アメリカでは、個人向け財務管理ソフトのマ−ケットは、一般家庭へのパソコン
の普及も手伝ってここ10年間のうちに大きく伸びた。アメリカでは、財務管理を
個人で行う習慣が強く、このような財務管理ソフトが一般に普及している。この
要因としては、アメリカでは公共料金などの支払いに関し、日本のように自動引き
落しが利用されることがほとんどなく、消費者は各料金の支払いに対して小切手を
発行するのが通例であったこと、また、日本では給与所得者の大半は源泉徴収によ
り所得税を支払うが、米国では給与所得者も確定申告を行わなければならないこと
などがあげられる。
こうしたリモ−トバンキングへの参入を狙ってマイクロソフト社は、高いシェアを
持つ個人財務管理ソフト「クイッケン」を持っているイントュイット社を買収し、「
クイッケン」によって7000万人とも言われるウインドウズ・ユ−ザ−を自社の
ネットワ−ク(MSN、マイクロソフト・ネットワ−ク・サ−ビス)に引き込んで個人金融サ−ビス業務をも手に入れようとした。
しかし銀行側の反発もあり、独占禁止法違反の判定でブロックされた。クイッ
ケンのサ−ビスの特徴としては、(1)小切手を切ると同時にトランザクションをパソコン
に収納し、家計簿もつけられる、(2)納税計算や作表が簡単、(3)ライフプランや退職
金などのシュミレ−ション、(4)個人事業者は財務管理、給与計算、売掛/買掛金管理
ができる。「クイッケン」は、アメ
リカ中に約900万人のユ−ザ−を持っており、アメリカにおける個人財務管理ソフト
・マ−ケットの約65%のシェアを占めている(資料1-12参照)。このソフトウエアは、口座振替指示を
暗号化して伝送する機能を持ち、利用者から指示デ−タが送られると、インテュイット
社の子会社であるISC社(Intuit Services Corporation)が取りまとめて銀行にデ−タ
の伝送を行い、口座振替を行う仕組みになっている。銀行へのデ−タ伝送は電子的に
も行われるが、銀行からの要請があれば紙の小切手の発行も行う。今のところ、紙の
小切手による支払い
サ−ビスの利用者と電子デ−タでのサ−ビスの利用者はそれぞれ65%と35%である
が、最近、一般家庭へのパソコンの普及率が急激に上昇したことなどから、将来的に
はその割合が逆転するだろうとインテュイット社はみこんでいる。
同様の主要ソフトウエアとしてマイクロソフト社の「マネ−」、メカ・ソフトウエア
社の「マネ−ジング・ユア・マネ−」があげられ、これらのソフトでもネットワ−ク
を介した支払いサ−ビスをサポ−トしている。マイクロソフト社は、この「マネ−」
と「マイクロソフト・ネットワ−ク・サ−ビス」の連携によるサ−ビスの強化を狙って
おり、一方、メカ・ソフトウエア社には、バンク・オブ・アメリカやCIBC(Canadian
Imperial Bank of Commerce)などの銀行自身が資本参加するなど、今後の各社の動向
が注目される。