(15-64歳)にたいする老年人口(65歳以上)の割合は飛躍的に上昇する。1970年では10人の生産年齢人口で1人の高齢者を支えればよかったのだが、2025年には2,3人余りで1人を支えなければならないということになる。(図表2)

この憂鬱さ救う可能性として、3つのことを述べる。一つは、寿命が伸びるのならば、人々が健康なまま高齢者になれる可能性が高くなると考えられる。その結果として、高齢者の労働参加率が高まれば、若年労働者が支えなければならない高齢人口がそれほど増大しないというものである。二つめは、人口の成長が鈍化する過程で子供の数が減少し、労働力とならない子供と高齢者の和(従属人口)はそう増えるものではないというものである。そして三つめは、人口構成が高齢化するとき、人々は老後に備えて貯蓄をするので、貯蓄率が高まると考えられる。その貯蓄は日本における資本ストックとなるか、海外に対する債権となって将来の高齢化の支えとなるということである。資本ストックが増大すれば、将来の若年労働者はより多くの資本に助けられて労働し(労働の資本装備率が上昇し)、より高い賃金をえることができる。あるいは、海外の債権からの収益によってより少ない労働でより高い生活水準を維持することができるというものであるgif

高齢化社会は数少ない若年層が老人層を支えなければならない憂鬱な社会か、それとも過去の資本蓄積によって若者が効率的に生産することができる豊かな社会か、今回は、原田・高田(1993)によるシミュレーションを参考にしてgif、考えていくことにする。今回、この原田・高田のシミュレーションを取り上げたのは、今後の貯蓄率自体の動向をシミュレーションしたものは、チャールズ・ホリオカ(1991)、Hayashi,Ando and Ferris(1988)などの、数多くのものがあるが、貯蓄率から就業者あたりの資本ストックや、一人あたりのGNPをシミュレーションし、今後訪れる高齢化社会が、上に述べたような豊かな社会になるかどうか論じているものは、他に見あたらないからである。



Fumihito Maegawa
Mon Mar 16 20:15:21 JST 1998