最適通貨圏の理論(The Theory of Optimum Currency Areas)は、1960年代に ロバート・マンデルによって提唱された概念である。彼は国際通貨制度におけ る為替レート制度の選択を取り上げ、国毎の経済的性格・特質によっては変動 為替レート制よりも固定為替レート制あるいは共通通貨を採用することが望ま しい場合もある、と主張した。このような最適通貨圏の理論は1960年代から70 年代にかけて盛んに議論がなされたが(Mundell(1961)、McKinnon (1963)等。)、その後さしたる理論的進展もなかったため、しばらく関心が 失われていた。しかしながら、欧州における通貨統合の進展や旧ソ連が15の 不換通貨を有する通貨圏に分裂する等の国際金融情勢の変化を反映し、再び同 理論に対する関心が高まっている。
以下、本章ではまず最適通貨圏の「最適性」の定義について明らかにする。次 いで最適通貨圏の基準を明らかにする。