金融政策における中間目標について
〜金融自由化はマネーサプライにどのような影響を及ぼすのか〜
齋藤圭介 総合政策学部3年
岡部研究会研究報告書
1994年度秋学期
概要
金融政策の運営においては,マネーサプライが中間目標として位置づけられてきた.しかし,そうした政策運営のあり方は,(1)近年の金融自由化の過程において種々疑問が生じてきていること(通貨需要関数や通貨の流動速度の不安定化),(2)85年以降のバブル発生には,日本銀行がマネーサプライを十分重視しなかった面もあること,から再検討する必要性が強まっている.日本銀行を含む各国中央銀行がマネーサプライを中間目標として重視するようになったのは,70年代のハイパーインフレーションによって,従来の中間目標が機能を果たさなくなったからである.現在,いづれの国においても程度の差はあれ,マネーサプライの重要性に対する認識には変わりないが,広義マネーサプライと名目経済活動の関連性の低下や,一般物価安定下の資産価格上昇などから,マネーサプライの評価が困難になってきている.金融政策運営上の中間目標の条件としては,(1)中央銀行によって政策的にコントロールできること,(2)物価等と密接かつ安定的な関連があること,(3)統計上信頼性,速報性,先行性があり,単純で分かりやすいこと,などがあげられる.日本においてマネーサプライ指標がどれだけこれらの条件を満たしてきたかを論じ,最後に,以上の検討を踏まえて,今後のマネーサプライを中間目標とした金融政策のあり方について述べる.
目次
1 はじめに
2 マネーサプライ重視への転換とその背景
3 欧米主要国におけるマネーサプライ・ターゲティングの現状
4 中間目標の条件とマネーサプライの有用性
4.1 マネーサプライのコントローラビリティー
4.2 マネーサプライの物価安定との因果関係
4.3 マネーサプライの速報性・先行性・信頼性
4.3.1 速報性と先行性
4.3.2 信頼性
5 おわりに‐今度の中間目標・マネーサプライ
参考文献