近年の情報処理・通信技術の進歩は、金融に対して大きな影響を与えてきてい る。本稿では、金融の中でもその中心である銀行業を取り上げる。第二章では、 日本の銀行業においてどのようなテクノロジーの進展(情報システムの整備) が進められてきたのかを分析する。日本の情報システムの整備状況は、導入時 期によって第一次〜第三次オンラインシステムに分類することができる。その それぞれについて分析するとともに、ポスト第三次オンラインシステム及びテ クノロジーの進展に伴う金融新サービスの展開について触れる。第三章では、 金融新サービスの展開の中でも、最近さまざまな分野から注目されているインター ネットにおける金融サービスの展開について触れる。二章及び三章では、金融 システムに対して、どのようなテクノロジーのインプットがあったのかを分析 すると考えていただきたい。
第四章では、それに対してどのようなテクノロジーのインプットからどのよう なアウトプットが産出されたのかについて触れる。すなわち、テクノロジーの 進展が金融に対してどのような影響を与えたかについてである。さまざまなア ウトプットが考えられるが、ここでは「銀行業の効率化」、そして、「銀行機 能の分解」について分析する。そして、ここで金融情報システムの整備は金融 の証券化の誘因の一つであることを説明し、しかし、それが銀行離れに直接は 結びつかないいことを導く。
第五章では、そのような影響による金融システムの変化に対して、金融行政は どのような対応をすべきなのかについて触れる。ここでは、日本の金融システ ム(金融制度)はこれまで個別金融機関の安定性を目指してきたが、今後は情 報システム・テクノロジーの発展を最大限活用しながら効率性を目指すべきで あることを指摘し、安定的かつ効率的な金融システムに向けて金融情報システ ムをどう活かすか、日本の金融行政の運営のあり方に対して提言を行う。結論 として、日本の金融行政が安定性だけを追求するのではなく、効率性及びそこ から誘発される競争または創意工夫を支援する環境作りをも視野に入れた運営 を目指すことを提言する。
第六章では、今後の研究課題を扱う。「情報技術革新は金融に何をもたらした か?」という今回のテーマは、限られた時間で執筆した本論文では充分に取り 扱えなかった部分、または充分な考察ができなかった部分もある。そこで、今 回のテーマの研究を今後も続けたいという筆者の決意も含め今後の研究課題を まとめた。