付論---高度成長期の成長勘定


成長勘定とは一国の経済成長率をその決定要因に分解し、それらの要因の寄与度を 「勘定」する分析である。 この方法により日本経済の高度成長期(1953-1971)の経済成長を分析した研究として Denison,E.F and Chang,W.K(1976),"Economic Growth and Its Sources"がある。 この研究は表7にあげたように、 日本経済の国民所得により計った経済成長率を 成長に必要な要因と考えられている30項目に要因分解し それらの寄与度を推定し、他の先進諸国の結果と国際比較したものである。

この研究によれば日本経済の高度成長は、 経済成長に必要なほとんどすべての決定要因が他の先進国 --アメリカ、カナダ、ベルギー、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、 ノルウェー、イギリスの10カ国-- に比べて非常に恵まれていたと述べている(Denison,Chang(1976),p.101.)。 中でもでも高い寄与度を示した要因として (1)資本の増加、(2)知識の進歩、(3)規模の経済、(4)労働力投入、(5)労働力の再分配、 (6)教育、(7)国際貿易障害の減少、があげられている。 表7の(4)列目から抜粋したのが以下の表である。 ()内の値は国民所得に占める寄与率を示す。


項目 経済全体(%) (1953-71)
国民所得の成長率 8.77(100) (1)資本の増加 2.10 (23.9) (2)知識の進歩 1.97 (22.5) (3)規模の経済 1.94 (22.1) (4)労働力投入 1.85 (21.1) (5)労働力再分配 0.95 (10.8) (6)教育 0.34 (3.9) (7)国際貿易障害の減少 0.01 (0.1)
これらの項目をごく簡単に検討する。

今回の本稿の分析とは統計や、同じ成長勘定の方法を用いていても 要因分解の項目が違うので直接的には比較できないが、 本稿の分析で見られたように 高度成長期においても資本の寄与、 本稿の推計ではTFP成長率の要因でひとまとめにされている 知識の進歩、規模の経済などが大きな寄与率を示していたことがわかる。