成長勘定(Growth Accountig)という分析方法は
実質産出量の成長率を投入要素である、資本、労働、技術に分解する
方法で、ソロー(1957)により初めて行なわれた。
この方法を使って高度成長期の日本経済の成長率を分析した研究として
Denison=Chung(1976)がある(付論参照)。
ここではその要因分解の基本となる成長勘定の基本式を導出する
(ここでは、佐藤(1989),pp.231-267.,ハイウェル(1980),pp.202-203.を
参考にして記述した。)。
日本経済を工場・機械などの資本ストック、労働力の2つを
生産要素として財・サービスを生産する巨大な工場と考えて、
次のような一般的な新古典派型生産関数を定式化する。
(1) Y=F(K,L,T)
Yは実質生産量、Kは工場・機械などの資本ストック、Lは労働力、
Tは生産技術を示す変数で、ここでは全要素生産性(TFP)とよぶ。
(1)式を時間について微分し成長率間の関係式に書き直すと次のようになる。
. . . .
(2) Y = (∂Y/∂K)K +(∂Y/∂L)L+(∂Y/∂T)T
.
ここで Y = dY/dtを表す。
係数の意味は、例えば(∂Y/∂K) は、他の変数 L,T が一定の時に
Kが微小量変化した時にYはどのくらい変化するかを意味しており、
Kの限界生産力を示す。
さら(2)式の両辺をYで割ると次式を得る。
. . . .
(3) Y/Y = (∂Y/∂K)K/Y + (∂Y/∂L)L/Y + (∂Y/∂T)T/Y
次に
. . . . . .
K/Y=K/Y*K/K , L/Y=L/Y*L/L , T/Y=T/Y*T/T
として(3)式を書き直すと次のようになる。
(4)
. . .
Y/Y= [(K/Y)*(∂Y/∂K)]K/K +[(L/Y)*(∂Y/∂L)]L/L
.
+[(T/Y)*(∂Y/∂T)]T/T
ここで
a=(K/Y)*(∂Y/∂K) , b=(L/Y)*(∂Y/∂L)
とおく。さらに a, b を次のように書き直しておく。
a=(1/Y)*{K*(∂Y/∂K)} , b=(1/Y)*{L*(∂Y/∂L)}
すると、aは所得 Y に占める資本の取り分を示す資本分配率、
b は、同様にして、所得 Y に占める労働の取り分を示す労働分配率
であることが分かる。
また(4)式の第3項目のTFPの増加率はそのまま$Y$の増加率に反映するので
(T/Y)*(∂Y/∂T)=1
と定義する。
以上を踏まえて(4)式を書き直すと次のようになる。
. . . .
(5) Y/Y= a(K/K) + b(L/L) + T/T
ここで規模に関して収穫一定を仮定すると a + b = 1
となり、b = 1 - a と書き直して、
. . . .
(6) Y/Y= a(K/K) + (1-a)(L/L) + T/T
を得る。この(6)式が成長勘定の基本式である。
この式を使い経済成長率の要因分解を行う。
. .
左辺のY/Y は経済成長率を、右辺第1項の a(K/K) は資本寄与を、
. .
右辺第2項の (1-a)(L/L) は労働力寄与を、右辺第3項は T/T はTFP成長率を、
それぞれ表している。
Y,K,Lについてはデータが存在するが、T については存在しないので
. . . .
(7) T/T = Y/Y - a(K/K) - (1-a)(L/L)
から間接的に求める。