銀行は、とりわけ定型的な事務書式に基づき、日々大量に発生する資金の流出入を
所定の時間内に処理しなければならないという業務の性格をもつ。このため、機械化以前の時代に
あっては、預金、貸出、為替等各科目の受払いは口座元帳への人手による記帳によ
り処理されるなど、その事務処理体制は労働集約的なものであった。こうした事務処
理を合理的、効率的なものとすることを狙いとして、1960年前後から情報通信・処
理技術が銀行業務へと応用され、60年代後半以降、銀行業務のエレクトロニクス
化が大きく進展することになった(日本銀行金融研究所(1995)による。)。
銀行業務におけるエレクトロニクス化の進展状況は、一般に、オンライン網の
対象範囲を基準として、第1次オンライン化、第2次オンライン化、第3次オンライ
ン化の3段階に分けることができる。
第1次オンライン化は、1960年代後半から70年代前半にかけて推進された
個々の銀行の本支店をオンラインで結ぶというエレクトロニクス化である。第1次
オンライン化では、金融機関のコンピュ−タ・センタ−と本支店の端末が結合され、
当座預金、普通預金などの勘定科目ごとのオンライン処理がすすめられた。このよう
な勘定系のオンライン化は1960年代後半から都市銀行を中心に始まった。この
第1次オンライン化により金融機関の事務コストが減少しただけでなく、同一金融
機関内であればどの店舗でも預金の預入、引出ができるようになった(経済
企画庁総合計画局(1991)による。)。今日では当たり前の、この
ようなサ−ビスもコンピュ−タの導入により、即時に他支店にある勘定の残高が判明
し、そこから引き落しなどができるようになったため、初めて実行可能となった。ま
た、現金自動支払機(CD、Cash Dispenser)の使用や公共料金の自動引き落し、給与振り込みなどのサ−
ビスが普及したのも第1次オンライン化の推進と並行している。今日では自動引落
は当然のごとくうけとられているサ−ビスであるが、アメリカのように自動引落が
行われていない国もある。わが国では、電話料金(昭和30年)などの公共料金に
始まり、税金(昭和42年)や各種会費,クレジットカ−ドの支払いにまで普及してい
る自動引落はこの第1次オンライン化によって利用可能になったのである。
以上のように、第1次オンライン化によって(1)勘定系のシステム化、(2)本部・
営業店間のネットワ−ク化、(3)自動振込・自動振替・CDによる支払いなどの新サ−
ビスの提供ができるようになったのである。
もっとも、このオンライン化は普通預金、定期預金、内国為替といった個々の業務
単位のエレクトロニクス化であったため、普通預金から直接送金するといった科目間
の連動処理はできなかった。こうした問題を解決するために、次いで第2次オンライン化が
進展していくことになるのである。