ファ−ムバンキングの進展状況をみると、まず昭和54年からプッシュフォン電話を利用した音声応答に
よる振込通知,残高照会を行うサ−ビスが開始された。昭和56年8月には、ANS
ER(ANSERとはAutomatic Answer Network System for Electrical Request:
自動照会通知システムのことである。預金の残高照会や資金移動、株式の買い付けと
解約受付などの業務を電話機、ファクシミリ、パソコン、ホ−ムユ−ス端末(テレビ
ゲ−ム機、ワ−プロ等)などから回線経由で要求し、ホストコンピュ−タから音声ま
たはデ−タで応答を受けるシステムである。)を利用した銀行ANSERサ−ビスが開始さ
れた。その後、昭和57年の公衆電気通信法改正(デ−タ処理のための回線利用自由
化)により、金融機関と企業間での通信回線を利用した双方向のデ−タ伝送という現
在のファ−ムバンキングにより近いかたちでのサ−ビスが可能になった。また、昭和
60年の電気通信事業法施行、大蔵省銀行局のいわゆる機械化通達が順次改正され、
利用できる端末やサ−ビス内容も多様化した。昭和57年の法改正直後は、ファクシ
ミリでの振込通知サ−ビスだったが、その後徐々に企業側のメディアが拡大され、現
在ではコンピュ−タ、パソコンのほかテレックス、キャプテン端末、ファクシミリ、
電話などが利用されている。その中でも特にコンピュ−タやパソコンは、銀行から受
付けたデ−タの処理・加工が可能であり、企業から金融機関へのデ−タ伝送も可能で
あるためファ−ムバンキングのメディアの中心となりつつある。利用されている端末
の推移は資料7を参照してほしい。
現在、日本では各銀行とも昨今のコンピュ−タの企業への普及からファ−ムバンキ
ングに力をいれ始めており、各銀行独自のサ−ビスを展開している。ファ−ムバンキ
ングサ−ビスを実施している金融機関は690の回答機関のうち509機関(実施率
73.8%)となっている(平成7年3月末時点)(『金融情報システム白書
』平成8年版による。)。ここ数年7割前後の実施率となっていることからみて、導
入はほぼ一巡した
ものと思われる。特に都市銀行など大手の金融機関では、実施率はほぼ100%ちか
い(資料8参照)。
例えば、このタ−ムペ−パを書くにあたってインタビュ−に応じて下さったさくら
銀行では、平成8年4月から総合エレクトロニックバンキングソフト「さくらバンキ
ング・マネ−ジャ−」でのサ−ビスを開始した。このソフトは米国マイクロソフト社
のWindows95に対応している。また、最近のインタ−ネット上での商取引増加やEDIな
ど企業のコンピュ−タ化されたシステムを考慮に入れて、将来インタ−ネットとの
接続や、電子決済,電子マネ−も視野にいれて作られている。具体的には、企業の
LAN(LANとは、Local Area Networkの略である。向上の敷地やビル内、
大学構内など、比較的狭い地域に分散設置されたコンピュータやファクシミリな
どのOA情報機器を相互に接続して、効果的に利用するデータ通信システム。)や
WAN(WANとは、Wide Area Networkの略である。銀行のオンライン・システム
などから発展してきたコンピュータ・ネットワークで、公衆回線網を利用して通信を
行なう。)の導入を前提とした分散型の業務処理システムや、EDIとの連動が可能とな
っている。
このソフトで提供されているサ−ビスは、取引照会サ−ビス、資金移動受付サ−
ビス、資金自動管理サ−ビス、振込・振替サ−ビス、外為取扱サ−ビス、集金代行
サ−ビスなどがある(資料9参照)。集金代行サ−ビスでは全国の金融機関のネットワ−クを利用
して口座振替をするため、代金を回収し収納先に一括して入金することができる。
企業側はこのようなサ−ビスによって、事務の簡素化、資金借りの効率化を図ると
同時に、大量のデ−タや各種情報の受渡しができることになり経理、財務などの事
務の効率化が行われる。
機能面では、セキュリティ機能、大量デ−タの処理機能、ダウンロ−ド/アップロ
−ド機能、高速通信機能などが新しくなっている。セキュリティ面では、操作履歴を
残し利用者の管理ができる、環境にあわせて複数のパスワ−ドが設定できる、サ−ビス
単位に実行担当者を設定できるなどキュリティの壁をより高くしている。セキュリティ
面以外でも大半の機能が新しくなっており、企業内の実務の作業により対応したかたち
になっている。
さくら銀行のファ−ムバンキングに対する取組は一例であり、他の銀行でも各行ご
とに取組がなされている。全体的な流れとしては、銀行サ−ビスのみが企業の仕事の
ステップの中で切りはなされているのではなく、仕事の一連の流れの中で必要な決済
または資金運用が、仕事の流れをとめることなくできるように、ファ−ムバンキング
サ−ビスを利用することによってできるようになっているのではないだろか。