近年の情報処理・通信技術の進歩は、金融機関とりわけ銀行の
対顧客サービスのあり方を大きく変えつつあり、またこれまで銀行を中核として
成立してきた決済システムにも新しい地平を開きつつある。
日本の金融業界は早くからシステム
のコンピュータ化に取り組んできており、その結果、銀行間で広範な清算・決済シ
ステム(全国銀行データ通信システムや日本銀行金融ネットワークシステム)が
整備されている。また銀行と顧客の資金決済もエレクトロニクス化が進んでおり、
ATM(自動現金引き出し預け入れ装置)を使った資金決済サービスなどが一般化
している。それ以外にもネットワークを利用した対顧客サービスとして、(1)企業を
対象としたファームバンキング、(2)個人や一般家庭を対象としたホームバンキング、
(3)小売店と銀行を結ぶ銀行POS(販売時点管理)等が行なわれている。このうち、
(1)については、各銀行とも利用端末の多様化、低価格端末の導入
などによって契約企業の拡大を推進し、大企業から個人事業主に至るまで契約企業の
順調な増加がみられている。一方、(2)は、現時点ではファームバン
キングに比べて期待されたほど普及していない。しかし、一般家庭へのパソコン
の普及等、利用環境が整備されつつあるので、今後、利用者の増加が期待される。
また、(3)も、欧米諸国と比較すると普及状況が低水準であるが、POS
システムの導入企業の増加から、今後、その導入が増加するものと思われ
る。この間、銀行はIC(集積回路)カードやインターネットを利用した新しい
決済システムの構築に取り組む動きを近年強めており、すでに数多くの実用実験が
行なわれている。各種決済手段の利用度合いは、各国の社会的文化的側面を反映す
る面もあり、日本では治安の良さや既存の決済手段の充実(CD・ATMの普及、
自動振替の広範な利用など)から新たなサービスへのニーズがそれほど
強くないという見方もある。しかし長期的に考えると、国際的潮流に取り残される
ことのないように、今後、銀行は商品開発力を一層強化する必要がある。また
政府はそれを支援するような政策(関連法律の改正など)や決済の安全を
高める政策(即時グロス決済の導入)を進める必要がある。
キーワード:決済の3階層、RTGS、ファームバンキング、ホームバンキング、
銀行POS、ICカード、インターネット