進展の経緯と銀行の取組状況

 日本におけるホ−ムバンキングは、ファ−ムバンキングに比べて期待されたほど 普及しておらず、利用契約者数が伸び悩んでいる。その理由としては、一般家庭で はホ−ムバンキングサ−ビスを受けるにあたって支払う利用料にみあうほどには頻 繁に利用しないためであると 考えられる。これは、ホ−ムバンキングサ−ビスが必要とされていないという意味で はなく、利用料がサ−ビスに比べて高かったということではないだろうか。
 しかし、銀行とくに都市銀行ではホ−ムバンキングサ−ビスを提供してきている。 最近は、特に都市銀行でインタ−ネットを利用したホ−ムバンキングを開発して いる。これは、インタ−ネットを利用すれば特別なホ−ムバンキング専用端末を買う 必要がないこと、また利用の際の操作性向上と使いがってがいいこと、から将来性 があると判断していることによると考えられる。
 一方、電話を使った資金移動のサ−ビスに銀行側からのマ−ケティングを組み合わ せた「テレホンバンキング」を実施し始めた金融機関もある(『週刊金融 財政事情』1996年11月25日号による。以下の実例もこれによる。)。一番 最初に、日本で始めたのはシティバンクであ り1994年6月に、24時間,365日,フリ−ダイヤル対応で開始した。199 6年には、城南信用金庫と東京相和銀行と泉州銀行がサ−ビスを開始した。いずれも 、経営資源では劣勢に立つ都市型地域金融機関や外銀がマ−ケティングを組み合わせ たかたちで開始している点が特徴的である。
 城南信用金庫の場合は、従来、渉外戦力を強みとしていたが、個人のライフスタイルの 変化によって日中在宅率が低下し、顧客との接触機会を確保するのがむずかしくなって きたため、顧客との接点を求めて有人でテレホンバンキングを開始した。フリ−ダイヤ ルで受付け、手数料は無料である。
 東京相和銀行は、営業時間も長く、即日の勘定処理を行っている。サ−ビス内容は、 業務全般にわたって行っており、現在資金移動サ−ビスの契約者は1万人弱となって いる。一日の平均利用数は、250〜300件程度である。
 シティバンクの場合は、店舗数の少さをテレホンバンキングで克服しようとしてい る。海外48か国からもアクセスが可能で、ほぼ営業店の機能すべてが代替されてい る。シティバンクの特徴は、外貨預金に関しては、運用利回りが金利情勢や為替相場 によって左右されるため、顧客はタイムリ−に金利・為替レ−トを照会したり外貨預金 の取引を指示する必要に迫られるため、こうしたニ−ズにも迅速に対応できる点に ある。ここにシティバ ンクのテレホンバンキングの利便性の高さがある。利用件数は、一日当り1万件を超 え、月間30万件に及ぶ。利用の半分以上は照会業務で占められていると推測される が、その業務処理量は支店の50カ店分に相当するということである。
 テレホンバンキングは、利用者にとって時間、空間の制約がなくなるという利便性 があるだけでなく、手数料が無料である場合もあるなどのメリットがある。一方、 銀行側にとっても、単なるホ −ムバンキングのメリット以上にマ−ケティング力強化などといったメリットがある。


Last updated '97/03/03