全国銀行デ−タ通信システム(以下「全銀システム」と略す。)は、全国銀行内国
為替制度に加盟する金融機関(以下「加盟銀行」と略す。)相互間の内国為替取引に
関する通知の送受信及び同取引によって生じる加盟銀行相互間の為替決済額の算出など
を処理するオンラインシステムのことであり、わが国の決済システムの清算システム
として大きな役割を果たしている。
この全銀システムは、昭和48年4月に稼働し、その運営は社団法人東京銀行協会
が行っており、平成7年11月13日からは、第4次全銀システムが稼働した(資料4参照)。
全銀システムは、その中核である全銀センタ−(ホストコンピュ−タ),各加盟銀
行又は共同システムのセンタ−に設置されている中継コンピュ−タ及びこれらを結ぶ
自営パケット交換網から構成されている。
全銀システムの業務は、振込・送金・代金取立等の為替通知を送受信し、為替貸借
額及び決済額を集中計算して日本銀行に決済を依頼することである。したがって、
全銀システムは決済システムではなく清算システムなのである。また、第3次全銀シ
ステム(1986年稼働)からは、これらの業務の他に個人信用情報照会・中継業務等が開始された。
加盟銀行が発信した為替通知は、全銀センタ−のコンピュ−タによって取引日ごと
に記録,集計され、その為替決済額は同日のテレ為替(テレ為替とは、加盟
銀行間の為替通知及びこれに付随する通信を全銀システムの機能を利用してオンライ
ンで送受信することである。)終了後速やかに全銀センタ−から日本銀行に送信される。
日本銀行では、これに基づきその日の午後5時に加盟銀行の当座勘定の振替によって
決済を行うことになる。
情報通信技術の発達などにより、金融機関間における電子資金取引の取扱高が急激
に増加する一方で、最近における金融の自由化・国際化の進展に伴い、金融機関等を
取り巻く経営環境はいっそう厳しさを増している。これに伴い、決済システムに内在
する資金決済面でのシステミックリスク(システミックリスクとは、金融シ
ステムの構成者である金融機関の支払い不能が他の金融機関に連鎖的に支払い不能を
発生させるなどにより、金融システム全体が麻痺するリスクをいう。)は、万一、そ
れが顕在化した場合には、決済システム内部のみならず金融システム全体の安定性の
維持という観点からも無視できないほど大きくなってきている。
全銀システムでは、加盟銀行の資金決済ができなくなった場合、日本銀行が一時的に
立て替えて決済を完了するが、これにより日本銀行が負うリスクを解消するため、
加盟銀行は一定額の担保を差し入れ、さらに差し入れ担保に不足額が生じた場合には、
加盟銀行が全体で共同責任を負うなどを制度化することにより、全銀システム発足時
からリスク対策を講じてきたが、リスクをよりいっそう削減させるために以下の対策が
取られている。
まず、民間金融機関に関するものとしては、仕向超過額管理制度がある。仕向超
過額(引落額−入金額)が加盟銀行ごとに設定され
た警告額,限度額を超えるかどうかを管理するもので、平成2年7月2日から導入さ
れた。同日決済化では、加盟銀行の資金決済について、平成5年3月22日からは、
これまで翌営業日になっていた資金決済を同日決済化した。加盟銀行の臨時休業対策
では、加盟銀行が経営上の問題により臨時休業などをした場合の対応策について、
全銀システムでは臨時休業した銀行と他の加盟銀行との間における為替取引を一時停
止する、などと対応を決定したものである。
また、近年産業界では金融EDI(Electronic Data Interchange)(金融EDIと
は、企業間で交換されるコマ−シャルデ−タ(受発注,納品,請求,支払い関連デ−
タ等の商業デ−タ)と金融機関
のネットワ−クで授受される決済デ−タとを連動処理するものさす。)への関心が高ま
りつつある(日立製作所,東芝,三菱電機など大手電気メ−カ−11社は、
1997年1月から3月末までの予定で金融EDIの試験運用を開始する(日経金融新
聞1996年10月15日)。)。現在、金融界での為替デ−タのEDIは全銀システムによって
行われており、産業界のニ−ズに応えるために金融EDIの実現に向けて検討に着手す
ることになった。