銀行の合併は経営の効率性と

安定性を高めるか?

 

 

山口陽平 総合政策学部3年

嶋頼彦 総合政策学部3年

 

岡部研究会研究報告書

2000年度秋学期(2001年2月改訂)

 

 

本稿の作成にあたっては、懇切で思慮深いご指導をして下さった岡部光明教授(慶応大学総合政策学部)に深く感謝したい。また、研究報告会議(1月20、21日)において有益な議論を交わすことのできた岡部研究会のメンバーにも感謝したい。さらに、第1部に関しては、馬渕紀壽先生の「国際金融論」の授業、森平爽一郎先生の「経営分析論」の授業が大変参考になった。さらに、SFCのデータベース環境がなければ不可能な分析であった。この場を借りてお礼申し上げたい。

誤りに関する指摘やコメント等は、電子メールにて
s98014yy@sfc.keio.ac.jp(山口)、s98469ys@sfc.keio.ac.jp(嶋)まで送信されたい。

 

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概要

日本の銀行は、バブル経済が崩壊した1990年代には経営破綻に陥る例がでてくる一方、合併する動きも目立ってきた。銀行が合併するのは、通常、それによって経営の効率性と安定性を高めることが狙いであるとされる。果たして、銀行合併はそのような効果を生んでいるといえるのか。本稿では、二つの異なる分析手法によりこの点を実証的に解明した。

1部では、オプション・アプローチにより、都市銀行を中心に倒産確率を推計した。オプション・アプローチによる倒産確率推計とは、「負債を現有資産の売却によっても返済できない」という倒産の定義に基づき、資産と負債の関係を、株価と行使価格の関係になぞらえることによって、ブラック=ショールズ式を応用することで企業(本稿では銀行)の倒産確率を推計する手法である。本稿では、合併発表があった前後の倒産確率を比較することで、当該銀行の経営安全度が合併によって高まったかどうか、またそれが様々な事象と合理的に関連づけられるのかどうか、を検証した(対象期間は199841日〜20001231日)。分析結果によれば、長銀、日債銀の破綻が相次いだ1998年秋には、全ての都銀で倒産確率すなわち信用リスクが急激に高まった。これは、ある銀行が倒産すれば、それが他の銀行に伝播するというシステミックリスクによると考えることができる。その後、2000年春頃には、合併を表明した4大金融グループ(みずほホールディングズ、三井住友銀行、三菱東京グループ、UFJグループ)については、すべての場合、合併発表の後、合併する銀行同士の倒産確率が一致する方向で推移し、また倒産確率も低下した。そして、この時期には、合併を見送った都銀(大和銀行、あさひ銀行)の倒産確率も同様に低下した。一方、合併発表以前から倒産確率が比較的高かった向き(日本信託)では、合併発表後に一時的ながらむしろ倒産確率が急激に上昇し、その後それが急低下するといった独自の推移がみられた。以上の結果は、(1)倒産確率がもともと高い銀行は、合併発表により倒産確率を低下させることができたこと(4大金融グループ、日本信託)、(2)合併の方針を打ち出さなくとも抜本的な経営改善策を打ち出せば倒産確率を低下させうること(大和、あさひ)、(3)倒産確率が比較的高く、また比較的小規模の銀行では、合併発表による市場の反応(株価ボラティリティ)には裁定取引が大きく影響するので、倒産確率が相当振れること(日本信託)、を示唆している。つまり、銀行合併は、経営の安全性を向上させる可能性が大きいが、より基本的には、経営改善努力が基礎となる必要がある。第2部では、1971年の日本勧業銀行と第一銀行の合併から1996年の三菱銀行と東京銀行の合併までの銀行同士の合併13例(都銀同士5例、都銀と地銀1例、地銀同士7例)を取り上げ、株価および財務諸表のデータを用いて合併効果を分析した。合併効果の計測に際しては、具体的には、各銀行の株価、コスト削減率、資金調達原価、収益性(ROE、ROA)を取り上げ、合併の前後でそれらがどう変化したかを相対的に評価する方法をとった。分析の結果、個々の事例で多少異なるが、@合併した銀行の株価動向でみる限り、市場はさほど合併を評価していない、A店舗数や従業員数は合併後目立って削減されている(重複する設備や従業員の直接的削減)、B資金調達原価はあまり変化していない、C収益性についてはそれほど変化は見られない、との結果が得られた。つまり、過去の13の合併事例では、コスト削減の効果は認められるものの、規模の拡大による経営有利化(規模の経済性)はそれほど享受しておらず、また収益性も向上していない。こうしたことは、@合併後のいわゆる「たすき掛け人事」などの人事面での経営の非効率性発生、A業務全般のシステム(コンピュータ・システムなど)の統合コストの発生、Bさらには業務多角化に伴う経済効果(多角化の経済性)の欠如、などによるものと推測される。なお、業態別にみると、都銀同士の対等合併と比べると、地銀や第二地銀の対等合併や吸収合併には合併効果が顕著なものもあった。これは、地銀や第二地銀は規模がそれほど大きくはなかったため、規模の経済性をより享受できたものと考えられる。合併は経営の安定化、効率化にとってひとつの有力な方法ではあるが、その得失を十分見極める必要がある。

キーワード…オプション・アプローチによる倒産確立推計、信用リスク、都銀、合併、裁定取引、規模の経済性、コスト削減効果、資金調達原価、収益性

 

 

 

 

 

目次

はじめに

第1部 都銀の合併効果の倒産確率モデルによる評価

序章:問題意識

倒産確率モデルについて

1.1 オプション・アプローチによる倒産確率モデルとは

1.2 推定における諸仮定および具体的な推定法

倒産確率モデル推定による実証分析

2.1 みずほホールディングスのケース

2.2 住友・さくらのケース

2.3 UFJグループのケース

2.4 三菱東京グループのケース

2.5 その他都銀の分析

2.6 まとめ

分析の結果および考察

3.1 合併によるリスクの変化

3.2 信用リスクの変化した要因の考察

3.3 まとめ

都市銀行の合併の評価および課題

4.1 合併の評価

4.2 今後の展望と課題

おわりに

参考文献

第2部 株価および財務指標からみた銀行の合併効果

序論

銀行の合併効果の定義

株価から見る合併効果

3.1 計測方法

3.2 超過収益率

3.3 リスク

コスト削減率から見る合併効果

4.1 分析方法

4.2 店舗比率

4.3 従業員比率

資金調達原価から見る合併効果

5.1 分析方法

5.2 結果

収益性から見る合併効果

6.1 分析方法

6.2 考察

結論

参考文献

図表

 

 

 

 

 

 

はじめに

日本の銀行は、バブル経済が崩壊した1990年代には経営破綻に陥る例がでてくる一方、合併する動きも目立ってきた。銀行が合併するのは、通常、それによって経営の効率性と安定性を高めることが狙いであるとされる。果たして、銀行合併はそのような効果を生んでいるといえるのか。本稿では、二つの異なった分析手法によりこの点を実証的に解明した。

なお、第1部は山口が執筆し、第2部は嶋が執筆した。

 

 

 

 

 

第1部

『都銀の合併効果の倒産確率モデルによる評価』

 

 

 

山口陽平

 

 

 

 

 

 

 

 

 

序章 問題意識

近年、金融業界の環境変化が著しい。1997年11月4日には三洋証券が会社更生法の適用を申請し、同17日には北海道拓殖銀行が自主再建を断念し、北洋銀行へ営業譲渡を発表した。これにより、銀行不倒神話は崩壊した。また、同24日には山一證券が自主廃業に追い込まれた。同28日には、徳陽シティ銀行が自主再建を断念し仙台銀行等に営業譲渡を発表した。第二地銀も経営体質の問題が浮上したのである。また、1998年10月23日には日本長期信用銀行が一時国有化を申請、同年12月13日には、日本債券信用銀行も一時国有化が決定された。さらに、1999年4月11日には国民銀行が金融再生委員会により経営破綻と認定され、同年6月11日には東京相和銀行も金融再生委員会に破綻処理を申請した。このようにかつての「銀行不倒神話」は崩壊し、都市銀行、長期信用銀行、証券会社という大企業の倒産が相次いだ。

一方、1999年8月20日には、日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行が2002年を目処に事業を統合することを発表した。これに続き、同年10月14日には住友銀行とさくら銀行が2002年4月までに対等合併すると発表した。2000年に入ると、4月19日には東京三菱銀行と三菱信託銀行が2001年4月に共同持ち株会社を設立することを表明、同年10月までに三菱信託銀行、日本信託銀行、東京信託銀行を合併させることで正式合意した。さらに、同年7月4日には三和銀行、東洋信託銀行、東海銀行が合併するとの発表があった。

このように、これまでの日本における金融業界では考えることの出来ないような銀行の統廃合が目まぐるしく起こっており、各銀行は今までのように規制に守られていては生き残れないことを自覚し様々な対応を行っているのが現状である。今回、このような対応においては、ほとんどの場合、数多くのプラスの効果が当事者から表明されているが、果たしてそれはどの程度実現しつつあるとみられるのだろうか。新聞、雑誌の記事で述べられているとおり、資産は膨れ上がったがROEなどは外資系金融機関と比較すれば未だ低い状態にあることは確かである。本稿では、銀行の統合による効果を銀行の信用リスクという観点から分析した。すなわち、銀行の健全性を合併の発表があった前後でどのように変化したのかをオプション・アプローチによる倒産確率推定法により算出し比較した。そうすることで、合併により銀行の信用リスクがどのように変化したのかということを分析し、考察した。

 

 

  1. 倒産確率モデルについて

    1. オプション・アプローチによる倒産確率モデルとは

信用リスクの尺度として従来は、倒産企業それぞれの件数からヒストリカルな倒産確率を推定する方法、倒産企業と非倒産企業の財務データ、経営特性などから倒産確率をロジット分析などの統計的方法により推定する方法などが使用されてきた。一方最近、齋藤・森平(1997)が株価から、家田(1999)、家田・吉羽(1999)は社債から倒産確率推定を行うなど、従来の財務諸表からデータを集め倒産確率を推定する手法とは異なり、資産価格から倒産確率を推定する手法で推計がなされてきている。本稿で使用するモデルは、倒産の法律上の定義「負債を現有資産の売却によっても返済できない」に基づき倒産確率を推定する方法である。具体的な発想としては、株式と行使価格の関係を資産と負債の関係に類推させ倒産確率を推定する。すなわち、オプション・アプローチと呼ぶことができる。このモデルはKMVモデルとして知られているがその具体的な推定は、日本においては前述した森平・斎藤(1997)が銀行全般に対して行なったものがある。以下、簡単にこのモデルを説明する。今回本稿では、森平・斎藤(1997)で使われている手法、仮定を踏襲した。彼らはほぼすべての邦銀を対象に1997年の倒産確率を推計した。本稿では、みずほホールディングズ、三井住友銀行、UFJグループ、三菱東京グループ、大和銀行、あさひ銀行の6行を対象に、1998年4月〜2000年12月31日までの倒産確率を推定した。

オプション・アプローチによる倒産確率推定は、ブラックショールズ式によるオプションの価格決定式を応用したものである。ブラックショールズ式は

と表すことができる。ところで、企業の資産は負債+資本である。資本は今回株式時価総額すなわち、発行済株式数×株価で表す。ということは、資本はその性質上0以下にはならない。したがって、資本は企業資産に対する請求権すなわちコール・オプションとみなすことができる。また、資産は株価、負債は行使価格とそれぞれ類推することができる。満期までの期間は、何期後にデフォルトする確率を推定するのかという期間を表す(図1参照)。ここで注意しなければならないことがある。それは、リスクフリーレートの項目である。コール・オプションの価格を導出する際にはリスク中立世界を仮定できるため、株式成長率=リスク・フリーレートと仮定することができるが、資産の成長率=リスク・フリーレートと置くことは困難である。なぜなら企業資産は株式のように頻繁に売買するわけにはならないので、リスク中立的世界を仮定することは妥当でないからである。従って、今回はリスク・フリーレートではなく、企業の予想成長率を置かなければならない。

この考えにより、倒産確率は

=

と置くことが出来る。

1.2 推定における諸仮定および具体的な推定法

以下、各パラメーターについて見ていく。

負債満期(T)は一年とした。すなわち、一年後にその企業が倒産する確率を導出する。DtT期における負債価値)については負債は一年間簿価で一定であるとした。すなわち、現在の簿価が一年間不変であると仮定した。しかし、実際は負債の価値は刻一刻と変化しておりこの仮定はかなり厳しい仮定ということができる。

現在の資産価値(A)、資産の成長率(μA)、資産のボラティリティーは以下のようにして求める。

まず、株式ボラティリティー(σA)について述べる。

資産の現在価値

を陰関数定理を用いて微分することにより

と表すことができる。(dについては後で記述する。)

ただし、Eは資本の現在価値(=株式時価総額:発行済株式数×株価)を表す。

資産の成長率(μA)については、

と表すことが出来る。この式は、資産収益率は、負債と自己資本の期待収益率を負債の時価と株式時価の割合で加重平均して得られることを意味していると考えることができる。これは、また、企業財務論で加重平均コスト(WACC:Weighted Cost of Capital)を計算するためのよく知られた公式であると考えることも出来る。μEは株式成長率、μDは負債成長率である。

ただし、今回は前述した通り、負債は一年間簿価で一定であると仮定したため、UD=0である。したがって、資産成長率は

と表すことにした。

なお、株価成長率、株式ボラティリティーはともに60日の直近データを使用しヒストリカルな値を出した。これも、厳しい仮定である。t時点までの直近60日の株価変動、株式の傾向が1年間不変であると考えるからである。この仮定も多くの問題を含んでいるということをあらかじめ断っておく。

現在の資産価値(A0)は資本の現在価値である

ATT期における資産価値

DT:T期における負債

より、

と表すことが出来る。

ただし、

である。

ここで、整理すると、

ただし、

である。

この未知数3つ、3本の非線型連立方程式をTSPを使用しガウスザイデル法で計算し、σA,μA,Aを求めた。

そして、結局倒産確率(EDPExpected Default Probability)は

EDP=1−N(d)と表すことが出来る。

 

 

  1. 倒産確率モデル推定による実証分析
  2. 今回の分析対象は、みずほホールディングズ(日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行)、三井住友銀行(住友銀行、さくら銀行)、三菱東京グループ(東京三菱銀行、三菱投資信託銀行、日本信託銀行)、UFJ(三和銀行、東海銀行、東洋信託銀行)、あさひ銀行、大和銀行の6つの金融グループないし銀行である。上記の銀行の倒産確率および株価ボラティリティーを掲載した。なぜならばオプションアプローチにおける倒産確率とボラティリティーの間には非常に強い相関関係があるからである(図2)。この理由は、ボラティリティーが高まると資産の変動が大きくなり、それゆえ、将来に資産が負債を下回る確率も増えるからである。

    2.1 みずほホールディングズのケース

    1999年8月20日、日本興行銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行は2002年春を目処に事業統合をすることで合意すると発表した。総資産は140兆円強で世界最大規模の金融グループとなる。だが、この統合は効果があるのだろうか。以下、合併の発表があった前後で倒産確率の推移を比較してみる(図31)。統合発表直後の一時期には、倒産確率が上昇し、その後2000年5月までは一高一低となったが、それ以後最近にかけて下落し続けている。また、統合発表(1999年8月20日)後は3つの銀行の倒産確率がほぼ同じ値で推移している。株価ボラティリティーを比較しても図4−1同様に、統合直後一時高まったが、その後、低下していっている。さらに、3行とも合併発表直後から株価ボラティリティーは同じ値をとっている。この理由は、合併を表明した銀行同士で将来のリスクが一致したと考えることができるからである。株価ボラティリティーが低いということは、株価が安定的ということであり、ひいては経営が安定的であると考えられ、逆に株価ボラティリティーが高いならば、株価は不安定であり、その場合企業経営の資本が劣悪であることになり、企業資産の将来に対する不確実性リスクが上がってしまう。すなわち、そのように、株価がボラティリティーを示すということは、企業の経営先行きに対する何らかの不安定要因が等しいということなのである。なぜなら、株価ボラティリティーは株価の将来に対する不確実性を表しており、株価に企業の情報が含まれているならば、株価ボラティリティーは企業の経営に対する将来の不確実性を表していると考えることが出来るからである。

    以下、みずほグループ3銀行の倒産確率と主要な経済関係事象を表に表した。なお、事象の起きた曜日が土曜、日曜など取引所が閉まっている日に起きた出来事は月曜の倒産確率を掲載した。

    倒産確率

    時系列

    興銀

    富士銀

    第一勧銀

    1998

    4.24

    1.5738%

    5.2862%

    1.4675%

    日本、総合経済対策(166500億円:真水は12兆円)を発表。

    5.13

    1.1313%

    3.8483%

    1.5426%

    日本興業銀行と野村證券が業務提携と子会社設立計画を発表。

    29

    0.8913%

    3.2161%

    1.6081%

    日本、改正財政構造改革法成立。(赤字国債発行再開、財政再建目標年次2年延長)

    6.5

    0.8624%

    3.1404%

    2.0085%

    「金融システム改革のための関連法律の整備等に関する法律」などの金融改革4法が成立。(金融改革の手順と日程が確定)

    17

    1.0504%

    2.5983%

    2.5724%

    「円安」是正へ日米協調介入(210ヵ月ぶり、130円台後半に戻す。

    22

    2.7770%

    7.7030%

    5.0853%

    金融監督庁が発足。

    30

    1.4431%

    5.4417%

    3.8537%

    5月の完全失業率が4.3%と戦後最悪となる。

    7.2

    1.2577%

    4.9241%

    4.4913%

    政府与党、ブリッジ・バンク方式による不良債権処理方式を決定。

    11

    1.4684%

    4.6471%

    4.2585%

    対ドル円相場急落。

    25

    1.5485%

    4.6580%

    4.1125%

    野党3会派(民主、平和・改革、自由)が政府提出の金融再生関連法案について対案を共同提出することで正式合意。

    9.9

    3.8653%

    8.8559%

    5.8656%

    日本銀行政策委員会、金融政策決定会合で3年ぶりに金融政策を変更し、短期金融市場の「金利誘導目標」を年利0.25%にする旨決定。

    11

    2.5353%

    8.5670%

    4.1456%

    旧三菱財閥系金融機関四社(東京三菱、三菱信託、明治生命、東京海上)、投資信託、年金、証券業務で包括提携。

    14

    2.7363%

    10.4830%

    4.0393%

    G7緊急声明、デフレ回避のための協調利下げを示唆。

    28

    2.4993%

    9.3923%

    2.2485%

    東海銀行、あさひ銀行は将来の金融持株会社設立を視野に入れた業務提携を決定し、発表。

    10.1

    4.4052%

    12.6640%

    3.8507%

    第一勧業銀行、JPモルガンと投資信託委託会社の合併設立を軸に排他的提携合意。

    2

    4.7114%

    13.5700%

    3.8668%

    日本興業銀行と第一生命保険、資本交流を含む前面提携を発表。

    5

    4.7380%

    13.5700%

    4.1412%

    東証平均株価終値で13千円割。

    12

    9.7967%

    30.8620%

    9.5303%

    金融再生関連法案、参議院を通過し成立。

    16

    10.1440%

    31.5290%

    9.9725%

    金融機能早期健全化法、集散両院本会議で会期末処理により成立(合計60兆円の公的資金枠を用意し金融システム安定化を目指す。

    23

    16.0850%

    35.8240%

    13.7370%

    日本長期信用銀行金融再生法37条に基づく一時国有化(特別公的管理)を申請。

    25

    16.5630%

    36.7550%

    13.5660%

    大和銀行、海外6視点を閉鎖し国際業務から前全面撤退する旨を発表。

    30

    16.8780%

    36.4670%

    12.5380%

    富士銀行と第一勧業銀行、信託などの「戦略分野」で提携合意。

    11.17

    19.3500%

    39.1490%

    13.7290%

    信用格付け会社ムーディーズ社は日本国際のレイティングを引下げ。(AaaからAa1へ)

    12.1

    16.3100%

    35.8070%

    11.9620%

    「金融システム改革法」施行(銀行の投資信託販売、会社型投信、株式関連店頭デリバティブ解禁)。

    12.13

    14.3430%

    29.2930%

    11.7830%

    首相、日本債権信用銀行を債務超過と認定し金融再生法第36条により一時国有化開始を決定。

    20

    15.3770%

    28.2620%

    11.3950%

    99年度予算原案内示(国債増発による長期金利上昇を誘発。

    25

    14.9720%

    24.8800%

    11.4760%

    11月の完全失業率は4.4%と悪化し雇用面でも日米逆転。

    1999

    1.18

    7.1002%

    7.3276%

    3.4325%

    郵便局と115の民間金融機関、ATMの相互接続サービスを開始。

    2.1

    2.6068%

    2.5154%

    1.1224%

    旧住専への紹介融資をめぐる損害賠償訴訟で、住友銀行が住宅金融債権管理機構を和解。責任認め、30億円支払。

    2.8

    1.3102%

    0.9226%

    0.6226%

    大和、大阪、近畿の3銀行が包括的経営で合意。

    2.12

    1.5793%

    0.5026%

    0.2264%

    日本銀行、社債などを担保にした手形買い入れオペの導入を決定。

    20

    1.5572%

    0.5082%

    0.2145%

    G7が共同声明を発表。日本に金融システム強化と内需拡大のため政策推進を要請。

    22

    1.5572%

    0.5082%

    0.2145%

    あさひ銀行、あさひ証券と海外現法2社を廃業、解散すると発表。

    3.3

    1.7489%

    0.6212%

    0.3704%

    短期金融市場で、無担保コール翌日物が一時、年0.02%に。手数料分を引くと実質ゼロ金利に。

    12

    2.5647%

    3.6880%

    0.5602%

    金融再生委、大手銀行15行に対する公的資金注入を正式決定。総額74592億円。

    15

    2.2788%

    3.7309%

    0.5564%

    981012月期の実質経済成長率、年率換算でマイナス3.2%に。マイナス成長は四半期連続で戦後最長。

    16

    2.1090%

    3.5228%

    0.4154%

    東京三菱銀行、三菱信託銀行、証券子会社の東京三菱証券と三菱証券を6月を目処に統合すると発表。

    25

    3.48%

    4.04%

    1.06%

    金融監督庁、ファイアーオール規制緩和のため「証券会社の行為規制等に関する命令」及びガイドラインの改正を決定。

    30

    3.4494%

    4.2901%

    1.1759%

    2月の完全失業率が4.6%と、53年の調査開始以降で最悪。完全失業者数は初の300万人超。

    4.6

    3.2556%

    4.3235%

    1.1907%

    法務省、債権管理回収業者4社に初の営業許可。

    7

    3.0073%

    4.2594%

    1.0662%

    大蔵省、政府短期証券の初の公募入札を実施。

    11

    3.0559%

    4.4387%

    1.2540%

    金融再生委員会、金融機能再生緊急措置法に基づき、国民銀行の経営破綻を認定。

    21

    2.7829%

    4.0888%

    1.3817%

    国際決済銀行のバーゼル銀行監督委員会、信用リスクモデルに関する報告書を公表。

    30

    2.2412%

    3.7771%

    1.4718%

    3月の完全失業率4.8%。過去最悪を更新。

    5.4

    2.3328%

    3.4715%

    1.9225%

    ニューヨーク株式市場、ダウ平均株価が終値で始めて11000ドル台に。

    6.

    2.3328%

    3.4715%

    1.9225%

    東京株式市場、日経平均株価が約12ヵ月ぶりに終値で17000円台を回復。

    14

    2.5091%

    3.9259%

    2.1415%

    金融監督庁、幸福銀行に対して銀行法に基ずき早期是正措置を発動。銀行への同措置発動は初めて。

    6.3

    2.8589%

    4.9004%

    1.8131%

    バーゼル銀行監督委員会、銀行の自己資本比率規制の見直し案を公表。

    9

    2.6606%

    1.7687%

    1.1427%

    5月の都市銀行など金融機関5業態の貸出残高の前年同月比減少率が5.4%で過去最大。日銀発表。

    11

    2.2853%

    1.6212%

    1.0803%

    東京総和銀行、金融再生委員会に破綻処理を申請。

    15

    1.7948%

    1.5717%

    0.9449%

    米店頭株式市場(ナスダック)を運営する全米証券業界協会とソフトバンクが日本に新しい株式市場「ナスダック・ジャパン」を創設する構想を発表。

    三和銀行と東洋信託が三和信託銀行を東洋信託銀行に営業譲渡することで合意。

    22

    0.5272%

    0.8448%

    0.3600%

    金融監督庁、全国の地方銀行64行の問題債権の合計額は983月末で172464億円と発表。

    7.23

    0.6123%

    0.8436%

    0.2208%

    日本債権信用銀行の983月期の粉飾決算疑惑で、東京地検特捜部らが当時の経営陣6人を証券取引法違反の疑いで逮捕。

    27

    0.4060%

    0.6576%

    0.2267%

    日銀、993月末の邦銀の海外債権、債務残高を発表。債務残高は合計で113722200万ドルで、9712月末に比べ9.2%減。

    29

    0.3622%

    0.5476%

    0.2353%

    金融再生委員会と金融監督庁、クレディ・スイス・グループ系列5社国際投信投資顧問に対し行政処分を決定。

    30

    0.1611%

    0.5885%

    0.0785%

    三和銀行、大同生命、太陽生命、興亜火災海上、東洋信託、ユニバーサル証券の6社、広範な業務提携に踏み切ると発表。

    8.20

    0.8658%

    1.3891%

    0.9653%

    日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行、2002年春をメドに事業統合をすることで合意と発表。総資産140兆円強で世界最大の金融グループに。

    23

    3.4234%

    4.3886%

    4.1933%

    ニューヨーク市場、ダウ平均株価が終値で11229ドル76セントと過去最高値を更新。

    24

    3.4071%

    4.2861%

    4.3939%

    三和銀行と米モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッターが投資信託の販売などで提携と発表。

    27

    4.2483%

    4.5380%

    4.4445%

    金融監督庁、信組の破綻処理の円滑化と自己資本の増強を目的とした新基金、総額1800億円を創設すると発表。

    9.2

    6.0822%

    5.4629%

    5.1392%

    大蔵省、初の30年物国際の入札を実施。表面利益率は2.8%。

    10

    6.1402%

    5.0836%

    5.0905%

    米ナスダック指数、終値で2887.03ポイントと過去最高を更新。

    24

    6.5014%

    5.1912%

    4.8917%

    さくら銀行、法人向け証券業務でドイツ銀行と提携すると発表。

    30

    6.6298%

    4.9318%

    4.7168%

    さくら銀行、法人向け証券業務でドイツ銀行と提携すると発表。

    10.7

    6.6379%

    4.7691%

    4.8616%

    東海銀行とあさひ銀行、200110月をメドに事業を全面統合すると発表。

    14

    6.6057%

    4.7926%

    4.7452%

    住友銀行とさくら銀行、20014月までに対等合併すると発表。

    12.6

    1.1339%

    1.3865%

    1.3285%

    7〜9月期の国内総生産(GDP)、前期比1.0%減で3期ぶりのマイナス成長に。

    16

    1.7111%

    1.8150%

    1.6174%

    20カ国蔵相、中央銀行総裁会議(G20)、国際金融危機の再発防止に向けた協調で合意。

    15

    1.4201%

    1.6603%

    1.5741%

    三和銀行、興亜火災海上などの金融グループ6社、小口金融取引業務でJCBに全面協力すると発表。

    21

    1.4892%

    1.7162%

    1.6728%

    金融審議会、ペイオフの解禁などを盛り込んだ最終報告を宮沢首相に答申。

    29

    1.6269%

    1.8579%

    1.9906%

    自民、公明、自由の与党3党がペイオフの解禁を1年間延期し、20024月にすることで合意。

    2000

    1.20

    2.2332%

    1.0263%

    1.9422%

    預金保険機構、資本増強のため銀行に注入した公的資金の返済に関する指針を公表。

    2.1

    3.8230%

    2.4673%

    3.4123%

    99年の平均失業率、前年比0.6ポイント上昇の4.7%に。統計をとり始めた53年以来最悪の数字となった。

    3

    3.7647%

    2.5005%

    3.5060%

    欧州中央銀行定例理事会、ユーロ圏の市場介入金利を9日のオペから0.25%上げると決定。

    9

    3.8791%

    2.5449%

    3.5020%

    東京株式市場、日経平均株価が2777銭で引け、終値で約2年半ぶりに2万円台を回復。

    17

    5.6737%

    3.8266%

    4.1617%

    米格付け会社ムーディーズ・インベスターズが日本政府が発行・保証する円建て債権を格下げ方向で見直すと発表。

    21

    6.1315%

    4.4490%

    5.5041%

    東京三菱、98年3月に資本注入を受けるために、1000億円を発行した永久劣後債を買い入れ、消却すると発表。公的資金依存から脱却へ。

    3.2

    6.4277%

    5.1495%

    6.8367%

    特別公的管理(一時国有化)が終了した日本長期信用銀行が新体制で営業開始。65日から「新生銀行」に行名変更。

    14

    7.1680%

    5.9087%

    7.8323%

    三和銀行、東海銀行、あさひ銀行が事業統合を発表。20014月に持ち株会社を設立。事業を再構築して、傘下に新銀行を設立する。

    21

    6.8111%

    6.0635%

    8.3182%

    米連邦準備理事会、フェデラルファンド金利の誘導目標を0.25%引き上げ、55%とすることを決め、即日実施。

    3.31

    7.1525%

    6.6441%

    9.6095%

    2月の完全失業率が4.9%。調査開始以来最悪更新。

    4.6

    5.9453%

    6.7019%

    8.5657%

    そごうグループ、取引銀行に総額6390億円の債権法規を要請と発表。

    4.12

    6.0953%

    6.9554%

    8.9140%

    日銀、4月の金融経済月報で景気が自律回復に向かい始めたとの見解を初めて表明。

    14

    6.0944%

    7.1120%

    9.1491%

    ニューヨーク株式市場でダウ工業株30銘柄平均と米店頭株式市場(ナスダック)総合指数が過去最大の下げ幅。

    17

    6.3026%

    7.3039%

    9.3870%

    米株式相場急落を受け、東京株式市場でも株価が急落。日経平均株価の下落幅は一時1800円超に。

    19

    6.8400%

    7.3484%

    9.7976%

    東京三菱銀行と三菱信託銀行、20014月に共同持ち株会社を設立、同年10月までに三菱信託、日本信託銀行、東京信託銀行を合併させることで正式合意。

    21

    6.8602%

    7.4808%

    9.7484%

    さくら銀行と住友銀行、合併時期を1年前倒しし、20014月とすると発表。

    26

    5.9031%

    6.0197%

    8.9032%

    経営再建中のそごう、20002月期のグループ全体の債務超過額を5800億円と発表。水島宏雄会長は引責辞任に。

    5.1

    5.8698%

    6.0720%

    8.1541%

    金融監督庁、第一火災海上保険に一部業務停止命令を発動。

    5.18

    2.8149%

    3.0536%

    5.4392%

    金融再生委員会・金融監督庁、異業種の銀行参入に関する指針案を自民党金融問題調査会に報告。

    24

    1.7111%

    2.3010%

    3.1473%

    東京株式市場で日経平均株価が一時16000円割れ。ほぼ1年ぶり。

    31

    1.8327%

    1.9780%

    3.0601%

    経営が悪化していた第百生命保険が自主再建を断念。金融監督庁は保険業法に基づく業務の一部停止命令を発動、破綻処理手続きを開始。

    6.15

    1.6859%

    1.4955%

    2.4329%

    三和銀行と東海銀行、20014月に共同持株会社設立、20024月に同社傘下で合併と発表。あさひ銀行は両行との事業統合から離脱。

    7.1

    1.2403%

    0.8211%

    1.2117%

    2年前に大蔵省から独立した金融監督庁と、同省に残っていた金融企画局が統合、金融庁が発足。

    7.4

    1.2876%

    0.8631%

    1.2095%

    東洋信託、東海・三和銀連合に合流、リテール戦略で優位に。

    8.4

    1.5775%

    0.9079%

    0.8915%

    金融審議会が、金融庁発足後初めての総会を開き、主に銀行法や保険業法の改正について審議を開始。金融業への異業種参入に対応する法律上のルールを整備するのが狙い。

    8.6

    1.5814%

    0.8964%

    0.8944%

    IMF改革案基本方針固まる。

    8.11

    1.6120%

    0.8977%

    0.9878%

    日本銀行は政策委員会・金融政策決定会合で992月から続けてきたゼロ金利政策解除を決めた。政策的に誘導する無担保コール翌日物金利の目標を0.25%前後に引き上げ、公定歩合は据え置く。

    10.9

    0.5144%

    0.4744%

    0.3954%

    千代田生命保険が業務の継続が困難であると判断し、東京地裁に更正特例法の適用を申請する方針を発表。保険会社を対象にした再建型の倒産手続きである更正特例法の申請は初めて。

    10.20

    0.2028%

    0.2087%

    0.1672%

    協栄生命保険が、東京地裁に更正特例法の適用を申請。総資産では9日に破綻した千代田生命の35000億円を上回り、最大規模の生保の破綻となる。

    以上より、合併発表(1998820日)後一時倒産確率は上がったものの、その後低下していっている。長銀が国有化にされた19981023日、日債銀が国有化にされた同年1213日のあたりには、どの銀行とも倒産確率は非常に高い値を示した。どの銀行も倒産確率は10%を優に超え、非常に危険な-状態であった。特に富士銀行は40%に迫る勢いであった。北海道拓殖銀行が破綻する直前で、北拓の倒産確率は11.12%であったので、これら3銀行はいずれも北拓の倒産確率を上回っており、その危険度が良く分かる。また、この時はムーディーズが日本国債の格付けを落としたこと

    もあり、日本中の企業の信用リスクが高まっていた時期であり、日本の銀行もその趨勢の中にあったと考えることが出来る。200046日にはそごうグループが倒産したが、その時点でも信用リスクは一時高まった。しかし、その後、合併の発表直後、倒産確率自体減少している。

    2.2 住友・さくらのケース

    次に住友とさくらのケースを追跡してみよう(図3−2 参照)。

    1999年10月14日、住友銀行とさくら両銀行は合併することを発表した。また、2000年4月21日には合併期日を一年前倒しするとの発表があった。2000年10月14日時点ではその後倒産確率が上昇したが次第に下降して行き、2000年4月21日で合併期日を1年前倒しするとの発表後には特にさくら銀行の倒産確率が急激に低下していった。

    2000年は両者非常に低い倒産確率で推移していることがわかる。さくら銀行は長銀、日債銀などの大型破綻が相次いだ1998年10月〜12月にかけて、倒産確率が30%超える日もあり、非常に危険な状態であったことが分かる。その後も、住友との合併が決まった10月中頃には15%を超える非常に高い確率を出している。しかし、その後は急速に倒産確率が低くなりずっと1%を割っている。一方、住友銀行はさくら銀行に比べると倒産確率は遥かに低いことが分かる。しかし、1998年秋の長銀、日債銀破綻時には、10%という高い信用リスクを示した。北海道拓殖銀行は11%で倒産したことを考えると危険な状態であったといっても過言ではない。しかし、合併発表後は非常に安定しており、倒産確率も低い水準で落ち着いているといえる。

    2.3 UFJグループのケース

    2000年7月4日三和、東海、東洋信託は合併することを発表した。2000年3月14日 には三和、東海、東洋信託で合併するとの合意があったが、6月15日にあさひ銀行が離脱し、7月4日に東洋信託が合流した形で合併を達成した。

    33より倒産確率の推移を見ると、東洋信託銀行の倒産確率は非常に高い水準で変動していることが分かる。同行は、1998年の秋に長銀、日債銀が相次いで破綻した際には30%を超える倒産確率を出した。その後、何度も10%を超え、変動していたが、2000年の春頃から倒産確率は急激に落ち込み、統合発表後は0〜1%台で安定した推移を見せている。三和銀行は比較的優良銀行というイメージがあるが、1998年秋には10%を超えていた。しかし、他行と比較すれば優良な方であることがわかる。その後も安定した推移を見せており、2000年秋以降は1%を切っており、低い倒産確率を維持している。東海銀行は三和銀行よりさらに安定した動きを見せている。あさひ銀行と統合を発表した直後は急激に倒産確率が高まり、10%ぐらいにまでなったが、その後は低くなった。また、東海、三和、あさひで合併するとのアナウンスがあったとき、倒産確率は僅かだが上がった。しかし、その後は急激に落ち、2000年秋には1%を切り安定して低い倒産確率を維持している。

    2.4 三菱東京グループのケース

    1999年3月16日東京三菱銀行と三菱信託銀行は証券子会社の東京三菱証券と三菱信託証券を、6月を目処に統合すると発表した。その後2000年4月19日には東京三菱銀行、三菱信託銀行が2001年4月に共同持ち株会社を設立、同年10月までに三菱信託、日本信託銀行、東京信託銀行を合併させることで正式合意した。総資産87兆円の世界5位の巨大金融グループになることを発表した。

    図3−4より、倒産確率をみると、東京三菱銀行は全体を通じて常に低い倒産確率を示している。1998年の長銀、日債銀の大型倒産が相次いだときにも、他の銀行はどこも10%以上の倒産確率を示したのにも拘わらず、東京三菱は10%に達さなかった。東京三菱銀行の健全さは2000年2月21日、98年3月に資本注入を受けるために1000億円発行した永久劣後債を買い入れ、消却するとの発表をし、公的資金依存から脱退すると発表したことからも覗うことが出来る。三菱信託銀行は1998年の秋には20%近くになる倒産確率を示した。その後、1999年春には10%以下で推移していたが、同年8月頃から急激に上昇していることが分かる。日本信託銀行に関しては、1998年秋には10%を超える倒産確率を示した。その後一旦値を下げたが、1999年8月から急激に倒産確率が上昇した。その後、2000年7月に急激に低下したあと、2000年9月にはまた急上昇し、15%を超えた。その後、12月末には急激に下がって、1%を切った。

    2.5 その他都銀の分析

    今回、合併、統合を見送った都市銀行にはあさひ銀行、大和銀行がある。あさひ銀行は1999年10月7日、東海銀行と2001年10月を目処に全面統合するとの発表をした。その後、2000年3月14日には三和銀行もそれに加わり、2001年4月に持ち株会社を設立するとの発表をした。しかし、2000年6月15日、あさひ銀行は3行の事業統合から離脱するとの発表を行った。図35より倒産確率をみると、1998年秋には20%近くにまで倒産確率が上昇した。しかし、幸福銀行、東京相和銀行が破綻した2000年春にはそれほど倒産確率は上昇しなかった。その後2000年8月には倒産確率は0%に近づいたがその後一時わずかながら上昇し、また0%に近づいた。

    大和銀行については井口トレーダーのNYでの巨大損失隠蔽事件など、でNYから事業を撤退するなど厳しい状況にあった。また、合併の噂が流れていたが、結局しなかった。倒産確率をみると、他の銀行が上昇している1998年秋よりも、むしろ、1999年9月ごろに30%を超える極めて高い倒産確率を記録した。しかし、1999年12月ごろから急激に倒産確率は下落し、2000年6月以降は1%程の低い倒産確率で推移している。

    2.5 まとめ

    各銀行の倒産確率の推移を見てみると3点の共通がある。それは、一点目には1998年10月16日の長銀国有化、12月13日の日債銀の国有化に代表される大型金融機関の破綻により、信用リスクが銀行全体で高まり、どの銀行も倒産確率が急激に高まったこと。二点目には1999年、5月14日、金融監督庁が幸福銀行に対し、早期是正措置を初めて発動し、6月11日には東京相和銀行が破綻処理申請をするなど連鎖倒産が相次いだ後にも倒産確率が上昇した点。3点目には2000年夏以降、どの都市銀行も急激に倒産確率が減少し、1%を切る非常に低い倒産確率で推移している点である。この動きは程度の差こそあれどの銀行にもみられる共通した特徴ということができる。しかし、銀行によっては大和銀行のように1998年秋よりも1998年春の方が倒産確率が高かった銀行、2000年夏過ぎにも30%を超える倒産確率を記録した日本信託銀行など、銀行によって倒産確率の推移のパターンに違いが見られるのも確かである。

    本稿と先行研究である廣田(2000)、森平・斎藤(1997)とを比較して、同じ点は、どれも対象が銀行であり、倒産確率を推計している点である。異なる点は、廣田(2000)は財務諸表からデータを取得し、倒産確率を出したが、本稿では主に株価データを利用して倒産確率を評価した点が異なる。また、森平・斎藤(1997)は、倒産確率推計にあたりオプション・アプローチを利用した点は同じであるが、森平・斎藤(1997)が、1997年の全銀行を対象に倒産確率を推計したのに対し、本稿では19982000年にわたり、合併発表があったみずほホールディングズ、三井住友銀行、UFJグループ、三菱東京グループ、大和銀行、あさひ銀行の6行を対象に推計した点が異なる。

     

     

  3. 分析の結果および考察

    1. 合併によるリスクの変化

今回どの銀行を見ても、合併発表後にはリスクが減少している。みずほ、三井住友、三菱東京グループ、UFJどれも2000年夏以後は1%を切る極めて低い倒産確率である。しかし、合併、統合をしない都市銀行すなわち、あさひ銀行、大和銀行の倒産確率も急激に減少している。ということは、合併により倒産確率が減少したとは一概には言い難いのではないだろうか。

ここで、もう一つのリスク指標である株価ボラティリティーを見てみる。この値を見ても、統合発表後には下がっている。しかも、統合銀行の中でも、相対的に優良とは言えない銀行のボラティリティーが激減している。さらには、統合を発表した銀行同士のボラティリティーがほぼ一致したという興味深い結果を観察することができた。とくに早い段階から合併、統合を発表していた、みずほ、三井住友はボラティリティーが一致した後も一致した状態でボラティリティーが推移している状況を観察することができる。

本稿で使用したオプション・アプローチによる倒産確率推計においては、倒産確率とボラティリティーとの間に非常に強い非線型の関係がある(図2参照)。従って、ボラティリティーの一致は倒産確率の一致と大まかに考えて差し支えないと思われる。この理由は、ボラティリティーとは株式の変動率であり、将来に対する不確実性、すなわちリスクを表すからである。従って、ボラティリティーが高いと資本が激しく変動し、資本が激しく変動すると資産の変動も激しくなり、将来の資産が負債を下回る確率は上昇してしまう。すなわち、倒産確率が上昇するのである。

結論としては、オプション・アプローチによる倒産確率推計では倒産確率とボラティリティーに非常に強い相関関係が見られるため、ボラティリティーの一致をもって倒産確率の一致とひとまず結論づけてよいと思われる。つまり、すべての都市銀行は統合により、倒産確率を下げたとは断定的には言い難いが、統合により倒産確率を一致させたという明らかな証拠はあるのである。

3.2 信用リスクが変化した要因の考察

倒産確率が上昇、下落、一致するにはそれなりの理由があるはずである。以下、それぞれの銀行グループおよび、あさひ銀行、大和銀行についてリスクが変化した要因を考察する。

まず、みずほについて見てみる。1999年8月20日、日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行は2002年春を目処に事業統合をすることで合意と発表した。1999年12月ごろからは倒産確率も株価ボラティリティーもほぼ一致して推移している。発表があった直後から12月までの約3ヶ月間は倒産確率にばらつきが見られた。その後もボラティリティーの一致ほどには倒産確率が一致していない時期もあった。

この理由は主に、推計仮定による。すなわち、倒産確率推計時点までの直近60日の株価データによってヒストリカルボラティリティー、株価成長率を導出した点、さらに、負債は一年間一定であるという仮定も非現実的な厳しい仮定であり、このことが正確な倒産確率を推計するのを妨げたと思われる。これらの理由がすべてではないが、これらの理由により倒産確率の精密さが欠けてしまうのは致し方ない。しかし、倒産確率の大まかな趨勢を見れば、1998年の長銀、日債銀破綻時と1999年春の幸福銀行、東邦生命、東京相和銀行の破綻時には、倒産確率がどの銀行でも上昇した。これは信用リスクが各銀行とも高まったからである。すなわち、銀行は決済システムを司る機関であり、一つの銀行の倒産が他の銀行に伝播する、すなわち連鎖倒産の危険性をはらんでいる。したがって、銀行の連鎖倒産が起きた時にはシステミックリスクが上昇し、2,3の銀行の破綻が銀行全体の倒産確率を上げることになったのである。

さらに、合併、統合を行うときは相対的に優良でない銀行の倒産確率が、優良な銀行の倒産確率に急激に近づく形で一致していることも見てとれる。この理由は、健全な銀行が統合を容認するのだから、相手方の銀行も潰れないだろうという市場が判断したからであると推測できる。「市場が判断した」とは、オプション・アプローチによる倒産確率推計は株価データを利用するため、株価には市場の将来に対する期待が込められており、従って、株価の値動きにはその企業の将来の予想が込められているという意味を持つからである。

三井、住友もみずほと同様の値動き、理由付けを行うことができる。UFJグループについては、統合発表があった2000年7月4日以降、倒産確率は一致する方向に動いている。ほぼ一致した状態から後の倒産確率の動きはその後の分析を行わなければわからないが、一致したまま推移するものと予想できる。

2000年3月14日には東海銀行、東洋信託銀行、あさひ銀行が統合するとの発表があったが、その後東洋信託の倒産確率は急激に下がっている。これは統合の発表により倒産確率が下がったと思われる。また、どの銀行もその他の銀行同様に、1998年の秋、1999年の春以降には急激に倒産確率が上昇している。東洋信託は東海銀行、三和銀行と比較して、倒産確率が高く、その変化も急激である。また、倒産の確率推移も他の銀行と比較しても異なった値を取っている。この理由は後に考察する。

三菱東京グループの場合も、おおむね同様の結果である。この理由も同様の理由と考えることが出来る。ただし、東京三菱銀行は1998年秋にはほとんど変化していない。東京三菱はデフォルトしないという確信が市場にはあったのであろう。事実世間での評判でも東京三菱は当時高かった。都銀でも特に優良であるからこのような結果になったのである。また、日本信託は1999年秋から急激に倒産確率が上昇し、2000年3月ごろに一時低下したがその直後また上昇し、2000年五月、ピークを迎えその後急激に下落したのち急上昇し、また急激に下落するという動きを見せている。この動きは今回推計した銀行の中で最も特異な動きであった。この理由も後に考察する。

一方、合併していない銀行について考察する。まず、あさひ銀行であるが、2000年3月14日には東海銀行、東洋信託銀行、あさひ銀行が統合するとの発表があった。しかし、2000年6月15日に、あさひ銀行は合併をから離脱する旨を表明した。2000年5月後半には3月14日に統合を発表した、あさひ銀行、東海銀行、東洋信託銀行の倒産確率は同じ値に一瞬だけほぼ収束したが、その後、あさひ銀行の倒産確率は8月後半まで下がり、その後また一時上昇した。これは、統合から離脱するとの発表直後の倒産確率の推移である。これはあさひ銀行が統合から離脱するという情報を市場がネガティブに受け止めたからだろう。しかし、その上昇も5%ほどで大きくなく、2000年12月には1%を切っていることから、地域に強い顧客をもちリテールが強く、比較的健全であるというあさひを市場が評価したからであろう。

大和銀行は1998年秋、1999年春以外にも、1998年夏、1999年秋にも急激に倒産確率が上昇している。また、他の銀行では1998年秋の倒産確率が1999年春の倒産確率よりも高かったのにも拘わらず、大和銀行の場合はその逆の結果となっている。まず、大和銀行の倒産確率が2000年夏以降急激に下落した理この理由は、大和銀行はニューヨーク支店の撤退など厳しい状況に追いやられたが、関西特化戦略、海外縮小、住友信託との提携による信託強化などの努力を市場が評価したからだと推測できる。1998年夏の上昇については、この時あったイベントで注目すべきことは、1998年6月22日に金融監督庁が発足したことである。この発足により、不良銀行の監督が従来より厳しくなり、経営の厳しい大和銀行の信用リスクが上昇したものと推測できるが、推測の域を免れない。また、1998年秋の倒産確率上昇よりも、1999年春以降における倒産確率の上昇の方が激しいのも他の銀行と異なる点である。

この理由、さらに東洋信託、日本信託が他の銀行の倒産確率推移と異なった理由は、一つにはどれも信託運用を行っている点で他の銀行との特殊さが挙げられるが、ここで特に注目したのは、買収というイベントを利用した裁定取引、すなわちリスク・アービトラージである。リスク・アービトラージとは買収が見込まれる企業を捜し求め、その株式を購入し、買収が成立して株式を売却したときの利益を狙って、売買取引を行う裁定取引である。買収が仕掛けられると、買収プレミアムを見込んで株価は上昇し始め、買収が成立した時点で、買収価格と市場の価格がほぼ一致するようになっている。

東洋信託、日本信託、大和銀行の場合は買収ではないが、合併のうわさにより、裁定取引のターゲットになったと推測することができる。東洋信託においては、2000年7月には統合を発表したが、アービトラージャーはそのイベントを見込んでそれ以前に大量のトレーディングを行った。日本信託においては、2000年4月に統合を発表したが、それ以前に急激に倒産確率が上昇している、その後一端下がったが、急激に上昇している。これも、合併を成立しなかったときのリスクを考慮した投資家が合併を確信し、トレーディングを再び行ったものと推測できる。しかも、日本信託は規模が小さいためその影響が顕著に現れたと考えることができる。したがって、東洋信託、日本信託の株は特に大きく変動したのではないだろうか。

また、大和銀行も、1999年の10月ごろには、新聞で合併の可能性を示唆する記事が書かれてあった。ということは、新聞記事になる前にはすでに合併を見込んで、アービトラージが行われていたと考えることが出来る。

このように、イベントに即した、株式の値動き以外にも、イベントを見越したアービトラージにより株式の値動きが変化するため、ボラティリティーが変化し、ボラティリティーの変化と強い相関関係のあるオプション・アプローチによる倒産確率推計法で計測した倒産確率は上昇した可能性もあるということができる。

3.3 まとめ

以上より、各銀行の倒産確率は1998年秋の長銀破綻と日債銀の連鎖倒産、1999年春の幸福銀行と東京相和銀行の連鎖倒産時にはどの銀行も高い倒産確率を示している。この理由は銀行の持つシステミック・リスクであると考えることが出来る。

さらに、倒産確率がもともと高かった銀行は、合併発表後倒産確率を低下させることができたこと、合併の方針を打ち出さなくとも抜本的な経営改善策などを打ち出せば倒産確率を低下させることができるということも、あさひ銀行、大和銀行の例より考えることが出来る。また、それ以外の倒産確率の動きは、個別銀行のイベントもさることながら、合併というイベントを狙った裁定取引だという可能性もある。なぜならば、オプション・アプローチによる倒産確率推計は株価ボラティリティーと強い非線型の関係があり、株式の値動きが倒産確率に非常に強く反映されるからである。合併を見越して株を頻繁に売買することが行われればボラティリティーは高くなる。

 

 

  1. 都市銀行の合併の評価および課題

    1. 合併の評価

以上の推計および考察より、合併によって倒産確率は影響を受ける、具体的には倒産確率が一致する方向で収束することが分かった。その理由はボラティリティーが一致するからである。ボラティリティーと倒産確率には非線型の関係がある。ボラティリティーが一致するのは、合併するということは将来に対する不確実要因、即ち、リスクが一致するということを意味する。つまり、合併発表によって、合併する銀行同士の倒産確率は一致するということができる。

しかし、必ずしも合併するからといって、倒産確率が下落するという結論には至らなかった。なぜならば、合併発表した銀行、そうでない銀行に拘わらず、倒産確率は200年夏以降、同様に低い水準で落ち着いたからである。例外として日本信託が挙げられる。ただし、合併する銀行のうち相対的に不良である銀行の倒産確率は急激に下落したという事実は倒産確率の推移より見てとれた。

また、倒産確率には裁定取引による株価の変動も関係していることを可能性として指摘した。

確かに、合併によりリスクが下がるということが言えたのは不良銀行である。しかし、健全な銀行が、不良銀行と合併することで負債の悪化、株価ボラティリティーの上昇などを招きその結果倒産確率を上げるということは無かった。したがって、合併により、都市銀行銀行全体のリスクは減少したと考えて差し支えない。また、銀行はシステミック・リスクを持つため、他の銀行の破綻が自分の銀行の信用リスクを高めることとなる。ということは、合併が4つも起こることにより不良銀行の倒産確率が減少すれば、銀行全体自分の信用リスクも高まると考えることもできる。従って、合併は銀行全体の信用リスクを減少させる効果があり、都市銀行全体の信用リスクを下げたと考えれば今回繰り広げられた都市銀行の合併は評価できると判断できはしないだろうか。

4.2今後の展望と課題

日本はバブルの崩壊、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行など大型倒産が相次ぎ、各銀行は生き残りをかけて大型合併を繰り返した。その結果、みずほ、三井住友、三菱東京グループ、UFJという4大金融グループに日本の都市銀行は再編された。また、合併、統合しなかった銀行も独自の経営戦略、経営努力を行った。これらの要因が複合的に影響し合って、都市銀行全体の倒産確率が減少したのではないだろうか。

しかし、マスコミのバッシングにもあるように、組織内の軋轢、資産だけは大きいが収益率は低いなどさまざまな課題を抱えている。また、今後の推定を行うことでデフォルト確率がどのように変化するのかも注目すべき点である。このように、都市銀行は一旦倒産確率を下げ、その理由には合併による影響が少なからずあった。しかし、だからといって、都市銀行が安泰である理由にはならない。今後も低い倒産確率を維持するためには、各銀行の収益重視の経営改革を行うのは言うまでもない。また、銀行の自助努力以外にも、政府の明確なルール作りを迅速に行うのも銀行の安全性を保つのには重要な課題ということが出来る。(ビッグバンによる各種ルールの改定、あるいは今後変える必要のあるルールなどについては岡部(1999)を参照)。今後、これらのことが行われていくことは確かであろうが、もう一つの課題としてはそれをすばやく行う必要であると考える。そうすることで、都市銀行銀行は再び競争力を取り戻し、外資と世界レベルで戦えることができるようになるのではないだろうか。

おわりに

私がこの論文を書き終わるころには就職活動に突入する。私は金融機関志望であるが、まわりの学生の様子を見るにつけ、外資系金融機関の人気は非常に高い。逆に日本を代表する金融機関の人気はかつてのように芳しくない。

しかし、今回の分析では今後都銀が回復する可能性は大いにあると判断した。なぜなら、合併、統合あるいはそうでない都市銀行も努力により倒産確率は1%という非常に低い値を示すようになったからである。今回の分析は、周囲の噂、メディアの誇張された都市銀行バッシングに振り回されず就職というものを考える契機にもなった。

 

 

<参考文献>

[1]岡部光明(1999)「現代金融の基礎理論」日本評論社

[2]岡部光明(1999)「環境変化と日本の金融」日本評論社

[3]森平爽一郎(1997)「倒産確率推定のオプション・アプローチ」『証券アナリストジャーナル』10

[4]斉藤啓幸・森平爽一郎(1998)「オプション・アプローチによる銀行の倒産確率推定」1998年度JAFEE夏季大会予稿集

[5]森平爽一郎(2000)「信用リスクの測定と制御」計測自動制御学会

[6]森平爽一郎(2000)「信用リスクの測定と管理:オプションモデルによる倒産確率推定:基礎」『証券アナリストジャーナル』1月

[7]森平爽一郎(2000)「信用リスクの測定と管理:オプションモデルによる倒産確率推定:拡張と応用」証券アナリストジャーナル 3

[8]家田明(1999)「社債流通価格にインプライされている期待デフォルト確率の信用リスク・プライジング・モデルによる推定−改良型ジャロウ・ランド・ターンブル・モデルを用いて−」『金融研究』第18巻別冊第1号、日本銀行研究所 

[9]家田明・吉羽要直(1999)「社債価格にインプライされている期待デフォルト確率の信用リスク・プライジング・モデルによる推定(2)−ロングスタッフとシュワルツのモデルを用いて−」『金融研究』第18巻別冊第1号、日本銀行研究所 

[10]廣田雄一(2000)「判別分析の手法による銀行の健全性評価」慶應義塾大学湘南藤沢学会

[11]山口陽平(2000)「株式ボラティリティーによる倒産確率推定」廣田雄一(2000)の付論

[12]John C.Hull(1989)Options,Futures,& Other DerivativesPrentice-Hall International,Inc.

[13]John C.Hull(1991)Futures and Options MarketsPrentice-Hall International,Inc.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2部

 

 

株価および財務指標からみた銀行の合併効果

 

 

嶋頼彦

 

 

 

 

 

 

 

 

序論

銀行の歴史を振り返ったとき、それは合併の歴史である。そして、現在でも大手都銀が4つのグループに集約されたり、九州の第二地銀3行が経営統合を発表する1など、銀行は合併という戦略を選択し続けている。一般的に銀行の合併効果として規模の経済性や多角化の経済性、コストの削減など様々な効果があげられているが、その効果については疑問の声も多い。また、銀行の合併効果については実証研究上依然として確定したものとはなっていない2。そこで、本稿では株価と財務諸表のデータを用いて銀行の合併効果について分析した。対象は1971年の日本勧業銀行と第一銀行の合併から1996年の三菱銀行と東京銀行の合併までの銀行同士の合併133(図表1)とし、合併効果の計測に際しては、各銀行の株価、コスト削減率、資金調達原価、収益性(ROE、ROA)を取り上げた。

まず、第2章で一般的に言われている銀行の合併効果についてまとめた。第3章では銀行の株価データを用いて超過収益率とリスクを基に合併効果について計測した。第4章では店舗数と従業員数のデータを用いてコスト削減効果について分析した。第5章では資金調達原価について調べ、それを資金調達利回りと営業経費率に分けると共に、規模の経済性が働いているのか分析した。第6章では収益性としてROEとROAを算出し、結局、銀行の合併が収益にどう結びついているのか検証した。最後に、第7章では合併した銀行がどのような戦略をとるべきか、また、それを監督する公的当局はどのような役割を果たすべきであるか提言した。

 

 

銀行の合併効果の定義

まず、銀行の合併効果についてまとめると、大きく3つに大別される。それは、規模の経済性(economies of scale)、多角化の経済性(economies of scope)、コスト削減効果である4。これらについて一つ一つまとめていく。

一つ目に、規模の経済性とは、一般的に企業の生産高や売上高などの規模が大きくなると、商品単位当たりの製造コストや販売コストなどが低下し、生産性が上がることを指している。これを銀行に当てはめると、銀行がの取り扱う資金量が大きくなるに従って、固定費部分が相対的に低下し、業務活動の生産性が上がることが規模の経済性ということになる。特に、銀行においては提供するサービスの規模が増大しても固定的な費用(店舗網、コンピュータ設備などに係る支出)の比率が高く、規模の経済性を享受しやすい。合併は規模を拡大するのに最も単純な方法である。

また、規模の経済性に関して、今後最も働くであろうと考えられるのが、IT投資関連である。銀行に限らず金融業は、製造業などとは異なり、商品の物理的な移動は伴わず、数字やデータのみが取引される情報集約型のビジネスである。今日、その資金やリスクの移動がITを通じて行われるに至って、金融業はIT産業そのものとなった。実際、日本の金融機関が2000年度に計画しているITの投資額が前年度比で33%増える5など、IT投資を重視している。しかし、日本の銀行は米国の銀行と比べると一銀行当たりのIT投資の絶対額で大きく見劣りする。大手米銀は年間2000億から3000億円規模のIT投資を行っているのに対して、大手邦銀では年間400億円程度しか投資していない。現在の日米銀行間の収益格差はIT投資に対する違いによるものだとも言われている。IT投資には固定費の要素が多く、合併によって規模の経済性を享受することは十分考えられる。事実、日本興業、富士、第一勧業が統合すると発表されたとき、市場が最も注目したのは、IT投資への費用が三行合計で1400億円と米銀並みの水準に達したことであるという。つまり、合併によってIT投資額も大きくなり、規模の経済性が働き、収益に結びつく。

二つ目に、多角化の経済性とは、一般的に複数の財を各々別の企業で生産したときの総費用よりも、一社が複数の財をまとめて生産したときの総費用の方が低コストであるような場合の経済性である。その場合の経済性は複数の財のそれぞれの生産に共通した生産要素が存在し、それが転用可能な場合に生じる。銀行の業務においては、複数の業務で共通に利用される生産要素が存在する。さらに、その生産要素が一方の生産物を生産する場合に他の生産物の生産に際して無コストで転用可能であるか、あるいは分割不可能であるために異なる業務で無コストで共同利用可能であるというコスト構造を持つことが多い。具体的な共通生産要素として上げられるのは事務処理面でのコンピュータ関連の固定費、情報の収集や処理、人的資源、営業店舗、商品開発である。業務を多角化しても顧客、経済、企業情報などは共通であり、それを管理するコンピュータも共通である。また、多角化による新しい業務を同じ従業員、同じ店舗で行うことができる。さらに、多角化による商品開発には従来の商品開発の業務ノウハウやシステムを使用することが可能である。つまり、銀行は多角化の経済性を享受しやすい業態であると言える。合併は業務を効率的に多角化するのに有効な方法である。

さらに、金融業に独特な要因として、資産保有に伴って生じるコストであるリスクは、資産の分散化が図られる場合には、資産規模が大きくなるほどには増加しないということがあげられる。つまり、業務を多角化しても、それほどリスクは増加せず、そうでない場合に比べて収益の増加が可能となる。

三つ目に、コスト削減効果とは、経費の削減、人手の圧縮など、経営資源の合理化を行い、それによって効率化を追求することが可能となる。過去、銀行が経営的に苦境に陥った場合、ほとんどの銀行が取り入れる有力な効率化の手段である。合併を行えば、重複する機能や拠点、人員を整理することによってコスト削減効果が生まれる。

 

 

株価から見る合併効果

3.1 計測方法

3章では株価による合併効果を分析する6。一般的に株価は銀行が将来生み出すであろう収益の現在価値を反映して決まるため、合併により生まれた銀行の株価は将来性を定量的、定性的に織り込んだものとなるはずである。したがって、合併行の株価を合併前と合併後で比較することによって、合併効果を計測することができる。なお、指標として、合併行に見られる超過収益率とリスク(β値)を用いて分析する。

分析には以下のモデルを用いる。

it αi βimt +εit

このモデルは個々の証券の収益率(Rit)と市場ポートフォリオの収益率(Rmt)は1次の関係にあると仮定して、個々の証券の収益率と市場ポートフォリオの収益率との関係を表そうとするものである。αiは証券iごとに固有の値をとる定数である。βiは市場ポートフォリオの変化に対する反応係数であり、証券iごとに固有な定数である。εitは残差であり、個別証券の収益率の中で市場全体の動きでは説明できない証券i固有の動きを表す部分である。つまり、残差は市場要因を含まない個々の銀行特有の情報によってもたらされる超過収益率を表すものである。なお、すべての証券の収益率にシステマティックな影響を及ぼす共通の要因はRmtだけであると仮定する。

本稿では個々の証券の収益率として各銀行の月末の株価を用いた。また、市場ポートフォリオの収益率として日経平均株価の月末の値を用いた。推計にあたっては合併前後の各12ヵ月を除く前後60ヵ月の2つの期間に対してそれぞれモデルをあてはめた。これは、合併前後の撹乱要因を含まない平常時の推計式を求めるためである。つまり、合併発表というアナウンスに対する市場の期待感を除くということである。あくまでも市場が銀行合併そのものをどう評価したのかではなく、銀行に対する市場の評価が合併前後でどのように変化したかを分析する。なお、高松相互、青和、弘前相互、高千穂相互、平和相互、ふそう、東邦相互、羽後、秋田あけぼのについては株価データがないため除く。またデータの制約上、熊本、肥後ファミリーは42ヵ月、東京三菱は44ヵ月とする。

3.2 超過収益率

まず、超過収益率について検証する。合併前、合併後それぞれについて超過収益率を求め、それを時系列にプロットした(図表2)。すると、第一勧業、兵庫相互、西日本、住友、伊予、東京三菱のケースでは、合併後、株価が若干高くなり、超過収益をもたらしていることが観察される。しかし、その大きさ、期間はばらばらであり、そのリバウンドの程度もばらばらである。さらに、その後の超過収益率の推移を見ても、5年間という期間においては何の傾向もなく、超過収益率がゼロに近づいていることから個々の銀行株式の収益率は市場ポートフォリオの収益率に収斂しているようである。

3.3 リスク

先ほど述べたようにβiは各銀行の株価についての市場反応度を示している。β値が1.0以下であれば、市場ポートフォリオの動きに対して小さく反応し、安定的でリスクが小さいと評価できる。一方、β値が1.0以上であれば、市場ポートフォリオの動きに対して大きく反応し、不安定でリスクが大きいと評価できる。

個々の計測結果を見ると、さくら、西日本、あさひ、東京三菱のケースについてはβ値が上昇したが、それ以外ではβ値は低下した(図表3)。β値が合併後に低下したということは、合併前と比べてリスクが減少したということである。つまり、4つのケース以外では合併に伴うリスク削減効果が認められたと言える。ただし、兵庫相互の合併後と三菱と東京についてはt値が低いため評価は有効なものではない。リスクが減少したと市場から評価されれば、格付けなど銀行の信用度が上がり、より低い利回りで資金を調達することが可能となる7。つまり、収益の拡大に大きく貢献する。特に、西日本のケースを除く地銀や第二地銀間の合併ではすべてにおいて合併後にリスクが低下しており、その効果が顕著である。やはり、規模の小さい地銀や第二地銀にとって、合併よって規模が大きくなるとリスクが減少する、つまり、合併効果は非常に大きいものと考えられる。なお、地銀や第二地銀間の合併効果と規模の経済性に関する考察は第6章第2節で述べることにする。

最後に、この結果は市場ポートフォリオに対する評価であり、個々の銀行の動きには銀行業界特有の動きも含まれている。つまり、リスクが減少したといっても個々の銀行が評価されたのではなく、銀行業界全体が評価された可能性も否定できない。したがって、この結果は参考程度にとどめるべきである。

 

 

コスト削減率から見る合併効果

4.1 分析方法

銀行の合併効果の一つにコスト削減効果があげられる。合併することによって重複する店舗や従業員を削減し、コストを下げることが可能となると言われている。では、実際に合併した銀行はどの程度コストを削減しているか、この点について以下分析した。分析方法はまず、個々の銀行の店舗数と従業員数が全国銀行の店舗数と従業員数に占める比率をそれぞれ店舗比率、従業員比率と定義する。そして、合併前5年の2行の単純合計と合併後5年、次の合併後5年(つまり、合併後6年目から10年目までの5年間、以下合併後10年と表す)とを比較した8

4.2 店舗比率

まず、店舗比率については、合併後5年を合併前5年と比べた場合、増加しているのは西日本と住友の2行である。しかし、その2行も合併後10年で見ると、合併前5年と比べて減少している。また、合併後5年と合併後10年を比べると、みちのくと伊予を除いて合併後10年の方がより大きく減少している(図表4)。

つまり、店舗比率がほとんどの場合において減少していることから、合併した銀行は店舗数を大きく削減していることがわかる。さらに、合併5年後よりも10年後の方がより店舗数が減少しており、時間が経過することによってコスト削減が進むことがわかる。やはり、合併における基本的な発想は「時間が解決する」ということにあったものと考えられる9

また、一部の地銀や第二地銀間の合併において増加している理由としては、地銀や第二地銀の中には今まで本店がある県内だけで業務を行っていたのを、営業地域の拡大を目的として合併する場合もある。例えば、山陰合同とふそうの合併を見ると、合併直前の山陰合同は本店のある島根県と鳥取県を中心に店舗を持っていたのに対して、ふそうは、本店のある鳥取県に加えて、数は少ないものの、岡山県、兵庫県などにまたがって店舗を持っていた10。つまり、この場合では、重複する店舗が存在するのは鳥取県の一部の店舗のみであり、あまり店舗を削減する必要はない。したがって、このような地銀や第二地銀間の合併においてはそれほど既存店舗のコストを削減する必要がなかったと考えられる。これらの点は都銀同士の合併においても、神戸を中心に店舗を持つ神戸と首都圏を中心に店舗を持つ太陽の合併などにおいても同じことが言える。

4.3 従業員比率

次に、従業員比率については、合併後5年を合併前5年と比べた場合、増加しているのはみちのく、山陰合同、熊本ファミリー、東京三菱である。さらに、合併後10年を合併前5年と比べると、みちのく、山陰合同、伊予、熊本ファミリーでは増加しているが、その他のケースではすべて減少している(図表5)。

つまり、従業員比率に関してもだいたいの場合、減少しており、合併によって従業員数を減らしていることがわかる。しかし、従業員比率を店舗比率と比べた場合、@減少したケース数が少ない、A減少しているケースでも減少の程度が少ない。つまり、従業員数の削減は店舗数の削減ほどではないことが観察される。これは、人事の問題が原因であると考えられる。以下、合併に伴う人事の問題について述べることとする。

過去の提携・合併において成功・失敗の要因をCEO(頭取もしくは社長)に尋ねたアンケート結果がある(図表6)。これによると、失敗の要因として提携効果実現までの計画の甘さなどに加えて、企業文化のミスマッチ、従業員や顧客とのコミュニケーションの不足による離反など、人に関わる要因が大きな割合を占めている。過去の日本の銀行合併においても、「たすき掛け人事」や「二つの人事部」といったような無駄なコスト要因となったケースがしばしば見られた。2つの銀行には長年に渡って蓄積された異なる人事制度があり、給与体系などそれを一つに融合するのは難しい。仕方なく給与体系を高い方に合わせる形で調整するといったケースもある11。また、2つの銀行には異なった企業文化があり、従業員の価値観も異なる。双方で業務のやり方の違いなど非効率や対立はなかなか消えない。また、合併によって組識が大きくなることによって発生する組識の非効率も指摘されている12。つまり、合併によってコストが削減されるどころか、人事に関しては、合併が新たなコスト要因となる場合もある。

さらに、銀行に限らず日本企業は、いったん企業に勤めたら辞めさせられることはない、という日本的な雇用慣行が貫かれた組識である。したがって、合併したからといってすぐに従業員を削減しにくい環境にある。

 

 

資金調達原価から見る合併効果

5.1 分析方法

銀行の究極的な使命とは資金を集めて貸すことである。その際、いかにして資金を低いコストで集めるかが銀行の収益の鍵となる。したがって、5章では資金調達原価という指標を用いて合併前後でどのように変化したかについて分析した。資金調達原価とは銀行の財務諸表の資金調達費用13に営業経費14を足したものを資金調達残高15で割ったものである。つまり、銀行がある資金を調達するのにどれほど費用がかかっているのかを見るものであり、資金調達原価が合併後に下がっていれば合併効果が認められるということになる。また、資金調達には規模の経済性が働くと考えられる。規模が大きくなれば、一単位当たりの費用の引き下げが可能となるからである。よって、規模の経済性が実際にあるのかどうかの検証にもつながる。

個々の銀行の合併前後で資金調達原価を比較してもそのときの金利などの影響を受けてしまい、合併効果が測れないため、判断の基準として同時期の全国銀行の資金調達原価を用いた。つまり、第一銀行を例に取ると、第一銀行の1967年から1971年までの5年間の資金調達原価を調べ、それを同時期の5年間の全国銀行の資金調達原価と比較した。なお、4章と同じように合併前5年、合併後5年、合併後10年と区別して分析した。

5.2 結果

全体を通して見ると、個々の事例によってばらばらであり、合併前と比較して合併後に上昇している場合もあれば低下している場合もある(図表7)。つまり、資金調達原価を見ただけでは、合併効果が認められなかった。以下、個々のケースごとに見ていくこととする。

まず、資金調達原価では吸収する側の銀行16を基準に考えると、合併前5年と比べて、合併後5年に資金調達原価が低下しているのは、みちのく、住友、あさひ、伊予、熊本ファミリー、北都のケースである。合併後10年では、兵庫相互、みちのく、住友、あさひ、伊予が低下している。

資金調達原価のうち資金調達費用を資金調達残高で割ったものを資金調達利回りという。合併前5年と比較して、合併後5年で資金調達利回りが低下しているのは、みちのく、住友、さくら、あさひ、熊本ファミリーである。合併後10年では、兵庫相互、みちのく、住友、あさひが低下している。

同様に、営業経費を資金調達残高で割ったものを営業経費率という。合併前5年と比べて、合併後5年で営業経費率が低下しているのは、山陰合同、伊予、熊本ファミリー、北都、東京三菱である。合併後10年では兵庫相互、西日本、あさひ、山陰合同、伊予、熊本ファミリー、北都が低下している。

資金調達原価を資金調達利回りと営業経費率とに分けて比較した場合、営業経費率の方が合併後に低下しているケースが多い。営業経費とは主に人件費と物件費であり、第4章で見たように、銀行の合併によって従業員や店舗が削減されることがほとんどのケースで確認されたことと一致する。

また、都銀同士の合併と比べて地銀や第二地銀間の合併の方が若干ではあるが、資金調達原価が低下する傾向にある。例えば、兵庫相互、みちのく、伊予、熊本ファミリー、北都のケースでは資金調達原価は低下している。つまり、地銀や第二地銀間の合併の方がより合併効果が認められるということである。この理由については、規模の経済性に関する考察も含めて第6章第2節で述べることにする。

 

 

収益性から見る合併効果

6.1 分析方法

銀行に限らず、企業にとって最も重要なものとして収益性があげられる。そして、収益性を測る指標として代表的なのはROEとROAである。さらに、4章で見たコストの削減も5章で見た資金調達原価も結局は収益に関わってくる。したがって、6章ではROEとROAが合併前と合併後でどのように変化したかについて分析した。むろん、合併後に上昇していれば合併効果が認められるということになる。ROEとROAは財務諸表の値からそれぞれ以下のように求めた。

ROE=当期利益/資本の部17

ROA=当期利益/(資産の部18―支払承諾見返)

なお、分析方法は5章と同じように全国銀行の同時期の値と比較した。

6.2 考察

全体的に見て、合併前と合併後を比較して、ROEもROAも明確に上昇したということは観察されず、合併効果があったかについては甚だ疑問である。まず、ROEについて合併前5年と比較すると、合併後5年ではほとんど低下するが、合併後10年になると若干上昇する(図表8)。個々に見ると、後5年で上昇しているケースは、兵庫相互、山陰合同、伊予、北都であり、後10年では兵庫相互、西日本、山陰合同、伊予、熊本ファミリーである。

次に、ROAについて全体的に見ると、ROEよりも上昇している銀行が多い(図表9)。ただし、合併後5年で上昇していても、合併後10年で低下しているところもある。個々に見ると、後5年で上昇しているのは、兵庫相互、太陽神戸、みちのく、さくら、あさひ、山陰合同、伊予、北都であり、後10年では第一勧業、兵庫相互、太陽神戸、山陰合同、伊予である。

以上のように合併後に収益性が明らかに上昇しているケースもあれば、低下しているケースもある。ただ、都銀同士の合併と地銀や第二地銀間の合併を比較した場合、兵庫相互、山陰合同、伊予のケースのように地銀や第二地銀間の方がより上昇している。特に、ROEに関しては地銀や第二地銀間のケースのみ合併後に収益性が上昇している。この理由として、日本の都銀の規模は経済学的に既に十分大きいため、さらに合併して規模を拡大しても、規模の経済性を享受できなかったものと考えられる。日本の銀行の規模と経費率の関係を見てみると、確かに経費率は規模が大きくなると低くなり、資産規模が3兆円ぐらいまで下がり方は大きいが、20兆円を越えるとフラットになると言われている19。つまり、地銀と二銀間の合併ではまだ規模の経済性が働く余地があったものの、都銀同士の合併では既に規模が大きすぎ、規模の経済性が働く余地はなかったものと考えられる。ちなみに、都銀同士の合併でも第一勧業は合併当初の資産規模が6兆5000億、太陽神戸は5兆2000億と現在の地銀並みに低いため、他の都銀同士の合併に比べるとより合併効果が確認できる。例えば、合併後10年のROEは上昇しており、第3章第3節のリスクに関しても他の都銀同士の合併では合併後リスクが上昇しているが、この2行のケースに関してのみリスクが低下している(図表3)。

コストが削減されているにも関わらず、収益性を見るとあまり上がっていない理由については、まず、第4章第3節で述べた人事の問題があげられる。銀行が合併した場合、従業員が会社に対する将来への不安や自分の職種や地位に関する不安から戦力となっている優秀な人材が辞めてしまうケースが増えている20。さらに、合併後の人事抗争のごたごたによって優秀な人材が辞めるケースもある。例えば、東京三菱の場合、東京の海外勤務が豊富で語学が堪能な人材が合併後の人事抗争に嫌気がさし、次々と外へ出て、大学などの研究機関に再就職したという21。つまり、合併によって生じた重複する人材を削減したのではなく、合併による負の遺産で優秀な人材が辞めることによって従業員が減った場合もある。これでは、量的にコストが削減されたからといって収益が上がるはずがない。

次に、店舗統廃合や従業員の削減に伴う顧客の流出があげられる22。既存の銀行にそれほど差異が見られない現在、銀行の個人顧客には近くに店舗やATMがあって便利だからという理由で取引銀行を選択する人も多いであろう。そのような顧客が合併による店舗の統廃合によって今まで使用していた店舗がなくなり、取引するためにわざわざ遠くの店舗まで行かなければならなくなった場合、その銀行との取引を継続するだろうか。近くに他の銀行の店舗があった場合、そちらの銀行に乗り換えるということも十分考えられる。さらに銀行の個人顧客のうち、銀行にとって収益の源になる富裕層の顧客と銀行との関係はいつも取引に来てくれる○○さんという一人の従業員で結ばれていることもある。それが、仮に合併によってその従業員が解雇されなかったとしても、合併に伴う店舗の統廃合による転勤、組識の融和のための人事交流などによる移動などがあった場合、その顧客が流出する可能性もある。このような場合にはきちんとした説明を顧客に対してするべきであろう。これらの理由によってコストが削減されたとしても収益に結びつかないこともある。したがって、銀行は合併した場合、これらの点にも考慮する必要がある。

 

 

結論

本稿では株価と財務諸表のデータを用いて銀行の合併効果について検証した。結局、全体的に見ても、個別の事例をとってみても、銀行の合併効果がある、ないという明確な結果は得られなかった。唯一、はっきりと観察できたのは、コスト削減効果である。このことは米国の1990年代における9つの銀行合併についての事例研究の結果と一致する23。しかしながら、コストの削減が行われていてもそれが収益の拡大に結びついていないことが多い。その理由としては、一つ目に第4章第3節で述べた人事に関する問題があげられる。二つ目に銀行のデータ処理システムとその運用の統合に関する問題があげられる。銀行は合併後に自行の存在感をアピールするべく、自行がこれまで使っていたシステムをメインとすることにこだわりがちである24。どちらのシステムが効率的であるかというより、合併においてどちらの銀行の方が強いのか、あるいは、そのメーカーとの関係が深いかなどということがシステム選定の際に優先される傾向がある。最悪の場合、どちらの銀行のシステムも合理的な理由なく温存されるということもあるだろう。これでは逆にコストが増えてしまう。この点に関しては先ほどの米国における事例研究でも報告されている。

さらに、過去においては規制などもあり、銀行同士の合併であったため、多角化の経済性をそれほど享受できなかったと考えられる。同じような金融商品を持つ銀行同士が合併しても、2章であげた共通生産要素であるコンピュータ関連の固定費、情報の収集や処理、人的資源、営業店舗は新しい業務が存在しないため、生かすことができない。また、規制などがあり、新しい商品開発も不可能である。つまり、銀行同士の合併では多角化の経済性はほとんど働かない。一方、米国では銀行業を営むシティと保険と証券分野をもつトラベラーズという異業種の合併によって大きな効果が観察されている25。これは合併によって異なる金融商品をクロスセルすることによって、一顧客からの収益性を高めることが可能となったからである。

ただ、全体的に見て、都銀同士の合併や対等な合併と比べると、地銀と二銀間の合併や吸収合併には合併効果が顕著なものもあった。しかしながら、都銀では4大グループが形成されるなど、再編が進んでいるのに対して、地銀や二銀では一部では再編への動きがあるものの、依然として一つの県に銀行が三行も乱立したままなど再編はそれほど進んでいない。ただ、都銀が4大グループに集約されたため、地銀や二銀の合併が今後、より進むという見方もある26。例えば、199912月に発表された山形県の地銀と二銀の3行の合併である。これは荘内が富士系、殖産が第一勧業、日本興業系であったことから、みずほの誕生によって合併が加速したと言われている27。ともかく、現在、ペイオフの凍結解除など経営環境が厳しい地銀などの生き残りの方法として、合併は有力な方法であると考えられる。

したがって、今後、公的当局には銀行と銀行以外の合併を後押しする環境整備と、地方に乱立する規模の小さい銀行に対して合併を後押しする環境整備とが求められる。

 

 

 

参考文献

アンダーセンコンサルティング金融ビッグバン戦略本部(1999)『金融業の人材・組識モデル革新』、東洋経済新報社。

アンダーセンコンサルティング金融ビッグバン戦略本部(1999)『金融業のIT産業化』、東洋経済新報社。

五十嵐隆(1991)『金融大再編』、時潮社。

石井正幸(2000)『地銀大再編』、毎日新聞社。

岡部光明(1999)『現代金融の基礎理論』、日本評論社。

岡部光明(1999)『環境変化と日本の金融』、日本評論社。

小原由紀子(2000)『銀行革命・勝ち残るのは誰か』、講談社。

川本裕子(2000)『銀行収益革命』、東洋経済新報社。

後藤新一(1991)『銀行合同の実証的研究』、日本経済評論社。

嶋頼彦(1999)『銀行間における預金金利の格差とその原因についての実証分析』、慶応大学湘南藤沢学会。

高瀬恭介(1999)『金融変革と銀行経営』、日本評論社。

財部誠一(1999)『シティバンクとメリルリンチ』、講談社。

橘木俊詔・羽根田明博(1999)『都市銀行の合併効果』、大蔵省財政金融局研究所。

向壽一(2000)『メガバンク誕生』、日本放送出版協会。

 

 

 

 

図表

 

 

図表1 銀行合併の動き(本稿での分析対象の13例)

 

年代

事柄

種類

1971.10

日本勧業銀行と第一銀行が合併し、第一勧業銀行発足

兵庫相互銀行と高松相互銀行が合併

1973.10

神戸銀行と太陽銀行が合併し、太陽神戸銀行発足

1976.10

青和銀行と弘前相互銀行が合併し、みちのく銀行発足

1984.4

西日本相互銀行と高千穂相互銀行が合併し、西日本銀行発足

1986.10

住友銀行と平和相互銀行が合併

1990.4

三井銀行と太陽神戸銀行が合併し、太陽神戸三井銀行(さくら銀行)発足

1991.4

協和銀行と埼玉銀行が合併し、協和埼玉銀行(あさひ銀行)発足

山陰合同銀行とふそう銀行が合併

1992.4

伊予銀行と東邦相互銀行が合併

熊本銀行と肥後ファミリー銀行が合併し、熊本ファミリー銀行発足

1993.4

羽後銀行と秋田あけぼの銀行が合併し、北都銀行発足

1996.4

三菱銀行と東京銀行が合併し、東京三菱銀行発足

注:○は都銀同士の合併、△は都銀と地銀(第二地銀も含む)の合併、□は地銀同士の合併。

 

 

 

図表2 合併前後の超過収益率

 

 

 

 

図表3 合併前後のリスク指標

 

行名

期間

β値

t

行名

期間

β値

t

日本勧業

65/1070/9

1.506

12.575

第一勧業

72/1077/9

0.713

2.629

第一

1.353

12.964

兵庫相互

65/1070/9

0.502

10.130

兵庫相互

72/1077/9

0.047

0.252

高松相互

神戸

67/1072/9

2.558

17.826

太陽神戸

74/1079/9

0.183

5.265

太陽

1.720

17.724

西日本相互

78/483/3

-0.428

-5.682

西日本

85/490/3

0.594

16.286

高千穂相互

住友

80/1085/9

4.178

19.160

住友

87/1092/9

0.690

7.866

平和相互

三井

84/489/3

1.005

17.344

さくら

91/496/3

1.361

14.359

太陽神戸

1.074

15.313

協和

85/490/3

0.737

16.191

あさひ

92/497/3

1.823

8.462

埼玉

0.830

15.276

山陰合同

85/490/3

0.841

18.312

山陰合同

92/497/3

0.704

6.117

ふそう

伊予

86/491/3

0.699

13.795

伊予

93/498/3

0.227

2.807

東邦相互

熊本

87/1091/3

0.366

4.023

熊本ファミリー

93/498/3

0.251

3.288

肥後ファミリー

0.349

2.071

三菱

90/495/3

0.163

1.032

東京三菱

97/400/12

1.020

5.257

東京

-0.010

-0.064

 

 

 

 

図表4 合併前後の店舗比率

 

前5年

2行の合計

(A)

後5年

(B)

後10年

(C)

5年差

(B-A)

10年差

(C-A)

日本勧業

1.529

3.103

第一勧業

2.928

2.735

-0.175

-0.367

第一

1.574

兵庫相互

0.713

1.012

兵庫相互

0.937

0.930

-0.075

-0.082

高松相互

0.299

神戸

1.621

3.142

太陽神戸

2.878

2.689

-0.264

-0.453

太陽

1.522

青和

0.330

0.799

みちのく

0.649

0.686

-0.150

-0.113

弘前相互

0.469

西日本相互

1.123

1.253

西日本

1.266

1.204

0.012

-0.049

高千穂相互

0.130

住友

1.753

2.452

住友

2.460

2.398

0.008

-0.054

平和相互

0.699

三井

1.548

3.959

さくら

3.654

3.144

-0.305

-0.815

太陽神戸

2.410

協和

1.549

2.871

あさひ

2.658

2.599

-0.213

-0.273

埼玉

1.323

山陰合同

0.857

1.206

山陰合同

1.093

1.079

-0.112

-0.126

ふそう

0.349

伊予

0.908

1.195

伊予

0.992

1.026

-0.202

-0.169

東邦相互

0.287

熊本

0.370

0.703

熊本ファミリー

0.655

0.623

-0.048

-0.080

肥後ファミリー

0.333

羽後

0.426

0.791

北都

0.686

0.608

-0.105

-0.183

秋田あけぼの

0.365

三菱

2.159

2.709

東京三菱

2.536

-0.174

東京

0.551

 

 

図表5 合併前後の従業員比率

 

前5年

2行の合計

(A)

後5年

(B)

後10年

(C)

5年差

(B-A)

10年差

(C-A)

日本勧業

2.821

5.817

第一勧業

5.714

5.067

-0.103

-0.749

第一

2.996

兵庫相互

0.619

0.744

兵庫相互

0.638

0.636

-0.107

-0.109

高松相互

0.126

神戸

2.017

3.635

太陽神戸

3.487

3.267

-0.148

-0.369

太陽

1.618

青和

0.134

0.457

みちのく

0.473

0.481

0.017

0.025

弘前相互

0.323

西日本相互

0.785

0.842

西日本

0.837

0.791

-0.004

-0.051

高千穂相互

0.056

住友

3.204

3.909

住友

3.749

3.798

-0.161

-0.111

平和相互

0.705

三井

2.366

5.385

さくら

4.917

4.326

-0.467

-1.058

太陽神戸

3.019

協和

1.865

3.636

あさひ

3.230

3.204

-0.407

-0.433

埼玉

1.772

山陰合同

0.489

0.669

山陰合同

0.692

0.720

0.023

0.051

ふそう

0.180

伊予

0.630

0.752

伊予

0.715

0.758

-0.037

0.006

東邦相互

0.122

熊本

0.211

0.396

熊本ファミリー

0.411

0.441

0.015

0.045

肥後ファミリー

0.185

羽後

0.218

0.416

北都

0.378

0.378

-0.038

-0.038

秋田あけぼの

0.199

三菱

3.378

4.526

東京三菱

4.788

0.262

東京

1.147

 

 

図表6 金融機関の提携の成功/失敗要因

 

 

 

出典:アンダーセンコンサルティング金融ビッグバン戦略本部(1999)

 

 

 

図表7 合併前後の資金調達原価、資金調達利回り、営業経費率

 

前5年

全国

全国差

(A)

後5年

全国

全国差

(B)

10

全国

全国差

(C)

5年差

(B-A)

10年差

(C-A)

日本

5.564

5.840

-0.276

第一

6.156

5.845

0.311

6.814

6.619

0.196

0.586

0.472

勧業

4.031

4.037

-0.005

勧業

4.482

4.168

0.315

5.074

4.800

0.274

0.320

0.279

1.533

1.804

-0.271

1.673

1.677

-0.004

1.740

1.819

-0.078

0.266

0.192

第一

5.455

5.840

-0.386

0.696

0.581

3.991

4.037

-0.046

0.360

0.320

1.464

1.804

-0.340

0.336

0.262

兵庫

5.319

5.840

-0.522

兵庫

5.898

5.845

0.053

5.814

6.619

-0.805

0.575

-0.283

相互

2.937

4.037

-1.100

相互

3.621

4.168

-0.547

3.488

4.800

-1.312

0.553

-0.212

2.382

1.804

0.578

2.277

1.677

0.600

2.326

1.819

0.507

0.022

-0.071

高松

6.292

5.840

0.451

-0.399

-1.256

相互

3.426

4.037

-0.611

0.064

-0.701

2.866

1.804

1.062

-0.462

-0.555

神戸

5.007

5.483

-0.475

太陽

6.314

6.377

-0.063

7.286

7.154

0.132

0.412

0.608

3.571

3.893

-0.321

神戸

4.477

4.511

-0.034

5.645

5.545

0.100

0.288

0.421

1.436

1.590

-0.154

1.837

1.866

-0.029

1.642

1.609

0.033

0.124

0.186

太陽

5.144

5.483

-0.338

0.275

0.471

3.443

3.893

-0.450

0.416

0.550

1.702

1.590

0.112

-0.141

-0.079

青和

6.595

5.845

0.749

みち

6.641

6.619

0.022

7.172

7.320

-0.148

-0.727

-0.897

3.986

4.168

-0.182

のく

3.882

4.800

-0.918

4.427

5.967

-1.540

-0.736

-1.358

2.609

1.677

0.932

2.759

1.819

0.941

2.745

1.353

1.392

0.009

0.460

弘前

6.693

5.845

0.848

-0.825

-0.996

相互

4.181

4.168

0.013

-0.932

-1.554

2.512

1.677

0.834

0.107

0.558

西日本

6.080

7.431

-1.351

西日本

5.260

6.156

-0.895

5.296

6.526

-1.229

0.455

0.121

相互

4.072

5.910

-1.838

3.528

5.009

-1.482

3.912

5.534

-1.622

0.356

0.216

2.008

1.521

0.487

1.733

1.146

0.586

1.384

0.991

0.393

0.099

-0.094

高千穂

7.291

7.431

-0.140

-0.756

-1.089

相互

4.359

5.910

-1.551

0.069

-0.071

2.932

1.521

1.411

-0.825

-1.019

住友

7.350

7.320

0.030

住友

6.175

6.166

0.009

5.372

5.657

-0.285

-0.021

-0.315

6.419

5.967

0.452

5.492

5.162

0.330

4.613

4.585

0.027

-0.122

-0.425

0.931

1.353

-0.423

0.683

1.004

-0.321

0.759

1.072

-0.313

0.101

0.110

平和

6.861

7.320

-0.459

0.468

0.174

相互

4.243

5.967

-1.724

2.054

1.751

2.618

1.353

1.265

-1.586

-1.577

三井

5.592

5.929

-0.337

さくら

5.966

6.271

-0.304

3.583

3.685

-0.103

0.033

0.234

4.770

4.863

-0.093

5.002

5.231

-0.229

2.512

2.527

-0.015

-0.135

0.078

0.822

1.066

-0.244

0.964

1.040

-0.076

1.071

1.159

-0.088

0.168

0.156

太陽

5.399

5.929

-0.530

0.226

0.427

神戸

4.333

4.863

-0.530

0.302

0.515

1.066

1.066

0.000

-0.076

-0.088

協和

5.663

6.166

-0.502

あさひ

4.588

5.657

-1.069

2.324

3.422

-1.098

-0.567

-0.595

4.643

5.162

-0.519

3.456

4.585

-1.130

1.263

2.247

-0.983

-0.610

-0.464

1.021

1.004

0.017

1.132

1.072

0.060

1.061

1.175

-0.115

0.044

-0.131

埼玉

5.975

6.166

-0.191

-0.878

-0.907

4.899

5.162

-0.263

-0.867

-0.721

1.075

1.004

0.071

-0.011

-0.186

山陰

5.054

6.166

-1.112

山陰

4.630

5.657

-1.027

2.755

3.422

-0.667

0.085

0.445

合同

3.494

5.162

-1.668

合同

3.172

4.585

-1.413

1.203

2.247

-1.044

0.255

0.624

1.560

1.004

0.556

1.458

1.072

0.386

1.553

1.175

0.377

-0.170

-0.179

ふそう

5.852

6.166

-0.314

-0.713

-0.353

3.938

5.162

-1.224

-0.189

0.180

1.914

1.004

0.910

-0.524

-0.533

伊予

5.480

6.551

-1.071

伊予

3.899

5.003

-1.103

2.060

3.169

-1.109

-0.033

-0.038

4.110

5.576

-1.466

2.469

3.909

-1.440

0.632

1.975

-1.343

0.026

0.122

1.370

0.976

0.395

1.431

1.094

0.336

1.428

1.194

0.234

-0.058

-0.161

東邦

6.603

6.551

0.052

-1.155

-1.161

相互

5.240

5.576

-0.335

-1.105

-1.008

1.363

0.976

0.387

-0.050

-0.153

熊本

5.677

6.551

-0.874

熊本

3.980

5.003

-1.022

2.495

3.169

-0.673

-0.148

0.201

3.877

5.576

-1.699

ファミ

2.177

3.909

-1.732

0.779

1.975

-1.195

-0.033

0.503

1.800

0.976

0.824

リー

1.804

1.094

0.709

1.716

1.194

0.522

-0.115

-0.302

肥後

5.644

6.551

-0.907

-0.115

0.234

ファミ

4.023

5.576

-1.552

-0.179

0.357

リー

1.621

0.976

0.645

0.064

-0.123

羽後

5.705

6.650

-0.945

北都

3.442

4.518

-1.076

2.335

2.946

-0.611

-0.131

0.334

3.817

5.682

-1.865

1.608

3.406

-1.798

0.492

1.738

-1.246

0.067

0.619

1.888

0.968

0.920

1.834

1.112

0.722

1.843

1.209

0.634

-0.198

-0.286

秋田

5.959

6.650

-0.692

-0.384

0.080

あけ

3.659

5.682

-2.024

0.225

0.778

ぼの

2.300

0.968

1.332

-0.610

-0.698

三菱

5.781

5.657

0.123

東京

4.177

3.422

0.755

0.632

5.004

4.585

0.419

三菱

3.301

2.247

1.054

0.636

0.777

1.072

-0.295

0.876

1.175

-0.300

-0.004

東京

7.539

5.657

1.882

-1.127

6.881

4.585

2.296

-1.241

0.658

1.072

-0.414

0.114

注:各行上段が資金調達原価、中段が資金調達利回り、下段が営業経費率。

 

 

 

図表8 合併前後のROE

 

前5年

全国

全国差

(A)

後5年

全国

全国差

(B)

後10年

全国

全国差

(C)

5年差

(B-A)

10年差

(C-A)

 

日本勧業

14.664

14.920

-0.256

第一

11.581

12.426

-0.845

7.940

8.312

-0.372

-0.589

-0.117

第一

13.184

14.920

-1.736

勧業

0.891

1.363

兵庫相互

12.223

14.920

-2.696

兵庫

12.841

12.426

0.415

8.401

8.312

0.089

3.111

2.785

高松相互

13.844

14.920

-1.076

相互

1.491

1.165

神戸

14.220

14.868

-0.648

太陽

9.526

10.481

-0.955

7.275

7.952

-0.677

-0.307

-0.029

太陽

12.333

14.868

-2.536

神戸

1.581

1.858

青和

17.009

12.426

4.584

みち

9.792

8.312

1.480

6.536

8.868

-2.332

-3.103

-6.916

弘前相互

13.537

12.426

1.111

のく

0.369

-3.443

西日本相互

7.277

8.134

-0.857

西日本

5.927

10.024

-4.096

4.296

4.682

-0.386

-3.239

0.472

高千穂相互

5.243

8.134

-2.892

-1.204

2.506

住友

12.297

8.868

3.428

住友

10.030

9.108

0.922

-1.856

-0.870

-0.986

-2.506

-4.415

平和相互

3.048

8.868

-5.820

6.743

4.834

三井

10.457

9.736

0.721

さくら

3.521

3.259

0.262

-11.788

-9.053

-2.735

-0.459

-3.456

太陽神戸

8.819

9.736

-0.917

1.180

-1.818

協和

9.185

9.108

0.077

あさひ

-1.309

-0.870

-0.439

-8.915

-7.662

-1.253

-0.516

-1.330

埼玉

7.839

9.108

-1.269

0.830

0.016

山陰合同

6.969

9.108

-2.139

山陰

3.463

-0.870

4.333

3.686

-7.662

11.348

6.473

13.487

ふそう

5.165

9.108

-3.943

合同

8.276

15.291

伊予

6.665

7.866

-1.202

伊予

3.759

-1.829

5.588

2.833

-10.108

12.941

6.790

14.142

東邦相互

0.374

7.866

-7.492

13.080

20.433

熊本

8.102

7.866

0.236

熊本フ

-11.021

-1.829

-9.192

-5.933

-10.108

4.175

-9.428

3.939

肥後ファミリー

6.512

7.866

-1.354

ァミリー

-7.838

5.529

羽後

7.007

6.273

0.734

北都

-3.210

-6.482

3.272

-24.994

-4.942

-20.052

2.538

-20.786

秋田あけぼの

5.135

6.273

-1.138

4.409

-18.914

三菱

2.613

-0.870

3.483

東京

-10.638

-7.662

-2.976

-6.459

東京

4.571

-0.870

5.441

三菱

-8.417

 

 

 

図表9 合併前後のROA

 

前5年

全国

全国差

(A)

後5年

全国

全国差

(B)

後10年

全国

全国差

(C)

5年差

(B-A)

10年差

(C-A)

 

日本勧業

0.435

0.541

-0.106

第一

0.325

0.448

-0.123

0.195

0.264

-0.069

-0.017

0.037

第一

0.367

0.541

-0.174

勧業

0.051

0.105

兵庫相互

0.505

0.541

-0.036

兵庫

0.445

0.448

-0.003

0.240

0.264

-0.024

0.033

0.012

高松相互

0.504

0.541

-0.037

相互

0.034

0.013

神戸

0.375

0.552

-0.176

太陽

0.245

0.365

-0.120

0.146

0.223

-0.077

0.056

0.100

太陽

0.434

0.552

-0.118

神戸

-0.002

0.041

青和

0.455

0.448

0.007

みち

0.281

0.264

0.018

0.180

0.219

-0.039

0.011

-0.046

弘前相互

0.388

0.448

-0.059

のく

0.077

0.021

西日本相互

0.274

0.215

0.059

西日本

0.199

0.258

-0.059

0.169

0.166

0.003

-0.118

-0.056

高千穂相互

0.092

0.215

-0.123

0.064

0.126

住友

0.293

0.219

0.074

住友

0.278

0.262

0.016

-0.062

-0.022

-0.039

-0.058

-0.113

平和相互

0.081

0.219

-0.138

0.155

0.099

三井

0.233

0.265

-0.032

さくら

0.106

0.120

-0.014

-0.386

-0.316

-0.070

0.017

-0.039

太陽神戸

0.181

0.265

-0.084

0.070

0.014

協和

0.228

0.262

-0.034

あさひ

-0.027

-0.022

-0.004

-0.319

-0.269

-0.050

0.030

-0.016

埼玉

0.201

0.262

-0.061

0.057

0.011

山陰合同

0.269

0.262

0.007

山陰

0.143

-0.022

0.165

0.170

-0.269

0.439

0.158

0.432

ふそう

0.146

0.262

-0.116

合同

0.281

0.555

伊予

0.229

0.244

-0.015

伊予

0.151

-0.057

0.208

0.140

-0.354

0.495

0.224

0.510

東邦相互

0.012

0.244

-0.232

0.440

0.727

熊本

0.232

0.244

-0.011

熊本フ

-0.238

-0.057

-0.181

-0.428

-0.354

-0.074

-0.169

-0.062

肥後ファミリー

0.188

0.244

-0.056

ァミリー

-0.125

-0.018

羽後

0.203

0.209

-0.005

北都

-0.059

-0.202

0.142

-0.501

-0.226

-0.275

0.148

-0.269

秋田あけぼの

0.140

0.209

-0.069

0.211

-0.206

三菱

0.095

-0.022

0.117

東京

-0.236

-0.269

0.033

-0.084

東京

0.190

-0.022

0.213

三菱

-0.180


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