ファ−ムバンキングの利用状況をみると、各銀行とも利用端末の多様化,低価格
端末の提供などにより契約企業の拡大を推進した結果、大企業から個人事業主に至
るレベルまで契約企業は順調に増加してきている。このため銀行では、契約企業の
拡大だけでなく利用の向上を
はかるため、営業時間の延長やサ−ビス内容の多様化につとめ始めているため、利用
できる時間や形態も多様化すると思われる。
利用端末の多様化についてみると、最近はインタ−ネットを利用したファ−ム
バンキングサ−ビスが提供されつつあるのが特徴的である。インタ−ネットを利
用したファ−ムバンキングはこれから増加するかもしれないが、従来の専用線を
通じたコンピュ−タでの利用とは異なる面も少なくない。というのは、インタ−
ネットと専用線ではセキュリティのレベルが格段に異なるからである。専用線は、
利用料が高いものの、インタ−ネットのように世界中どこか
らでもアクセスが可能なオ−プンなシステムに比べてセキュリティが格段に高いため
、セキュリティを重視する場合には、これを利用せざるをえない。このため、
インターネットが発達しても専用線は必要なのである。取り扱われる資金の額に
よって、すみわけがされる可能性がある。銀行では、専用線とインタ−ネットと双方
発展させていく姿勢であるため、今後ますますファ−ムバンキングの利用方法は多様
化していくであろう。
今後、銀行は、さくら銀行の例でもみたように企業ニ−ズに対応すべく、企業の
経理,財務,総務関係の事務合理化も取り込んだファ−ムバンキングサ−ビスを
提供する方向で商品開発を活発化されていかなければならないと思われる。なぜな
らばEDIに対する産業界の対応次第では、銀行の決済機能に大きな影響が出るからで
ある。金融機関以外でも、企業間決済を行う企業(野村総合研究所は企業間
の資金決済を支援するシステムを開発し、販売を始めた。特徴は、企業が内外の支店
や取引先との間で抱える債権と債務を相殺し、その差額だけを最終決済することで
ある。企業はリストラの一環として財務関連コストの削減に取り組んでおり、相殺の
活用が急拡大する可能性があるといわれている。これを利用することで企業は銀行に
支払う送金手数料を節約できるため、企業の銀行離れが一段と進むだろうといわれ
る(日経金融新聞1996年12月18日より。)。)がでてくるとネッティング増に
よる銀行の決済ボリュ−ムが減少するからである。こうした決済ボリュ−ムの減少を
避けるためにも、企業ニ−ズを充足する資金決済デ−タと商業デ−タを一体化させた
金融EDIの構築に対応したファ−ムバンキングが必要である。
また、マルチメディア技術の進展により、有人による高度な情報サ−ビスも展開
すると思われる(金融財政事情研究会(1995)による。)。本部専門スタッフによる金融商品の説明を遠隔で行うなど、従来の
時間的・空間的制約を克服したサ−ビスを企業に提供するようになるだろうといわ
れている。そう考えると、ファ−ムバンキングはより一層企業と銀行の結び付き
を強固にしていくツ−ルであると思われる。それには、企業のニ−ズに対応した
ファ−ムバンキングサ−ビスを各銀行がいかに開発し、提供していけるかという
ことに銀行のこれからのファ−ムバンキングはかかっているのである。