情報化投資は日本経済の成長力をどう変えたか?−日米対比を含む実証研究―
都澤総明 : 総合政策学部4年
1998年度 秋学期
岡部研究会レポート
(1999年2月改訂)
本論文を作成するにあたっては、丁寧で懇切なご指導をして下さった岡部光明教授お
よび有益なコメントをしてくださった研究会のメンバーに感謝したい。また、資料入
手に際して、財団法人国民経済研究協会ならびに富士通総研経済研究所から得たご協
力に感謝したい。
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概要
- 近年におけるコンピュータの高性能化・低価格化に見られるような情報処理技術
の革新や、それに伴う情報関連産業の急速な成長は、経済全体にとって新たな需要要
因として経済成長にも寄与している。一方、そうした産業の成長は生産過程を効率化
するなど経済の供給構造をも変えつつある。また、情報関連産業に特徴的に見られる
ソフトウエアなど、知識や情報といった無形の知的価値が経済活動に与える影響も増
大している。このため、このような情報化関連支出の増大は経済成長率を引き上げる
一方、物価の安定化にも大きく寄与しているとの見方(米国経済に関するニュー・エ
コノミー論)も有力になってきている。
- 本稿では、日本における情報化投資の推移を産業別に明らかにするとともに、そ
れが日本の経済成長にどの程度寄与しているのかを推計し、米国における同様の研究
結果と比較した。その結果判明した点は、第1に、産業連関表を用いて日本の産業27
部門それぞれの情報化投資の1970年から90年までの推移を見ると、産業部門によって
ばらつきがあるものの、投資総額に占める情報化投資の割合は総じて上昇傾向にある
ことである(1990年は約15%)。第2には、そうした投資動向を反映して情報化資本ス
トックの増加率(1972-95年)は年平均で約11%(うちコンピュータストックはどう約
18%)と高い伸びとなっていることである。第3には、情報化資本の経済成長に対する
寄与度を成長会計(growth accounting)の手法を用いて推計すると、年平均
0.31-0.33%(うちコンピュータの寄与度は0.11-0.12%)の成長率押し上げ要因となって
おり、米国(それぞれ0.31%、0.16%)と同程度であることである。しかし、第4に、日
本経済の平均成長率は米国のそれよりも高かったため、経済成長率に対する寄与度と
しては日本では比較的小さなものに留まったこと(1980年代以降は日本が約10%、米国
が約15%)である。第5に、このようにハードウエアのみを取り上げた計算では情報化
資本の寄与は比較的小さいが、統計の整備されていないソフトウエアなど広義の情報
化資本を組み込んだ場合はその寄与は上昇する可能性が大きいことである。このた
め、今後は情報化投資に関連する統計をさらに整備する必要がある。
キーワード:知識集約化、情報化投資、産業連関表、成長会計分析
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