資産価格の変動と物価の安定

 

齋藤圭介 総合政策学部3年

 

岡部研究会研究報告書

1994年度春学期

 

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概要

 一般価格が安定を続ける一方,資産価格が上昇するような時,果たしてインフレが生じていると見るべきなのであろうか.このレポートでは,通貨価値の安定を最終目標とする金融政策との関連において,この問題を検討する.85年以降の資産価格の大幅上昇が生じたにもかかわらず,一般物価が安定していたため適切な金融引き締め政策がとられず経済活動の行き過ぎが発生,その後はバブルの崩壊によって逆に不況に陥った.このことからも,上記の関係をはっきりさせることの重要性が分かるだろう.はじめに,一般的なインフレーションの社会に及ぼす経済的コストをみる.インフレは予期されたものであろうと,予期せざるものであろうと、ともに適切な資源配分を歪めることから問題であることが示され,このため一般物価の安定が大切な政策課題になることが述べられる.次に,資産価格が上昇する場合につき,資産価格の決定理論を踏まえて考察する.この場合にも,(1)「予期された資産インフレ」(理論から説明でき,将来の価格をある程度正確に予測することができる場合),(2)「予期せざるインフレ」(理論では説明できない,将来の価格を予測できない場合)の2つの場合に分けて論じ,そして,(2)の場合が問題となる(85年以降の経験から明らかである)だけでなく,(1)の場合も問題として認識することの重要性を明らかにする.最後に,資産価格の変動を加味した物価指標の試みを紹介する.


目次

 

1 はじめに

2 一般的なインフレの経済的コスト

 2.1 予期されたインフレのコスト

    2.1.1 民間から政府への購買力移転に伴う社会的コスト

    2.1.2 資本ストック調整効果

 2.2 予期せざるインフレのコスト

3 資産インフレの経済的コスト

 3.1 資産価格決定理論

 3.2 予期せざる資産インフレ

    3.2.1 一般物価の上昇を伴わないときの資産インフレ・コスト-80年代後半

    3.2.2 一般物価の上昇を伴うときの資産インフレ-70年代前半

 3.3 予期された資産インフレのコスト

4 資産インフレと物価

5 おわりに



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