第二部

銀行間における預金金利の格差とその原因についての実証分析




嶋頼彦 : 総合政策学部2年





1 序論



我が国における預金金利の自由化は、1979年5月の譲渡性預金(CD)の導入に始まり、1994年10月、当座預金を除く流動性預金金利が完全自由化されたことによって完了した。護送船団方式によって守られてきた銀行も変革の時代を迎え、少しずつではあるが、預金金利にも変化がみられるようになった。しかしながら、自由化後の預金金利の実態がどのようになっているかについて実証分析がみられない。そこで、本稿では預金金利について様々な視点から実証分析を行なった。対象とする金融機関は預金商品を扱う金融機関のうち都市銀行、長期信用銀行、信託銀行、地方銀行、第二地方銀行協会加盟銀行(第二地銀)の合わせて143行とした。その金利は6月7日現在のものであり、数値はヤフー・ファイナンス金利情報(図表1)をもとにした。また、預金は銀行の個人向け主要商品である普通預金、貯蓄預金、スーパー定期、同300、大口定期預金、変動金利定期預金を対象とした。

2章では対象とした預金商品の特徴について、それぞれの預金商品が他とどのように異なり、どのようなサービスが実施されているのかを述べた。さらに、金利格差として全行の平均値と各預金商品をどの程度の銀行が扱っているのかを分析した。

3章では預金商品別にみて金利にどの程度ばらつきがみられるのかを流動性、預金金額、変動・固定金利の3つの角度から検証した。

4章では銀行別金利として、都銀、長信銀、信託銀、地銀、第二地銀と銀行を業態別に区分したとき、金利は異なるのかどうか調べた。また、どの預金を扱っているか、他行と比べてどの程度金利に差をつけているかを調べることによって、各銀行がどのような戦略をとっているのか考察した。

5章では金利とリスクの関係として、一般的に言われているリスクが高い銀行は金利を高く設定しているという論議について分析した。すると、一部この論議と異なる結果が出たため、なぜ、このようなことが起こりうるのか考えた。

6章では地域別金利として、金利を各銀行が基盤とする地域別にみた場合、地域によって金利に大きく開きがあることが判明した。したがって、なぜこのようなことが起こりうるのか、二つの仮説をたてて検証した。一つはリスクを原因とするものであり、一つは地域経済状況を原因とするものである。これらと金利との関係について分析した。

最後に、7章では研究の結果、明らかになった銀行と公的当局の政策課題と今後の研究課題について述べる。



2 各種預金商品の特徴とその金利格差



2章では各預金商品の特徴とサービスについて述べる。さらに、全行の平均値を調べるとともに各預金商品をどの程度の銀行が扱っているのかを分析する。

2.1 普通預金

普通預金は預け入れ、払い出しが自由にでき、銀行が扱う預金の中で最も一般的なものである。また、公共料金の自動引き落としや給料、年金などの自動受け取りができる。つまり、流動性が最も高く、決済性を兼ね備えた預金である。ところが、その便利さのために、金利はどの預金と比べても最も低くなっている。

すべての銀行が扱っており、その平均は0.081%である。都銀、長信銀、信託銀では大和を除き、全て一律0.05%である。地銀、第二地銀をみても横並びであり、ほとんどの銀行が0.1%もしくは0.05%であって、それ以外の金利に設定している銀行は大和も含めて6行にすぎない。(図表2)

2.2 貯蓄預金

貯蓄預金は普通預金と同じくいつでも預け入れたり、引き出すことができるが、決済機能はなく、自動引き落としや自動受け取りの口座として指定できない。そのため、普通預金よりも金利が若干高い。預入残高に応じて段階的に金利を高く設定するとしている銀行が多く、その段階は10万円以上、30万円以上、50万円以上、100万円以上、300万円以上、1000万円以上の6段階が一般的であり、10万円未満は普通預金の金利と同じになる。しかし、現在の低金利のもとではどの段階であってもほとんど差はみられない。また、普通預金から貯蓄預金、もしくは貯蓄預金から普通預金と毎月一定額を自動的に振り替えるスイングサービスを実施している銀行もある。

全銀行の平均は10万円以上で0.112%、1000万円以上で0.124%とわずかに段階的に高くなっている。すべての銀行が扱っているわけではなく、長信銀の3行と安田、東洋、日本、住友の各信託銀では扱っていない。(図表3)

2.3 スーパー定期、スーパー定期300

1000万円未満の預け入れを対象に、銀行が金利を自由に決められる定期預金である。預入金額が300万円未満と300万円以上とに分類され、前者をスーパー定期、後者をスーパー定期300と区別する銀行が多いため、ここでもそのように呼ぶこととする。預入期間は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年から7年まで1年ずつ、最も長いもので10年となっている。5年以上は長信銀しか扱えなかったが、金融の自由化によってどの銀行でも認められた。

全銀行の平均値を見ると、金利は預入期間が長くなればなるほど、そして金額が大きいスーパー定期300の方が高い。それは金額の大きさによる違いがわずかであるのに比べて、預入期間の方がより顕著である。(図表4)また、1ヶ月ものではスーパー定期と比べて同300の方が低くなっているが、これは住友信託が前者を取り扱わず、後者を0.07%と平均と比べて低い金利で扱っているためである。

ほとんどの銀行は1ヶ月ものから5年ものまではすべて扱っている。しかし、スーパー定期、同300のどちらにおいても三菱信託は1ヶ月ものを扱っておらず、日本興業は4年ものと5年ものを扱ってない。また、6年もの以降は取り扱う銀行が少なく、全銀行の3分の1程度である。(図表5、6、7、8、9)

2.4 大口定期預金

1000万円以上の預け入れを対象に、銀行が金利を自由に決められる定期預金である。店頭表示の金利は基準であり、顧客との交渉によって金利を決定する。預入期間はスーパー定期と同じであり、預金の中では最も金利が高い。

全銀行の平均ではすべての預入期間においてスーパー定期を上回る。そして、その金利差は預入期間が長くなるほど明確となる。また、大口定期預金の10年ものが全銀行の平均で最も高い0.686%を示している。(図表4)

スーパー定期同様、ほとんどの銀行が1ヶ月ものから5年ものまで扱うが、奈良は2年ものまで、滋賀は3年ものまで、日本興業は4年ものまでしか扱っていない。6年もの以降は全銀行の3分の1程度しか扱わない。(図表10)

2.5 変動金利定期預金

これまでの定期預金が預け入れた時点の金利が満期まで続く固定金利あったのに対し、預け入れ後、6ヶ月ごとに金利が変わるのが変動金利定期預金である。金利自由化によって、市場実勢に応じて金利が変動するような商品が可能となった。今後、金利が上昇するような状況では有利となる。預入金額は300万円未満、300万円以上、1000万円以上、預入期間は1年、2年、3年と区別するのが一般的である。

全銀行の平均では預入金額が大きく、預入期間が長いほど金利は高くなっている。それはスーパー定期と同様に、預入金額が大きくなるのに比べて預入期間が長くなる方がより金利は高くなる。(図表11)

どの預入金額においても、1年ものを扱っている銀行は40%弱、2年ものを扱っている銀行は70%強、3年ものはほとんどの銀行で扱っている。3年ものを扱っていない銀行は300万円未満、以上で日本興業、1000万円以上で奈良、みなとである。また、東京相和、安田信託、中央信託は変動金利定期預金を扱っていない。



3 預金商品別にみた金利の分散


3章では預金別のばらつきについて調べた。分析にあたってはデータの値が最大でも0.85%と小さいため、分散ではなく標準偏差を用いた。また、ここでは預金を3つの視点に分けて考えた。それは流動性(預入期間)、預入金額、固定・変動金利である。

3.1 流動性

預金は預入期間が短いため、いつでも引き出すことができる、流動性の高い流動性預金と預入期間が長いため、すぐには引き出すことができない、流動性の低い定期性預金とに分類される。一般的に流動性が低いほど金利は高くなる。それは流動性プレミアムがつくからである。

標準偏差は最も流動性が高いと考えられる普通預金で0.024、同様に貯蓄預金の平均は0.017であった。(図表12)逆に流動性が低いと考えられる定期性預金の中ではスーパー定期300の5年ものが0.062で最高値だった。さらに、スーパー定期、同300、大口定期では預入期間が短期から長期になるにつれて標準偏差は高くなっていく。(図表13)このことは変動性預金でも同様であり、2年ものと3年ものでは3年ものの方が標準偏差は高い。(図表14)これは各銀行における預金の商品性が短期より長期に反映されるからであろう。また、最も長い10年ものが5年ものに比べて低くなった要因としては、10年ものは最近になって認められたものであり、まだすべての銀行が扱っているわけではなく、扱っている銀行は全体の3分の1にも満たない。したがって、10年ものを扱えるかどうかに差があり、金利そのものにはまだ差がみられないと考えられる。

3.2 預入金額

預金が同じ性質を持っていたとしても、預入金額が異なれば金利は異なる。一般的に預入金額が大きくなるほど金利は高くなる。それは調達コストが関わるからだ。調達コストは預入金額が大きいものであろうと小さいものであろうとさほど変わらないため、銀行にとって大口の方が小口の預金に比べて金額あたりのコストを相対的に低く抑えられる。その分銀行にとって有利になるため、銀行は預入金額が大きくなるほど金利を高く設定できるのである。

標準偏差をみてみると、まず、流動性の高い貯蓄預金においては金額段階が大きくなるほど標準偏差は高まっていく。(図表12)流動性の低い定期預金についても同様に、同じ預入期間のスーパー定期、同300、大口定期では金額が大きくなるほど標準偏差は高くなる。(図表13)これも先ほどと同様に銀行にとって小口のものよりも大口の方が差別化を図りやすいからだろう。また、預入金額よりも預入期間の違いによって標準偏差は高くなる。

3.3 変動・固定金利

預金の金利は変動金利をとるか、固定金利をとるかによって異なる。変動金利とはその名の通り、金利が預入期間中に変動した場合、それを適用するものである。現在では6ヶ月ごとに変えるのが一般的である。一方、固定金利とは金利が変動しようとも預入時点での金利を継続するものである。

変動金利定期の金額別の3年ものとスーパー定期、同300、大口定期の3年ものとの標準偏差を比べてみるとすべて変動金利定期の方が上回っている。(図表13、14)銀行にとって変動金利の方が逆ザヤを生じる危険が少ない。したがって、銀行は変動金利で預金を集めようとして差別化を図るため、固定金利よりも変動金利の標準偏差が高いと考えられる。



4 銀行の業態別金利と各行の戦略



4章では銀行を業態別に区分したとき、金利は異なるのかどうか調べた。また、どの預金を扱っているか、他行と比べてどの程度金利に差をつけているかを調べ、各行の戦略について考察した。

4.1 総括

都銀、地銀、第二地銀の平均を比較すると都銀、地銀、第二地銀の順で金利が高くなっていく。しかし、普通預金、スーパー定期の3年もの、スーパー定期300、大口定期預金の5年もの、10年ものでは地銀の金利が第二地銀を逆転する。また、スーパー定期、同300、大口定期預金の10年ものは都銀の金利が一番高い。(図表15)

  4.2 都市銀行

普通預金をみると、一律0.05%の金利をつけているのに対して大和のみ0.07%と0.02%高い金利をつけている。これは普通預金に限らず、大和は他行よりも高い金利をつけている預金が多い。また、富士はスーパー定期、同300、大口定期の5年もの、10年ものの金利が高く、10年ものにいたっては大和をも上回る。三和は貯蓄の1000万円以上と変動金利定期のすべての金利を他行と比べて高くする戦略をとっている。

4.3 長期信用銀行・信託銀行

両者の間で特徴的なのはまず、貯蓄を扱っている銀行と扱ってない銀行に分かれることだ。安田信託や日本信託は変動金利定期も扱っていない。次に、住友信託のスーパー定期、同300、大口定期の金利が1ヶ月ものでは長信銀、信託銀のなかで最も低いが、3年もの以降は最も高い。また、これらの預金の10年ものは中央信託しか扱っていない。長期信用の金利はどの預金でも低く、全国最低値をとっているものも多い。

4.4 地方銀行

普通、貯蓄、スーパー定期と同300の5年ものまで、大口定期の3年ものまで、変動金利定期の3年ものはすべての地銀が扱っている。大口定期の5年ものを扱っていない銀行は滋賀のみであり、60%近くの地銀が10年ものを扱っていない。

4.5 第二地方銀行協会加盟銀行(第二地銀)

普通、貯蓄、スーパー定期と同300の5年ものまで、大口定期の2年ものまではすべての第二地銀が扱っている。大口定期の3年もの、5年ものを扱っていない銀行は奈良のみであり、80%以上の第二地銀が10年ものを扱っていない。



5 金利とリスク



一般的に銀行間における金利の違いはその銀行のリスクの違いによるところが大きいと言われている。リスクが大きい銀行は預金を確保するために金利を上げざるを得ないからである。この章では、その仮説をふまえながら金利とリスクの関係について検証した。

5.1 分析方法

リスクといっても様々な尺度があるが、ここでは不良債権比率、自己資本比率、格付けを取り上げ、それぞれとの相関関係を調べた。まず、不良債権比率と自己資本比率は各銀行の1999年3月現在の値を使用した。自己資本比率には国際基準であるBIS基準と国内基準を採用している銀行があるが、区別しないものとした。また、格付けには海外と日本の代表的な4つの格付け機関が公表している長期預金もしくは長期債の格付を使用した。

まず、この分析の有意性をはかってみると、格付けと不良債権比率は負の相関関係を示している。(図表17)一般的に、不良債権比率が高い銀行ほど格付は下がるものであるため、この2つは有意である。また、格付けと自己資本比率は正の相関関係を示している。同様に、自己資本比率が高い銀行ほど格付けは上がるものであるため、この2つも有意である。

5.2 金利と不良債権比率

不良債権比率が高い銀行は不良債権を処理できずに、経営破綻をきたす可能性が高く、リスクが高いと預金者はみなすため預金が引き出される恐れがある。したがって、このような銀行では相対的に預金金利を上げざるを得ない。つまり、預金金利にはリスクプレミアムが付加されたものとなる。よって、金利と不良債権比率は正の相関関係を示すと思われる。しかし、実際に相関関係を調べてみると各預金商品によって大きく異なった。

正の相関関係を示した預金はスーパー定期、大口定期の10年ものだけであった。逆に負の相関関係を示したものは普通、スーパー定期、大口定期の1ヶ月ものと1年ものだけである。その他で相関関係はみられなかった。(図表18、19)

短期預金が不良債権比率に対して負の相関関係を示した理由としては不良債権比率が低い銀行であっても短期預金金利を上げてまで預金を集める必要はないからである。長期預金は安定的に預金を集められる。また、長期預金は金利リスクを伴うが、現在の低金利下では将来、金利水準が下がって貸出金利が預金金利を下回る、つまり逆ザヤを生じる危険性が少ないため、長期預金の方が有利となる。したがって、不良債権比率が低い銀行は短期よりも長期預金の金利を高く設定することによって預金を確保していると考えられる。

5.3 金利と自己資本比率

不良債権比率が高い銀行と同じように、自己資本比率が低い銀行は預金が引き出される恐れがあるため、このような銀行は預金金利を上げざるを得ない。したがって、金利と自己資本比率は負の相関関係を示すと思われる。しかし、これも当てはまらないものがあった。

スーパー定期、大口定期の3年ものと5年ものでは相関関係がみられなかったが、その他の預金では短期、長期に関係なく負の相関関係を示した。(図表20、21)なお、正の相関関係を示したものはない。

5.4 金利と格付け

4.1にあるように格付けと自己資本比率は正の相関関係があるため、自己資本比率と同様、格付けが低い銀行は預金確保のために預金金利を上げなければならない。したがって、金利と格付けにも負の相関関係があるものと思われる。

負の相関関係を示した預金はスーパー定期の3年もの、大口定期の10年ものだけであり、他にもスーパー定期、大口定期の長期ものは負の相関関係に近い値をとっている。その他は相関関係がなく、正の相関関係がみられたものもなかった。(図表22、23)

金利と格付けが長期により強い正の相関関係を示した理由は4.2と同じである。



6 地域別にみた金利格差



6章では各銀行の金利を地域別に分けて考察する。

6.1 仮説の構築

全国の地方銀行、第二地銀の金利を地域別にしてみるとかなり差があることが分かった。全預金の平均をみると、四国地方の0.22を筆頭に東海地方の0.15までと大きく異なる。(図表24)また、預金それぞれに注目してもばらつきはみられた。地方銀行や第二地銀はそれぞれの地方に根づいた銀行である。ほとんどの銀行が1つの都道府県を基盤としている。したがって、預金者から考えるとある地域に住んでいる人が別の地域にある銀行の金利が高いからといって、預金をその別の地域にある銀行に預けるといったことは起こりにくい。なぜならば預金の預け入れ、もしくは引き出しが不便であり、サービスを受けにくいからである。そのように考えると、地域別の金利にばらつきがあるというのはおかしいということになる。なぜ、このようなことが起きているのだろうか。ここで、2つの仮説を考えた。1つめは4章にあるように金利はリスクに基づいて決まるものである。2つめは金利の違いは各地域の経済状況によるものである。この2つの仮説について検証した。

6.2 地域別金利とリスク

4章ではすべての銀行についての金利とリスクの関係について調べたが、ここでは各銀行を10の地域に分け、地域ごとに金利とリスクの平均をとり、関係があるのかについて調べた。リスクをはかるものとして4章同様、不良債権比率、自己資本比率、格付けを用いた。ちなみに、地域別にとったこの3つの相関関係は4.1と同じような相関関係、むしろ4.1より強い相関関係を示した。

すると、金利と不良債権比率、自己資本比率、格付けの関係はどれも銀行全体における関係よりも弱まった。金利と不良債権比率との関係は4.2では長期で正の相関関係、短期で負の相関関係がみられたが、地域別では長期での正の相関関係は弱まり、短期での負の相関関係が強まった。金利と自己資本比率との関係は4.3ではほとんどの預金で負の相関関係がみられたが、地域別ではそれが弱まり、逆に正の相関関係を示した預金もあった。金利と格付けとの関係は4.4では長期では負の相関関係、短期では相関関係がみられなかったが、地域別では10年ものの負の相関は強まったが、それ以外では弱まり、短期になるにつれて正の相関がみられるようになった。

つまり、地域別にみた金利とリスクの関係はみられるものの、その関係は銀行全体における関係と比べると弱い。したがって、地域別にみた金利には他になんらかの要因が加わっていると考えられる。

6.3 地域別金利と経済状況

地域別にみた金利にばらつきがあるもう一つの要因として、各地域における経済状況が異なるため金利も異なると考えることができる。よって、地域別金利と各地域の経済状況に関係があるのかどうか調べた。各地域の経済状況として有効求人倍率、新設住宅着工戸数、大型小売店販売額、乗用車新規登録・届出台数、公共工事着工総工事費をとりあげ、比較した。ちなみにこれらの値は高いほど景気が良いということになり、景気が良いということは資金の需要が高まるため金利も高くなる。つまり、正の相関関係を導けば地域別の金利と各地域の経済状況には関係があるといえる。

分析の結果、地域別金利と有効求人倍率、新規住宅着工戸数には正の相関関係がみられた預金もあったが、相関関係がみられない預金の方が多かった。(図表25)また、先ほどのように相関関係が短期にみられず、長期にみられるなどのようなことはなく、預金の流動性、預入金額とは関係がなかった。したがって、地域別金利と有効求人倍率、新規住宅着工戸数に正の相関関係があるとはいえない。さらに、その他の指標では正の相関関係がみられる預金がある一方、負の相関関係がみられる預金もあり、しかもそれは預金の流動性、預入金額に関係なくばらばらであった。したがって、地域別金利と地域経済状況には関係がないという結果になる。地域別金利にばらつきがみられたのは、偶然にリスクが高い銀行がある地域に集中したためであろう。



7 結論



7章では、以上の分析をふまえたうえで銀行と公的当局にとっての政策課題を考察するとともに今後の研究課題を指摘する。

7.1 銀行・公的当局の政策課題

以上、本稿では預金金利について様々な視点から分析したが、注目すべきは金利とリスクの関係である。金利自由化の下では銀行のリスクが金利に反映しているということが実証された。つまり、銀行はリスクを下げれば預金金利も下げることが可能である。銀行は預金金利を抑えれば資金を低い利率で集められるため、その分利益を確保できる。したがって、銀行は利益を上げるためにリスク管理体制を強化しなければならない。そのためにはいち早く不良債権を処理し、情報の公開など透明な経営が求められる。

一方、公的当局は銀行がリスク管理体制の利点を競争して、リスクを減らせるような環境を整えなければならない。日本の銀行は公的当局の保護と管理に依存し、保守的な横並び体質を醸成し固定化してきた。その結果、厳しいグローバル競争に勝ち抜く自己改革がなおざりにされた。さらに、バブル崩壊後、銀行は不良債権を抱えたため体力と競争力がいっそう弱まった。このような状況を打破するためには銀行が抜本的な自己改革を行ない、商品の開発能力や資産の運用能力を高めグローバルな競争力を飛躍的に強化することはもちろんのこと、それを促すためには公的当局が規制の撤廃など銀行が競争できる環境を整備しなければならない。

7.2 今後の研究課題

本稿では銀行の預金金利について様々な視点から分析したが、めまぐるしく変化する金利の一時点についてとらえただけである。したがって、金利がどのように変化するのか2時点間比較を行なう必要がある。さらに、金利は一つの要因によって決定されるのではなく、様々な要因が複雑に絡み合う。よって、多変量回帰分析を行なう必要もある。

また、現在は歴史的な低金利局面にあり、市場金利水準が極めて低いため、各金融機関が戦略的に預金金利を設定する余地が小さい時期である。さらに、金利の自由化からまだ日が浅く、預金の商品性の多様化があまり進んでいないため、預金金利も同程度の水準に収斂している。そのため、相関関係などの値ははっきりと強いものではなく、そのような傾向がみられるというだけである。したがって、今後、市場金利が上昇し、預金の商品内容の多様化が進展すれば、金融機関間の金利格差は現在よりも広がるであろう。その折に再度分析し、今回の分析結果を確固たるものにしたい。



参考文献



岡部光明(1999)『現代金融の基礎理論』、日本評論社。

翁邦雄(1996)『金利の知識』、日本経済新聞社。

島田晴雄(1997)『日本再浮上の構想』、東洋経済新報社。

第一勧銀総合研究所(1995)『日本の金利競争 これからの10年』、東洋経済新報社。

東洋経済新報社編『会社四季報』(1999、第3集)、東洋経済新報社。

日本経済新聞社編(1997)『金融商品の選び方』、日本経済新聞社。

ビジネス教育出版社編(1999)『これならわかる金利の読み方』、ビジネス教育出版社。

富士総合研究所(1997)『金利のしくみ』、日本実業出版社。



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