織田崇信
総合政策学部3年
1995年度秋学期
岡部研究会
日本の対外直接投資は、1960年代以降、天然資源の安定供給の確保、貿易摩擦回避
、円高を生かしたコスト低減、という要因が主たる動機として変遷してきたが1990
年代に入ると、海外現地市場のニーズに適切な対応を図ることを目的としたものが多く
なってきたのが大きな特色である。これを評して平成7年版通商白書では、「市場立地
志向型直接投資の増加」という表現を用いている。こうした流れの中にあって、企業の
機能の一部を現地に移すことによって市場のニーズにより的確に応えられる「企業機能
分業型直接投資」という形態が近年増加しているのが目立っている。具体的には、製造
業において物流、商流の海外における地域統括拠点や研究開発拠点といった企業の非生
産部門の海外移転が進展していることを意味している。本稿では、こうした各企業の展
開が、東アジア全体にわたって企業機能をネットワーク的に再配置する傾向をもたらし
ているということとその背景についていくつかの事例を通じて確認する。また、こうし
た直接投資を積極的に受け入れる政策をとっているシンガポールをとり上げ、投資受け
入れ国の条件もあわせて検討する。そして日本企業のこうした機能分業型直接投資が我
が国にとって持つ意味と政策の方向についても考察している。
【企業機能分業型直接投資に関連するキーワード】
市場立地志向・地域統括拠点・研究開発拠点・企業機能再配置・雁行形態的経済発展