ファ−ムバンキングとは、金融機関のコンピュ−タと企業のコンピュ−タ、または
ファ−ムバンキング専用端末を通信回線で結ぶことにより、資金の移動や残高照会な
どのサ−ビスを提供するシステムである(金融情報システムセンタ−(1994)
による。)。ファ−ムバンキングは、エレクトロニック・バン
キングのなかで個人や家庭を対象とするホ−ムバンキグに対比されて使われている。
歴史的には1970年代にアメリカの銀行で開発されたCMS(Cash Management Service
)に端を発するものである(石崎純夫(1995)による。)。日本では1980年代の通信回線の自由化により、金融機関と
企業とを通信回線で結ぶファ−ムバンキングが可能になった(経済企画庁総合
計画局(1991)による。)。
ファ−ムバンキングが可能になったことによって、企業と銀行との銀行取引および情報
のやりとりに、渉外の担当者や窓口・後方事務担当者を経由して、紙または電話など
人手を介して行う方法に加え、企業と銀行がコンピュ−タを通信回線で接続することで
デ−タを直接送受信する方法が追加されたことになる。
銀行と企業の通信回線を介した接続には、企業のホストコンピュ−タと接続する場合
と、企業のパソコンと接続する場合がある。企業のホストコンピュ−タとの接続は
大量のデ−タを処理するには適しているものの、システムの規模は大きく、事前の準
備,毎月の運営経費も大きなものとなるため、そのマ−ケットは大企業を中心とした
限られたものにならざるをえない。一方、企業のパソコンとの接続では、企業が所有
するパソコンに銀行から企業に提供されるパッケ−ジソフトを使用し、モデムなど
回線まわりの準備さえすれば、すぐにでも手軽にファ−ムバンキングが実施できる。
この特徴から、ファ−ムバンキングの対象マ−ケットは中堅・中小企業も含めた全法人
が対象となり、ファ−ムバンキングの普及に大きく貢献してきた。
ファ−ムバンキングで提供されている具体的なサ−ビスは、提供している銀行によっても多少異なるが、一般的なサ−ビスとしては
大きく分けると取引情報連絡サ−ビス、資金移動受付サ−ビス、金融経済
情報サ−ビスの3つに分けられる(詳細については資料6を参照)。取引情報連
絡サ−ビスは、取引明細情報や外為取引情報
やその他取引情報などのサ−ビスを提供している。資金移動受付サ−ビスは、資金回収
デ−タ受付や資金支払デ−タ受付や資金集中分配管理や資金移動即時処理などのサ−ビ
スを提供している。金融経済情報サ−ビスは、マネ−マ−ケット情報や為替市場情報
や海外市況情報や公社債情報などのサ−ビスを提供している。
こうしたファ−ムバンキングは、企業サイドでは銀行取引の結果が瞬時にわかり、
資金の効率的な調達・運用のツ−ルになるのである。また、銀行からのデ−タが直接
企業のコンピュ−タに入力されるため、入力負担の軽減や売掛金の自動消し込みなど
大幅な事務合理化を図ることができる。一方、銀行側にとっても行内事務の合理化が
図られるほか、企業との取引がシステム化されることにより、一層強固な取引関係をつ
くることが可能になるなど、企業側と銀行側と両方にとってメリットが大きいといえ
る。