おわりに −残された検討課題−


 電子マネ−には、見方によって様々な側面がある。社会問題としての側面からは、 「もし、電子マネ−が現金にとってかわったら、インフラを備えていない社会で貧 しく不利な立場にある人たちはより不利になるのではないか。」といった疑問を 抱く人もいる。(Mondexのインタ−ネット上のFAQ(frequently Asked Questions)のペ−ジより。)これに対して、Mondexは否定的見解を示している。また、 EUの通貨統合の問題とからめて、「EMU(European Monetary Union)への対応はあ るのか。」といった疑問もでている。このように、本稿のなかでは触れなかったが 新しく誕生しつつある電子マネ−に対しては、法律,社会,政治的な側面からも 考える必要性がある。また、経済的側面でも、マネ−サプライに与える影響(電子マネ−での決済が増大することにより相対的に預金通貨での決済が減少 し、マネ−サプライ・コントロ−ルが困難になるのではないか、というものである (「電子マネ−による決済の新潮流」『金融ジャ−ナル』1996年3月号による)。また 、中央銀行との関係については金融研究会「決済システムの変革と中央銀行の役割」 を参照。)や金融政策への影響、銀行業の役割などまだまだ残された課題は多い。
 最後に、電子マネ−を調べていて感じたことは、電子マネ−によってキャッシュレス な(現金の無い)社会になるのではなく、インタ−ネットといった社会インフラ の多様化によって、現金部分がより少ない社会になる可能性が生まれたということで ある。

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