次に、情報技術革新は(2)の与信機能をさらに細かく構成要素へ分解する 要因となる。すなわち、与信機能の分解とは、
しかし、最近では、個々の投資プロジェクトや貸付債権に対するリスク評価自 体を他の資産と切り離したうえで売買するという業務の運営方法も可能となり つつある。つまり、銀行は個々の貸付に付随する各種のリスクをひとまとめに 預金という金融商品を通じて情報生産機能を販売していたが、そのひとまとめ にした各種のリスクを分割し、それぞれのリスクを別々に販売することが可能 となったのである。このことは、近年の米国における資産売却(asset sales) の動きにより明確であろう。
資産売却(asset sales)はそれ自体で大きなテーマであるため、ここではあ まり深く立ち入らないが、資産売却の動きが金融へ与える影響として、金融の 証券化(セキュリタイゼーション)を誘発することがあげられる[2]。 しかし、資産売却の動きはいわゆる「銀行離れ」を招くと短絡的に判断できる ものではなく、「(金融仲介業者・機関の間の新たなネットワーク的結び付き の形成を通じて)金融仲介機能の提供をめぐる分業体制の高度化」 [3]がはかられつつあると判断すべきであろう。
以上の動きは、近年における情報処理・通信技術の発展に伴い、個々の貸付債 権ごとに評価されたリスクとリターンが別々に存在する金融商品に組み替えて 提供することによっても、採算がとれるようになったことにより可能となった。 つまり、分業化に伴う相互調整のためには、大量の事務処理が可能でなければ ならないが、情報技術革新により、大量の事務処理が迅速かつ低コストで行な えるようになったのである[2]。