人口の高齢化は先進諸国に共通の現象である。このうち、ヨーロッパ諸国の高齢化は概して20世紀に入ってから顕著に進み、現在、65歳以上人口比14-15%程度(アメリカは11%程度)に達している。これに対してわが国では、出生率低下が著しく進んだのが第二次大戦後であったため、高齢化の開始も遅れ、65歳以上の人口比率が7.1%となった昭和45年に、はじめて国際連合の定義による「老化した人口」(65歳以上人口比率7%以上)の仲間入りをした。
ただ、ヨーロッパ諸国において65歳以上人口比率が7%から14%に上昇するのに45-135年もかかっているのに対し、わが国の場合はそれが26年程度ときわめて急速であり、昭和50年の7.9%、55年の9.0%から、厚生省人口問題研究所の「将来人口推計(昭和56.11)」の中位推計のよれば、2000年には15.6%となってほぼヨーロッパ並になり、さらに2015年頃から20%を超える水準に達するとみられる(図表1)。 このように、わが国の人口高齢化は急速かつ高水準であることが注目されている。
高齢化によって引き起こされる問題としては、社会保障の問題や、医療費問題、年金問題などが考えられるが、これらの問題を引き起こす根本的な要因は、生産年齢人口に対する老年人口の割合の上昇である。こうした現象は、日本の貯蓄率にも影響を与え、国内のみならず、国外においての対外不均衡の問題とも、密接に関係している。本稿では、まず第2章で、今後訪れる高齢化社会をどのようにとらえていけばよいのかを考え、第3章で対外不均衡と貯蓄率について論じる。そして第4章では、高齢化によって今後日本の貯蓄率が下がるのかどうか検討し、第5章で、今後訪れる高齢化社会に対しての政策提言を行う。