まず、銀行業における四つの効率化[6]を切口に、情報システム 整備による銀行業の効率化について考えてみたい。
四つの効率化とは、(1)資金獲得効率(2)資金変換効率(3)資金還流効 率(4)資金決済効率、それぞれの効率が上昇することである(図16参照)。
(1)資金獲得効率とは、銀行が預金市場で黒字主体の余剰資金を銀行へと効 率的に集める、その効率性である。例えばATMやCDなどの勘定系システム の導入により、資金獲得の効率を上げたり、情報系システムにより事務処理 の効率を上げたり、より効果的な預金商品の開発により預金獲得の機会を増や すなどが、効率上昇のパターンである。どのパターンにおいても、情報処理・ 通信技術の進歩が大きく貢献している。
(2)資金変換効率とは、預金市場で一度銀行に入った資金を、いかに資金需 要へとつなげるか、その資金の変換の効率のことである。 これは、情報システムの整備により、本支店間での勘定の移転が容易になり、 資金の回転率が上ることによってもたらされる。
(3)資金還流効率とは、貸出市場で貸し出された資金が、いずれ預金となっ て預金市場に循環してきて、いずれ自行に返ってくることである。つまり、銀 行外に資金が滞留している時間を短くすることにより、銀行での資金の回転率 が上がる効率である。例えば、給与自動振込サービスを考えると、社員として は会社からお金が自分の懐に入ったと考えるが、銀行側ではただ単に資金が口 座間移動しただけであり、銀行にとっての預金総額には変化はない。つまり、 銀行にとっては自由に動かせる資金量はこの場合、変わっていないのである。 現金によって給与支払がなされる場合には期待できないこうした効果は、もち ろん勘定系のオンライン化の進展により可能となったものである。
(4)資金決済効率とは、決済のスピードアップにより、資金の回転率が 上がることである。これは、決済のオンライン化によって、資金移動の 時間を短縮することによって、資金の循環効率を上げることである。